【カナダ・オンタリオ食紀行】多様性の街トロントで、多彩な食文化を胃袋におさめる食い倒れツアー〈前編〉
オンタリオ州の食とワインに出会う旅。今回は多文化都市として知られる州都トロントで、食の多様性を満喫。フードツアーに参加して効率よく食べ歩き、こだわりのお店で洗練の食に舌鼓!
フードツアーに参加して、ケンジントンマーケット&チャイナタウンの食の多様性を満喫!
19世紀から続く移民の歴史により、世界各国の食文化が集まるケンジントンマーケット。そして北米最大級の規模を誇るチャイナタウン。この2つのエリアは散歩しているだけでも、どこかにおいしそうな店があるだろうことはわかります。でも、それはどこ? そんな時は手っ取り早く、地元の人に教えてもらうのが一番!
「カリナリー・アドベンチャー社」の“チャイナタウン+ケンジントンマーケット・フードツアー”は、米国フォーブス誌で“世界9大フードツアーのひとつ”に選ばれた、人気のツアー。トロントリアン(トロントっ子のこと)のケイトリンさんが、歴史的バックボーンやプチ情報を織り交ぜながら、数店舗を徒歩で巡り、各店で特徴的なメニューを試食します。
チャイナタウンの町中華・龍笙楼(Rol San Restaurant)で、ぷりぷりのエビ餃子やトビコをのせた焼売などの点心から、この日はスタート。
レンガ造りの建物が連なるケンジントンマーケットへ移動し、家族経営の牧場からのみ仕入れるこだわりの精肉店Sanagan’s Meat Lockerへ。買い物客でにぎわう店内でチーズやハムなどのシャルキュトリーを試食。
CRUMBSではケンジントンマーケットでおなじみのスナック、ジャマイカン・ビーフパティ(ビーフパイ)を購入。パイ生地の中からアツアツの牛肉とチーズがこぼれ落ちそう。
ヴィーガン&グルテンフリーのベーカリーBURNER’Sでは、罪悪感なしにクッキーブラウニーをぱくり。
わずか3時間で、バラエティ豊かな6店舗の食が楽しめるフードツアー。この街の多様性が、舌と胃袋を通して感じられます。
Culinary Adventure Co.
料金/99CAD(6〜12歳 94CAD)
時間/土 11:00〜14:30
URL/culinaryadventureco.com/tour/chinatown-kensington-market-food-tour
ザ・リッツ・カールトンが手掛けると、食体験もこんなにスペシャル!
伝説のサービスで知られる名門ホテル、ザ・リッツ・カールトンが用意した食体験は、エクスクルーシブで実にユニーク! そしてもちろん、エレガント!
“マスタークラス:マーケット・トゥ・テーブル・エクスペリエンス”は、シェフと共に市場に出かけ、キッチン付きのスイートルームでシェフが腕を振るってくれるというもの。今回は、かつてカリフォルニアの超有名店「シェパニーズ」で経験を積み、ザ・リッツ・カールトン トロントの総料理長のジェフ・クランプさんが担当してくれました。
買い出しに訪れたのは、有名シェフたちの御用達であるセント・ローレンス・マーケット。多様性の街トロントを集約したように、多彩な食材が並んでいます。
ジェフさんは精肉店の前で「燻製肉の文化はドイツやオランダが持ってきたんですよ」、鮮魚コーナーでは「サスティナブルな取り組みを認証した“OCEAN WISE”マークが付いた魚を選びます」と、市場を案内。鮮魚店で刺身にもできる新鮮なサーモン、野菜コーナーで日本では見慣れない黄色いカボチャなどを購入し、お買い物は完了。ホテルへ戻ります。
シェフズコートに着替えたジェフさんは、スイートルームのキッチンで調理をスタート。先ほど一緒に購入したサーモンを手際よくカットし、アップルサイダーで煮込んだカボチャをさらにチーズやこがしバターで仕上げていきます。すぐそばでシェフの技を見学でき、コツやアドバイスも直伝いただけるとは、なんて幸運!
