亀梨和也が魅せる グラムロックな世界。Numero TOKYOに語る17年越しの本心
今回初登場となる、KAT-TUNのメンバー亀梨和也。2023年8月、約4年振りのソロセカンドシングルをリリースし、12月には主演を務めた映画『怪物の木こり』が公開された。グループでの活動だけでなく、ソロ活動、俳優やキャスターとしても幅広く活躍し続ける彼に迫ったスペシャルな企画。ヌメロ流のモードでグラムロックなスタイルを華麗に纏い、今までにない表情を披露してくれた。さらに、17年越しに出演が叶った亀梨和也の本心を語る、ロングインタビューも!
納得してもらえる自分になる
──なんと今回の撮影は17年越しの希望が叶った記念企画です(笑)。
「はい。今日スタイリングをしてくれた増田令子さんや編集長の杏子さん、写真家の新田桂一さんとは、僕が19歳か20歳の頃に出会って。そのときから一緒に仕事したい! Numéroに出たい! と言い続けて。ようやく実現できました」
──私たちからすると、山が動いた!という感覚があるほど感慨深いです。
「そうだよね。杏子さんにも『大丈夫?』って何度も確認された(笑)。大丈夫です。ちゃんと実現させるからって」
──今回実現した真意は、会社の体制が新しくなったから、ですか?
「ううん。発端は8月に出したシングル『Cross』のプロモーションのとき。いろいろなことが慌ただしく進んでしまって、自分的に思うようなプロモーションが出来ていなかったから、それなら自分で動こう! と思って。これまで、自分の仕事を自分で作り出すことって出来なかったし、してこなかったけど、今回は17年前からの希望でもあるし。事務所とちょっと真剣に話をして、僕から杏子さんに「例の約束をそろそろ実現させませんかって。これは以前の体制のときの話なので、今の流れが来る前に実現できていた企画」
──「ずっとやりたかった」ものを具体的に言うと?
「そもそも昔から何でも挑戦してみたかったの。いろいろな大人と出会って仕事したい、柔軟でいたいなと思っていて。でも、一人でやりすぎちゃうと、集団におけるルールが守りづらくなるし、なんで亀梨だけいいの? みたいなことにもなるよね。でも、その特別感を感じられる先輩が身近にいて、それが僕にとっては木村拓哉という存在だった。『木村拓哉だからOK』というルールってあるんだよ、きっと。亡くなった勘三郎さんに言われた言葉があって。『今の若者は傾いてない。個性だっつって、ただ好き勝手やってるだけだ。本物の傾き者っていうのは、誰よりも基本を満たしていて、でもそこじゃ収まり切らないやつが初めて傾ける。亀梨はまだ全然満たし切れてねえんだ。会社の誰もがお前がトップだと言えるか?』みたいな。木村拓哉は紛れもなくトップで、だから、木村くんがやることはカッコいいし、成立するのだ…という事実に21か22歳で気付くわけですね。だったら、満たすまでやり続けよう! と思考が切り替わった。満たしてないのに、人と違うことをやりたいっていうのはただのわがままであり、自分の実力じゃない。一瞬の風速は周りの力によって生み出されるかもしれないけど、地に足が着いているとはいえない。この約15年でトップを取れたとは言い切れないかもしれないけど、でも、僕が今、違う流れを提示しても、納得してもらえるぐらいにはやってこれたかな? って」
憧れたカッコいい大人たち
──今回のスタッフとは、どのように出会ったのですか。
「出会いって、本当にご縁だなと思います。もともとはブルース・ウェーバーの写真展が開催され、ご本人も来日するって聞いて、一人で行ったんだよね。確か19歳のとき。オープニングパーティに一人でいたら、『こっちおいでよ』って声かけてくれた人がいて。行ったら、いろんな人がいた。『どうも。亀梨です』『ドラマ見てるよ』『ありがとうございます』みたいな(笑)。そのうち『みんな二次会に行くけど、どうする?』ってなって。『僕、未成年だからお酒飲めないし。帰ります』『え、何で来てるの?』『車です』『じゃ乗っけてってよ』って」
──パーソナルスペースがやけに狭い皆さんですね(笑)。
「あはは。で『次はここにおいでよ』って誘ってもらった。そんなことがきっかけで、20歳になったあとは皆が集まるバーにも顔を出すようになって。やっぱりカッコいいんですよ。僕が欲しいなと思っている服とか、いいなぁと憧れているものの流行を創っている人たちだったから。すげえ!みたいな。カッコいい大人に遊んでもらってるって感じだった。ドラマ『野ブタ。をプロデュース』が終わって、どこに行ってもワーッと騒がれるくらい亀梨、プチブームでしたけど(笑)、サングラスかけてバーに行ったら『外は暗い! サングラスはずしてハイ、やり直し!』って怒られて、『はい!』って入り直したり。飲みすぎてブッ潰れて、迷惑をいっぱいおかけしたり(笑)。Aサイドでは、キャーキャー言ってもらってたけど、Bサイドでは伸びた鼻柱をバカバカとへし折られてた」
──編集長の杏子さんいわく、当時から〝俺を特別扱いしてね〟みたいなのが全くなかった。だから皆に可愛がられたんだと思うと。
「だって特別じゃないもん(笑)。アイドルなんてたくさん見てきている人たちだし、何ならもっとスターもいるわけですから」
──事務所に怒られたりは?
