今注目の山梨・西湖に誕生。「Restaurant SAI 燊」で「奥・山梨料理」を心ゆくまで!
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今注目の山梨・西湖に誕生。「Restaurant SAI 燊」で「奥・山梨料理」を心ゆくまで!

富士五湖の一つ、西湖の湖畔に複合型レストラン「Restaurant SAI」が6月1日に開業した。「ゴ・エ・ミヨ」3年連続受賞したシェフ・豊島雅也が、地元の食材を中心としたストーリーのある料理の数々を振る舞う。

富士山の北麓に弧状に点在する大きな5つの湖沼、富士五湖。外国人旅行客も熱い視線を送るこのエリアの中で山深く奥まっているのが西湖だ。淡い青色の湖水と青木ヶ原樹海に囲まれた神秘的な魅力を放つ西湖、その湖畔に「Restaurant SAI」はオープンした。

腕を奮うのは世界が注目する料理人の一人、豊島雅也さん。20歳で料理の道へ進んだ豊島さんは「ユカワタン」、「星のや富士」などを経て、2017年富士河口湖町で自身の店「TOYOSHIMA」を開業。そこで「ゴ・エ・ミヨ」3年連続受賞し、2023年度には農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」ブロンズ賞に輝いた。

「フランス料理をベースに和食やイタリアンなどさまざまなジャンルの料理に取り組んできましたが、これから何をやりたいか、自分に何ができるかを考えた時にもっと原始的なところに戻りたいと思いました。富士北麓という自然豊かな土地に移り住み過ごしていると、ほんのわずかな季節の違い、旬の変化を感じられます。そうした自然の姿を料理を通して表現したいと思いました」

富士山の北麓、西湖エリアは湖や樹海、山といった豊かな自然に恵まれており、豊島さんはこの地の自然が育んだ個性的な食材を中心にメニューを組み立てる。人間よりも数が多いと言われている鹿を中心としたジビエ、高原野菜や四季折々の葉物野菜、湖や河川に生育するヒメマスなどの淡水魚やウナギ、すっぽんなどの希少な食材も採用。また、レストランの裏庭では、山梨で活動するHERB STANDが監修するハーブガーデンがあり、そこで育てたハーブも料理やドリンクに活用する。


さらに驚くべきは、近隣の農家や漁師とネットワークを築くことで仕入れるだけでなく、シェフやレストランスタッフが狩猟免許を持ち、狩猟や採集、養蜂に携わって食材を入手しているということ。豊島さん自身「食猟家」と名乗り、狩猟、養蜂、農業、キノコや山菜採取、ハーブ生産に取り組んでいる。そうした過程を経て、新鮮な素材を厳選し、そこに豊島シェフの感性をプラスして、五感を刺激する料理が作られる。舌で味わうだけでなく目でも食の楽しみを広げてくれる。

また、料理と一体となった器の数々も目も見張る。南アルプスの麓で薪窯焼成によって作陶を行う「窯八」、笠間焼の作家・Keicondoの大皿、石川・能登を代表する漆器作家・赤木明登のお椀など美しい器の数々が料理と融合し、自然の奥行きを感じられるようになっている。

食事の伴奏者であるドリンクメニューも充実。ソムリエの永原有茶さんが選び抜いた日本ワインや県産の日本酒を中心に、季節ごとに入れ替わる料理やゲストに合わせたドリンクコースを提供する。また、ノンアルコールメニューも豊富で、ハーブや果実、樹液などを掛け合わせ、その時々の料理に合わせた独創的なオリジナルドリンクもペアリングで提供。感動を生む食事体験へと導いてくれる。

料理は季節によって食材を変え、「シェフの本日のおまかせコース」(¥20,000)のみ。アルコールペアリング(¥6,000、¥10,000)、ノンアルコールペアリング(¥10,000)の3つを用意する。ここではひとつのロングテーブルをゲストが囲み、同じ時間を共有するターブルドットスタイルで、食のエンターテインメントを堪能できる。

空間にも注目したい。もともとレストランとして使われていた築20年ほどの建物、建築家の坂野由美子が設計デザインし、改修。料理のコンセプトでもある「木・火・土・金・水」を参考に自然界を構成する5つの要素を取り入れた。

客席の中央に配置されたロングテーブルは国産のサワラやナラ、クルミなどをランダムに張り合わせて制作したもの。大谷石でしつらえた薪火台で調理するシェフの姿を臨場感たっぷり眺められる。

また、墨汁で染め上げた漆喰の壁、奥の個室には敷地の土屋枯葉を混ぜ込んだ土壁、富士吉田のテキスタイルブランド Watanabe Textileによる和紙を織り込んだカーテンがかけられており、心地よい空気を生み出している。

「食を通して生き抜く力を学べる場所にしたい」との想いから、今後はただ食べるだけではなく、さまざまな体験ができるアクティビティも開催する。たとえば、近隣の山や森に入り、採集した素材を酢やアルコール、塩や砂糖、麹などにつけてボトリングをする発酵体験や、ガイド案内のもと行われる樹海散策も予定しているという。人と自然を近づけ、食の可能性を追求するレストランの夢は広がるばかりだ。


Restaurant SAI 燊
住所/山梨県南都留郡富士河口湖町西湖208-1
営業時間/18:00~
定休日/日・月(そのほか不定休)
URL/https://restaurant-sai.com/
Instagram/@restaurant_sai_lake_saiko

Text: Mariko Uramoto

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