できあがった料理はこの日はスイートのダイニングでいただきました。しばしの時間、スイートルームを利用できるのもうれしい点かも。
Master Class: Market to Table Experience
料金/395CAD(1名につき、催行は2〜6名、3日前に予約を)
URL/www.ritzcarlton.com/en/hotels/yyzrz-the-ritz-carlton-toronto/overview/
ザ・リッツ・カールトン トロントの厨房内に特別席をリザーブ!
もうひとつ、ザ・リッツ・カールトン トロントの素晴らしき食体験は、イタリア料理の「TOCA Restaurant」にて。調理シーンが見られるショーキッチンどころか、なんとシェフたちが立ち働く厨房内にテーブルを予約できます!
レストランの受付で予約名を告げると、案内されるのは、賑わう客席を通り抜けて、ウェイターが行き来するキッチンの扉の向こう側。活気にあふれる厨房の一角に鎮座する巨大テーブルに、皿やグラスがセットされています。
シャンパンからはじまり、シャルキュトリーやグリルした野菜に、巨大なゴルゴンゾーラ内でからめるスパゲッティに、巨大ステーキにロブスター、そしてデザートの盛り合わせ。大皿料理が次々に運ばれてきます。
じっくり会話を楽しむというより、調理の音や匂いに包まれて、ライブ感を楽しむディナー。盛り上がること必至です。
ホテルはトロントのダウンタウン、金融とエンターテイメントの中心地に位置。263室のスイートとゲストルームはオンタリオ湖またはスカイラインを望みます。広さは41平方メートル以上あり、これはトロントでも最大級。
トロント国際映画祭の開催地が近いせいか、室内にはストロボ風のスタンドライトや女優のモノクローム写真が飾られ、エレガントな雰囲気。カナダの鉄道の歴史や初期のオンタリオ議会ビルなどがデザインのモチーフにもなっています。
The Ritz Carlton Toronto
住所/181 Wellington Street West, Toronto, Ontario, Canada M5V 3G7
TEL/+1-416-585-2500
URL/www.ritzcarlton.com/en/hotels/yyzrz-the-ritz-carlton-toronto/overview/
女性オーナーのセンスが光る、自然派ワインのボトルショップ&バー
ベイビューアベニューとベルサイズドライブの角、ガラス張りのスタイリッシュな店構えが目を引く自然派ワインのボトルショップ&バー「ザ・ドーター」。オールドワールドからニューワールド、クラシックからファンキー、あらゆる自然派ワインを揃え、ボトルを購入することも、ここで飲食することもできます。
早速、テイスティング。スパークリングのオレンジワイン「クローチ・カンペデッロ」や、ブラックベリーの芳醇な香りの「プジタ・リブレ」などを飲み比べしました。自然派ワインのバラエティの豊かさ、奥の深さに、目からウロコが落ちる思いです。
今注目を集めているカナダのプリンス・エドワード・カウンティのワインも並んでいます。ちなみにココではサスティナブルな生産者をサポートし、エコフレンドリーなワインにこだわっているそう。
一緒にサーブされる料理もグルテンフリーの黒米クラッカーや分厚いパテのミニハンバーガー、ブラータチーズなど、罪悪感フリー&SNS映えするラインナップです。
「自然派ワインのいいところは、ノー・ケミカル(酸化防止剤は入っているけれど)だから、頭痛にならない点」と、教えてくれたのはオーナーシェフのマリッサ・ゴールドシュタインさん。ワインのキュレートを担当し、飲むシチュエーションや気分、好みのテイストなどによってベストな1本を選んでくれます。
トロントで生まれ、NYで法律やマネージメントを学び、フランス料理店やベーカリーで働いた経験を持ち、建築も学んだという、美しきスーパーウーマンのローレンさん。幅広い経験が、お店の雰囲気やワインのキュレートに生かされています。
実はトロントでは酒類を販売する個人のボトルショップがまだ珍しく、コロナ禍後、徐々に増えていく傾向にあるとか。新しい潮流を感じます。
The Daughter
住所/1560 Bayview Avenue, Toronto, Ontario M4G 3B8
TEL/+1-647-348-9928