「怒られたよ。行っちゃダメって言われた(笑)。でも、悪い人たちの集まりではないからね。ただ、会社の視点でいうと『ちょっと刺激的すぎ』た。皆さんのような経験ある大人な意見や思考を、タレントが手にしちゃったら、ややこしいことも起きると思う。だけど、僕はそもそも優等生とか好青年のアプローチをしていなかったから。ま、いっかって」
とんだダサい人生だなって
──最新作である映画『怪物の木こり』がスペインの国際映画祭に出品されて、帰国したばかりですね。
「サイコパスって演じようがめちゃくちゃあるから、役者の立場からすると奇声を上げたり、つい演りたくなってしまう。でも、三池監督と話して、今回は何もやらないことに決めた。目の動きはアクセントとして入れたけど、派手なことは全くやらなかった」
──それが逆に怖かったです。
「あとはもう『亀梨和也が考える、亀梨和也らしくいてくれればいいよ』って監督に言われて(笑)。なんかね、面白いこと言ってくれたの。『亀梨くんって虚像の人間じゃない? だってアイドルなんだよ? “偽り”とまでは言わないけど、フルオープンで生きてるかというとそうじゃないわけじゃん』って。確かに、恋人いますかとか、どんな生活してますかという問いに基本閉じて生きてきたわけで。かといって、KAT-TUNでいるときに“偽り”を見せているつもりもないの。監督いわく『にじみ出るものがすでに怖いから大丈夫。だってサイコパスじゃん』とか言われて。……え?って。確かにパッと現場に来てさ、笑ってくださいって笑いたくなくてもニコニコ笑っている時点で、普通の人からしてみればサイコパスだよね。自分の感情じゃない感情で生きている時間が長いんだもん。俺はどちらかというと本音に近い表現をしてきたほうだから、俺よりサイコパスな人はいっぱいいると思うけど(笑)」
──彼女いますかと聞かれたら、普通は「はい」か「いいえ」だけど、確かに「言わないでおきます」というのはアイドル独特かも。
「それは、僕が女性ものの香水をつける発想と似ているんですよね。誰のためか? なの。香水って、男は男ものをつけるじゃない? でも、自分が疲れてるときに嗅ぎたいのは、女性の匂いなんだよね。『あ、いい匂い。頑張ろ』って思うじゃん。それと一緒で、彼女の話も、僕がタレントとして自分を守りたいから言えないっていう発想はない。相手のことだったりもあるし。もし、僕のファンの人が全員、僕の彼女のことを知りたいって言って、相手の方もOKと言うなら、言いますよ(笑)。ただ知りたくない、聞きたくないという人が少なからずいるわけで、そこに対する配慮かな。だって俺、37歳だよ。しかも、こんな感じだよ? 童貞じゃないよねって思うでしょ(笑)」
──逆に言えば「彼女」の気持ちはどうなんだろう?
「僕のなかには常にファンの人の存在があるわけで、そこを理解してもらえないと恋愛は難しいと思う。そういう人じゃないと僕も好きにはならないし。ただ…そこに直面したこともあるよ。ものすごくぶっちゃけると、たとえ友達であっても、女性と車に乗るとき、なるべく人目につかないように隠れてもらうことが当たり前になっていて。でも、海外でそういう話をすると、なんで恋人隠すの? ってなる。実際、海外に行ったときに女性と車に乗る機会があったんだけど、助手席の扉の前でずっと待ってるの。何故扉を開けてくれないの? って。こっちはもうパパッと乗って、ぎゅーんって出たいのに(笑)。でも普通に考えたらそうだよね。そのときにすごい情けなくなった。さんざん女性にキャーキャー言ってもらってるのに、蓋を開けてみたら女性に対してカッコいいことなんて1ミリもできてない。レディファーストどころか、隠れろって言ってるわけよ。とんだダサイ人生だなと思った、マジで(笑)」
──気づいてよかったですね(笑)。ところで、このところ、他媒体のインタビューで「変化」とか「壊したい」というキーワードを口にしていました。それは、所属事務所に訪れる大きな変化を知っていたから?
