あなたの一生もの、見せてください! | Numero TOKYO
Fashion / Feature

あなたの一生もの、見せてください!

俳優の小林麻美、剛力彩芽、クリエイターの菊乃ら、6名のファッショニスタの “一生もの”とは。とっておきのアイテムとのストーリーを聞いてみると、その人のスタイルが見えてきた。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2024年6月号掲載)

小林麻美 × イヴ・サンローラン リヴ ゴーシュのジャケット

次の世代に引き継ぎたいタイムレスなコレクション

「イヴ・サンローランの服に出合ったのは、仕事を始めてすぐの18歳の頃。私は大の映画好きなので、スクリーン上で彼の服をよく見かけていました。ジャン=ポール・ベルモンドの『相続人』に登場する白いコートも購入しました。『サブウェイ』でイザベル・アジャーニが着用していたスカートも。あの頃の芸能人は自分で衣装を用意する必要があったので、私はサンローランで揃えていました。20歳ぐらいの若い子がサンローランなんて贅沢に思うかもしれないけど、私は実家暮らしだったので、お給料を全部つぎ込むことができたんです。

サンローランの服は、身長が高い私のサイズにも合っていたし、彼の世界観が好きでした。胸元が大きく開いていても下品すれすれの上品さが保たれている。カチッとしたスーツにもどこか危うさがあり、その危険な香りが魅力でした。このジャケットは1980年頃に購入したもの。今日みたいにデニムに合わせて六本木に踊りに行っていました。あの頃は遊ぶにもキメないとね。37歳で仕事を辞め、子育てに専念してからはサンローランを着る生活から離れましたが、当時、手に入れた180点ほどの服は公益財団法人 日本服飾文化振興財団に寄贈しています。サンローラン自身がデザインした服は貴重なので、若い世代やデザイナー志望の方にも参考にしていただけたらと思っています」

小林麻美(こばやし・あさみ)
1953年、東京都生まれ。70年代からCMや雑誌のモデル、歌手、俳優として多岐にわたり活躍。84年にガゼボのカバー曲「雨音はショパンの調べ」が大ヒット。91年に芸能活動を引退。2014年、芸名の小林麻美名義で自身のイヴ・サンローランのコレクションを公益財団法人 日本服飾文化振興財団に寄贈。16年に雑誌『クウネル』の表紙を飾り電撃的な復帰を果たした。

公益財団法人 日本服飾文化振興財団
住所/東京都港区赤坂8-1-19 日本生命赤坂ビル8F
TEL/03-6894-1989
MAIL/info@jflf.or.jp
開館時間/11:00〜18:00
休館/土・日・祝、年末年始
料金/入場無料
※事前アポイント制

剛力彩芽 × アディアムのジャケット

ファッション人生第2章を象徴するジャケット

「アディアムの2013年秋冬のジャケットは『奇跡体験!アンビリバボー』のスタジオMCに就任したばかりの頃、スタイリストさんが似合いそうだからと持ってきてくれたもの。その頃、よく鹿やバンビに似ているといわれていたこともあって、このプリントにも親近感があったし、20歳前後で少し背伸びをしたい私にとって、モードでエッジの効いたデザインはまさに求めていたものでした。18年間ロングだった髪をショートにして、自分にはどんなスタイルが合うのかを探していた時期でもあり、アディアムとの出合いがファッション観を広げてくれたし、私のファッション人生第2章の始まりだったと思います。

『奇跡体験!アンビリバボー』は、ファッションやヘアメイクを楽しみに見てくださる方も多く、雑誌とは違うテレビならではの見せ方など、いろんなことを勉強させていただいた思い出深い番組です。このジャケットを着ると、番組と一緒に駆け抜けた20代の頃を思い出します。当時はブラックのレザースカートに合わせてモードな雰囲気で着ていましたが、これからは今の私らしいスタイリングで、長く付き合っていきたい一着です」

剛力彩芽(ごうりき・あやめ)
1992年、神奈川県生まれ。モデル、俳優。フジテレビ系『奇跡体験!アンビリバボー』では約11年半にわたりMCを務めた。近作にドラマ『夫婦の秘密』『ペンション・恋は桃色season2』ほか多数。映画『お終活 再春!人生ラプソディ』が5月31日公開。舞台『Change the World』が6月8日から東京・サンシャイン劇場で上演予定。