URL/www.thedaughter.ca/
自家栽培&自家醸造、究極の“ファームtoテーブル”
レスリービルの中心部、個人商店が集まるクイーンストリートイースト沿いに建つ、ブリュワリー&屋上菜園を併設する「アヴリング」。再生可能な生産方法と持続可能なアプローチを優先するサプライヤーとの関係を築き、真の“ファーム・トゥ・テーブル”を実践するレストラン&ビールパブです。
屋上の約371平方メートルの自家菜園では、天然の肥料やオーガニックな種子を使ったエコロジー農法を実践。ここで育てた野菜やハーブ類は、レストランのメニューや季節のビールの風味付けに使われています。ちなみに屋上菜園で使われる水は、ブリュワリーで使用した水を再利用しているそう。食の教育にも取り組み、ツアーやワークショップも開催しています。
半地下のブリュワリーではラガーとエールを醸造し、樽熟成も行っています。今、力を入れているのは素材を生かしたオーガニックビール。ちなみに、ラベルに書かれた“99”のマークは、99%がオンタリオ州産であることの証です。
かつて倉庫だった天井の高いレストランは、タップを囲むバーカウンターやテーブル席からなり、平日でも若者で大賑わい。メニューは、自家栽培や地元産の食材を使い、カナダの風景や地元コミュニティ、醸造家や生産者、シェフといった作り手の思いを表現したクリエイティブなもの。とのことですが、新鮮な食材から作った思いのこもった料理は、シンプルに美味しく、ビールとの相性もばっちりです!
マスクメロンにスダチやブラックペッパーのアクセントを加えたドラフトビール「ホライゾン・ライン」を飲みつつ、4コースからなるブランチメニューを満喫。メインの5つのスパイスを効かせた鴨のコンフィには、ぶどうの皮と一緒に樽熟成させたブループラムのビールをペアリング。ビールの奥深い世界が楽しめます。
Avling
住所/1042 Queen Street East, toronto, Ontario, M4M1K4
TEL/+1-416-469-1010
URL/www.avling.ca/
メーガン妃のチーズも保管。トロントの食を支える食料品店ツアー
開店と同時にお客が次から次へとやってくる、人気食料品店「チーズ・ブティック」。店内は、天井から無数のソーセージや生ハムが吊るされ、チーズの塊が所せましと山積みに。奥にはエイジングビーフがずらり。鮮度の高い野菜やフルーツ、菓子類も並んでいます。
実はこのお店、1970年ブロア・ウエスト・ビレッジに開業し、3世代にわたってトロントの食文化の発展を支えてきました。
トロントに初めてブリーチーズを持ち込んだのは、創業者であるアルバニア移民のハイセン・プリスティンさん。ブリーチーズのとろけるような美味しさに、トロントの人々はたちまち虜に。ハイセンさんはヨーロッパでの伝統的なチーズの熟成方法を継承し、やがてカナダにおける熟成チーズの先駆者にもなったそう。
今では、あらゆる食料品のみならずキッチン用品や園芸用品まで、生活全般のアイテムを扱っているけれど、店名に掲げるように、チーズには強いこだわりが。今も、チーズの貯蔵庫はこの店の心臓部です。
「ここにあるチーズだけで、1億ドル以上する」という貯蔵庫。実は、ガイドツアーで中に入ることができます。
ひやりと寒い8度にキープされた貯蔵庫には、天井から1000ポンドもの世界一大きいチーズがまるでサンドバックのように吊るされています。棚には円盤型の巨大なチーズが整然と並んでいます。チーズ愛好家たちはここにチーズを預け、エイジングをするのだとか。顧客には、メーガン妃やベン・アフレックも名前を連ねています。
ガイドツアーでは「チーズ・ブティック」の歴史を振り返りつつ、希少なチーズ6種のテイスティング、店内の説明を受けながらシャルキュトリーやおやつの試食も。ワインボトルのお土産付きで、140CAD(1名につき、別途予約料)。チーズ好きにはたまらないツアーといえそう。
Cheese Boutique
住所/45 Ripley Ave, Toronto, Ontario, M6S 3P2
TEL/+1-416-762-6292
URL/www.cheeseboutique.com/
取材協力
カナダ・オンタリオ州観光局 https://www.destinationontario.com/ja-jp/japan
Photos & Text: Chie Koseki