「いや、たまたま。何も知らない頃から、2023年はフルスロットルで行きたいと伝えていました。ちょっと恥ずかしいけど、僕2月23日生まれなんです。だから、23年はどうしても大事にしたかった。うちのグループって、6人でデビューしたんだけど、10周年の前に3人になってしまって。デビュー当時は、SMAPみたいなグループになりたいとか想像していたけど、辞めたいって言われちゃったらどうしようもないわけで。どうにもならないことってあるんだな…って。でも、このまま終われねぇぞって思ったの。それは自分のためというよりも、ファンの方や現メンバー、そして辞めていった彼らに対しても、辞めたグループがカッコよくあり続けるさまを示したかった。だからこそ、KAT-TUNの15周年はしっかりやりたかったんだけど、コロナの影響でお客さんを入れてライブができなかったり。この2年はそのリカバリーに必死だった。一方で、亀梨和也という個人に関しては長いことフォーカスをしっかり当ててあげられなくて。去年くらいから、そろそろ自分にもマインドを向けようと思ってたの。だから、そう発言していたんだと思う」
──今後はますます亀梨さん個人の活動が見られる、と。
「自分自身のことはもう何年も後回しにしてきたから、会社にやりたいことないの? と聞かれても、最初はわからない…っていう感じだった。極端なこと言うと、5年くらい前は15周年の先は一旦ゼロにしてみようとも思っていたから。『1~2年休みます』かもしれなかったし、『辞めます』という可能性もゼロじゃなかった。でも、この仕事を続けているなら、もう一回デビュー前後のフルスロットルな気持ちを呼び起こしてみようかなって思ったんだよね。今100%の状態かどうかは正直まだわからない。だから、自分が信頼している人たちに、僕を題材に遊んでもらいたいなって。信用している人たちの前なら何でもできるから。その中で刺激を受けたら新しい視点に気づけるかなって。ありがちな言葉で言っちゃうと、自分探し…みたいな(笑)」
──会社が大きく変わることに、どんな思いがありますか。
「今(注:10月15日時点)は、独立したいという願望も、こうしたいという欲望も何もない。でも、一人でやっていくとなったら、一人でやれる自信もある、という感じかな。未来に対する不安はないよ」
──不安はない?
「全くない。もちろん、これまで通りいかないことや大変なことは現実起きているけれど、極論を言うと、この世界だけが人生じゃないとも思っているから。だって僕、12歳から会社に入っているんだよ。一回もバイトしたことないし、就活もしたことがないの」
──バイトもしたことがないのか(笑)
「バイト、禁止だもん。副業したらクビになっちゃうから。副業でクビになった人はあまりいないけど、クビ宣告されたケースも知っているし。デビューして18年近く、この世界でいろいろやってきたけど、最近、自分にもまだまだやれることはあるんだっていうことに楽しみを覚え始めていて。想像だけど、芸能界を辞めた亀梨には何ができるのかという、これまでの人生で一度も経験したことのない可能性もあって。楽しみでしかない。なんたって、12歳からルールの中にしかいないんだから。義務教育があって、会社に入ったら『こうしなさい。これはダメです』って言われて。もちろん守ってもらっている側面もあるけど、37歳までルールしかない人生だった。だから、ルールは法律だけという人生は不安でも何でもなくて、どうする? 何ができる? 何しようか? みたいな。これまで築き上げてきたブランドを使わなくてもいい。大変なこともあると思うけど、失敗も成功も自分に降りかかってくるわけでしょう? 全然OK」
──亀梨ファンは「亀梨くんが帰ってきた!」って喜ぶでしょうね。
「そう思ってくれてるとうれしいね。10月からはYouTubeも始めるし、しばらくは亀梨和也とフルスロットルで向き合ってみようと思ってる」
──今後の人生について。
「これまで、将来のことはほとんど見ずに来たんです。毎年毎年の流れだけ。それでここまできたけど、さすがにこういう状況になって、2年ぐらい先のイメージを今は見てるかな(笑)。40歳のときにはこんな流れにしたいなって、ある程度の想定をして、動き出しています」
──貯金とかしていますか(笑)。
「あんまりしてないんですよ。困っちゃいますね。貯金はしてないけど、でも資産は一応ちょっとある(笑)」
──60歳の自分は想像もしてない?
「してない。でも、40歳ぐらいで例えば『明日辞める』って決めたとしても、60歳になってもちゃんとご飯が食べられるようなものは作っていきたいと思う。この2年くらいで(笑)。20代のときに千葉に別荘を借りてたの。そこに行くとさ、何もいらないんだ。サーフボードと短パン、Tシャツがあればいい。仲間はやっぱり必要だったけど、ご飯が食えて、寝るところがあればいい。おしゃれも好きだし、物もすごい好きだけど、もともとは6畳二間で育った人間だから。でも、向こう20年、人に迷惑かけずに生きたいから、そこに対してはちゃんとフォーカスしていきたいと思う」
Photos:Keiichi Nitta at Ota office Model:Kazuya Kamenashi Director:Ako Tanaka Stylist:Reiko Masuda Hair & Makeup:Takahiro Hashimoto at Shima Edit & Text:Shomi Abe
Intereview & Text : Atsuko Udo Edit:Michie Mito