菊乃 × N.E.R.Dのスウェットパーカ

青春時代の自分とつながれるメモラブルなパーカ

「幼い頃から音楽が好きで、ライブやコンサート、ヴィンテージショップなどでマーチ(アーティストのオフィシャルTシャツやスウェットなど)を買うようになりました。特にN.E.R.Dは中・高生のときによく聴いていた大好きなアーティスト。2018年、フジロックで初めて生のライブを見て興奮し、友人と汗だくになりながら踊ったいい思い出があります。その数年後、友人がやっている原宿のヴィンテージショップでこのパーカを偶然発見したんです。

ヴィンテージのマーチはメンズサイズが多く、普段は体に合わないことが多いのですが、これは奇跡的にぴったり。青春時代の思い出がここに詰まっていると思って、即購入しました。以来、自分にとって大事な場面で着ています。着てると音楽好きの人が必ず反応してくれる。それもうれしい。大切なパーカですが、着心地が良く、袖を通せば肩肘張らずいつも通りの自分でいられるところも手放せないポイントです。普段は親から譲り受けたアクセサリーや友人が作った服などを身に着けることが多いです。マーチも同じで、なるべく自分が好きなカルチャーや考え方に接続しているものが心地いいなと思っています」

菊乃(きくの)
1990年、東京都生まれ。写真の専門学校を卒業後、サンフランシスコ、ロンドンに留学し、語学とアートを学ぶ。帰国後はデザインオフィスで働き、2015年に自身のブランド、パープルシングスを立ち上げる。23年からはユニセックスブランド、マーモットキャピタルのディレクターとしても活動。YouTubeチャンネル「STAY IN BED」も人気。

PORIN × プラダのバッグ

遊び心あふれるアイテムを相棒に

ジャケット¥29,150/Yarden(ヤーデン yardenjp@gmail.com)  ドレス¥64,900/Riv Nobuhiko イヤカフ¥38,500 リング右手人さし指¥106,700 リング右手薬指¥187,000/すべて:Cafca(すべてハルミ ショールーム 03-6433-5395)  リング左手中指¥4,400/Loni(ロニ loni_info@auntierosa.com)
ジャケット¥29,150/Yarden(ヤーデン yardenjp@gmail.com) ドレス¥64,900/Riv Nobuhiko イヤカフ¥38,500 リング右手人さし指¥106,700 リング右手薬指¥187,000/すべて:Cafca(すべてハルミ ショールーム 03-6433-5395) リング左手中指¥4,400/Loni(ロニ loni_info@auntierosa.com)

「制作やツアーがひと段落したら自分へのご褒美をよく買うんですが、このバッグは昨年春頃にプラダ青山店で一目惚れしました。本当は別のものを探しに行ったのですが、このバッグだけ目立つところにぽんって置かれていて。聞けば日本限定色の最後の一点とのことで、30分悩んだ末に購入しました。定番のヴィヴィッドなグリーンではなく、和を感じる若草色のペールトーンなのが珍しくてかわいいんです。

造園業を営む父の影響で幼い頃から植物が身近にあったのもあり、私の日常に馴染みそうな色だなって思ったのもありますね。それに、黒などのいわゆるベーシックな色よりも、遊び心があってチャレンジングな色のほうに惹かれます。私にとってファッションはお守りであり、前向きにさせてくれるもの。このバッグは特に気持ちが高まるから、ドレスアップしてファッションウィークやパーティに行くなど、着飾ってお出かけするときに使うことが多いです。今日みたいにジャケットに合わせるのもいいですね。モダンで時代にとらわれないアイテムなので、一生使っていきたいです」

PORIN(ぽりん)
3人組バンド、オーサムシティクラブ(Awesome City Club)のボーカル。ソロアーティストのピィ(Pii)としても活動。ABCテレビ・テレビ朝日系で放送中のアニメ『となりの妖怪さん』のオープニング主題歌「お化けひまわり」が配信中。ファッションブランド、ヤーデン(yarden)のディレクターとしてもコレクションを毎シーズン発表している。

