注目のデザイナーが語る、これまでとこれからの色の話 vol.2 KANAKO SAKAI | Numero TOKYO
Fashion / Feature

注目のデザイナーが語る、これまでとこれからの色の話 vol.2 KANAKO SAKAI

未来への希望の思いを込めて、洋服に色を落とし込むファッションデザイナーたち。東京ファッションウィークで2024年春夏コレクションを披露し、活躍に期待が寄せられている二人に、自身が惹かれる色について聞いた。第2回は「KANAKO SAKAI」のデザイナー、サカイカナコ。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2024年1・2月合併号掲載)

KANAKO SAKAI|カナコ サカイ

2024年、どんな色にしたい?
「色はほとんどないけれど、光を持って輝くプリズムカラー」

毎シーズン、コレクション前は伝統工芸のテクニックを探しに、関西から日本各地を巡るファブリックトリップへ。シーズンカラーは、その旅路で始まるイメージの連想ゲームから見つかることが多いという。

「2024年春夏は、未知の世界への冒険から『ようこそ』がテーマ。行ったことがない場所で思い浮かんだ宇宙や深海のミステリアスな世界観を表現できる螺鈿細工の色は、まさに求めていたもの。常に変化し続ける、完璧ではないけどきれいな色に惹かれます。来季は焼箔から着想を得てコレクションを展開する予定なので、引き続きプリズムカラーにとらわれそうです」。

好きな色は、幼少期から決まってブルー。くすんだライトブルーのクレヨンや色鉛筆は好きすぎて使えず、いつもきれいに残していたのだそう。現在もブルーはコレクションに必ず取り入れる、ブランドに欠かせない色だ。「今回初めて用いた黄みのあるブルーは、宇宙や深海の写真、資料を大量に集めて見比べ、宇宙で光が変化する過程から引用しました。染め屋さんでの色出しでも、特に時間を費やしたこだわりの色です」

(左)一枚の螺鈿細工を糸状にし織物に仕立てた、京都・京丹後の織元「民谷螺鈿」の螺鈿織りを用いたコートドレス。ブランドが掲げる伝統工芸技術の伝承を体現した。玉虫色の繊細な輝きが印象的。(右)光沢のあるシルクを贅沢に使ったロングドレスの裏地は意外性のある赤。着物の美意識と赤い裏地は肌を温めるという言い伝えを取り入れている。

留学先のNYで過ごした4年間は常に自らのルーツと向き合う必要があり、日本人であることを強く意識するようになった。自分自身を掘り下げ、美を見いだしたのは、とりとめのないもの、永遠性、仏教でいう色即是空の精神性だという。頭の中に浮かんでは消え、つながり、広がっていくイメージや色の瞬間瞬間をキャッチして、服作りにアウトプットする。サカイカナコがプリズムカラーに魅了される理由は、自らのオリジンにあるようだ。

Photos:Anna Miyoshi Text:Aika Kawada Edit:Chiho Inoue

Profile

サカイカナコKanako Sakai NYのパーソンズ・スクール・オブ・デザイン在学中より3.1 フィリップ リムやプロエンザ スクーラーでインターンを経験。帰国後、東京のデザイナーズブランド勤務を経て「KANAKO SAKAI」を設立。22SSでコレクションデビュー。

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