Styling:Miku Ikeda Hair & Makeup:Megumi Kuji

栗山愛以 × フィービー ファイロのパンツ

エッジィとエレガントが美しく共存

「服を買うときは一生着続けるつもりで、時代に左右されないパワフルなアイテムを選んでいます。なので、一生ものといったら『自分のクローゼットにあるものすべて』になるのですが、今回は最近手に入れた思い入れのあるパンツをはいてきました。フィービー・ファイロが自身の名前を冠して発表したブランドのファーストコレクションで、今のところ販売はオフィシャルサイトのみでデリバリーは欧米圏内限定。実物を見られず、写真を頼りに選ぶしかないスリリングな買い物でしたが、無事にパリのホテルに届いたときには静かに感動しました。

裾から腰まで伸びたファスナーを開け閉めすることでシルエットが変わり、肌が露出。大胆なデザインですが、素材や仕立てが美しいのでエロくならない。フィービーはシックでシンプルなスタイルが得意と思われがちですが、セリーヌ時代から攻めたアイテムを発表していて、それを『ドヤ!』と見せず、さらりと着こなすスタイルを提案して、なんてかっこいいんだと関心を寄せていました。それは新ブランドも同様。そして、男性に媚びるでもなく、フェミニニティも忘れない、自分のファッション哲学にシンクロしているところも好きな理由です」

栗山愛以(くりやま・いとい)
1976年、長崎県生まれ。大阪大学大学院で哲学、首都大学東京大学院(現・東京都立大学大学院)で社会学を通してファッションについて考察。コム デ ギャルソンで広報を務めた経歴も。2013年にファッションライターとして独立。ファッション界生粋のモードラバーとして、多くの雑誌や新聞、Web媒体に寄稿している。

とんだ林蘭 × ヴィヴィアーノのジャケットドレス

一生似合う自分でいたいと思わせてくれる

「一生ものと聞いたとき、バッグやジュエリーがいくつか頭に思い浮かんだのですが、服だったら絶対にコレだ!と思ってヴィヴィアーノのジャケットを着てきました。普段はその時々の気分に合わせて服を選ぶタイプで、常に新しいものに心が動くほうなのですが、これは一生手放さずに大事に着たいアイテムです。アヴァンギャルドでファンタジック、非日常感を感じさせてくれるヴィヴィアーノの世界観は唯一無二。スタイリストの仙波レナさんに教えていただいてから、私の中で大きく存在感を占めていて、私がディレクションしたあいみょんのCDジャケットの衣装を作ってもらったこともあります。

ヴィヴィアーノはたくさんのフリルが付いた甘めのアイテムを多く発表していて、それも大好きなのですが、昨年出合ったこのジャケットはかっちりとした雰囲気もあって一目惚れ。大好きなグリーンというのもツボで、パンツとセットアップで着ると一層テンションが上がります。他のアイテムと比べても気持ちの上がり方が全然違うんです。日常でなかなか着る機会はないからこそ、とっておきの場でこそ着たい心強いアイテム。そして、この服が似合う自分でい続けようと思わせてくれる、刺激とエネルギーにあふれたジャケットです」

とんだ林蘭(とんだばやし・らん)
1987年生まれ。25歳でイラストレーターを目指し、アートの世界へ。コラージュ、イラスト、ペインティング、映像などさまざまな手法で作品を制作。あいみょん、木村カエラなどミュージシャンのMVやジャケットなどヴィジュアルのアートディレクションも。アディダスとのコラボスニーカーをリリース中。

Photos:Takao Iwasawa Styling:Miku Ikeda(PORIN) Hair:Hanjee(小林麻美) Makeup:Miwako Mizuno(小林麻美)Hair & Makeup:Megumi Ochi(剛力彩芽)、Megumi Kuji(PORIN) Interview&Text:Miho Matsuda(小林麻美, 剛力彩芽) Mariko Uramoto(菊乃, 栗山愛以,とんだ林蘭) Edit:Mariko Kimbara

Magazine

DECEMBER 2024 N°182

2024.10.28 発売

Gift of Giving

ギフトの悦び

オンライン書店で購入する