Reiインタビュー「突き詰める楽しさが原動力」 | Numero TOKYO
Culture / Feature

Reiインタビュー「突き詰める楽しさが原動力」

ブルーズをはじめとするさまざまな音楽への造詣と 卓越したギタースキルで唯一無二の音を生み出しているシンガー・ソングライター、ギタリストのRei。なぜ彼女はストイックに探究し続けることができるのだろうか。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年12月号掲載)

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──”凄腕ギタリスト”と評されるようになった今でも毎日ギターの練習をされているそうですね。

「ギターの基礎練習は毎日しています。それに加えて、ライブが迫っていたり作品の制作期間には実務的な練習もやっていきます。スポーツでいうなら、ジムに行って基礎となる体力や筋力をつくることと、競技でパフォームすることが別にあるようなイメージです。すべての行為に対して明確な目的意識を持って取り組むことを意識しています。作品づくりにおいては、コンセプトや音楽性といったことをブレインマッピングしてから作業を始めます。 例えば、要素として入れたい音楽のジャンルをあらためて掘り下げたり、今の自分に足りていないテクニックをピンポイントで身に付けたり、ヴィジュアルを詰めていったり。そうやってデータをインプットしてからクリエイトしていくことが多いです」

──アスリートのような感覚もあるのでしょうか。

「もともと4歳の頃からクラシックギターをやっていて、コンペティションに出場することも多かったのでアスリート的な感覚が強いのかもしれません。精神的な部分で豊かになるということも大事ではありますが、例えば想像力が翼だとしたら、飛ぶための筋力が技術。絵画やファッションでも言えることだと思いますが、『あそこまで飛びたい』と思っても技術が伴わないと想像だけが先走ってしまいますよね」

 

──ギターにおけるこだわりは?

「一音聴いただけで誰のギターかわかる音作りにはこだわってきました。普段よく使っているピンクのジャズマスターは結構カスタムを施していて、より尖った音がするんです。そのギターでリズミカルに弾くカッティング奏法をするのは私のシグネチャーだと思っています。あと『What Do You Want?』という曲ではテレキャスターというギターを弾いていますが、このギターはカントリーでもよく使われる明るくて少し粘り気のある音色がします。このギターも私のシグネチャートーンの一つかもしれません。

また、私にとってギターは表現ツールでありながらファッションアイテムでもあるので、ギターも含めたトータルバランスでヴィジュアルを考えています。今日の撮影で使用したジャズマスターは本来真っ白の単色のボディーなのですが、今回の撮影ではシックでモードな雰囲気のお洋服を着ようと思ったので、メイクやギターで外しを効かせたくて、今朝メイクルームで丸いシールをギターに貼って水玉模様にカスタムしました。バディ・ガイというブルーズギタリストが黒いボディーに白い水玉のギターを使っているのですが、それを反転したようなデザインにしたら、わかる人にはわかっていただけるのではないかと思ってます。以前は、必要に迫られてその形になっている機能美のあるアイテムに夢中になっていたのですが、最近は対極的な意味のないデザインに惹かれています。お洋服でも意味がわからない装飾に惹かれたりしますね」

自己との対話から世界が広がる

――何かを探究する楽しさをどう捉えていますか。

「『夢中になりたい』という渇望が強いんだと思います。ギターのみならず、何かを突き詰めることはすごく楽しい作業です。何かを探究しているときは、ウォータースライダーに乗っているみたいに、自分だけの空間でチューブの中を猛スピードで滑っているような感覚があります。そして、作品が完成したときや自分が突き詰めた技術やパフォーマンスをライブで披露したときには向こう側に抜けた爽快感があって、何ものにも代え難い。探究することの楽しさを音楽に教えてもらっていると感じます」

──常に探究し続けていると、行き詰まることはないですか。

「長い間表現をしているとアイデアを得られない時期もあるのですが、最近では外に新しいインスピレーションを求めるだけでなく、自分自身を見つめることで知ることができる世界があると気づきました。自分はどういうものが好きで、なぜそれを魅力的だと思うのか。自己との対話を経ると世界が広がって、次に作りたいアイデアが浮かんでくることがあります。以前、細野晴臣さんと共演したときに『似たようなものを作ってしまうことに恐怖を感じるんです』とお伝えしたら『自分はその時々で楽しいと感じることをやってきた。その気持ちを大事にすればいいんじゃないかな』とおっしゃってくださった。高みを目指すあまり、自分の楽しさをないがしろにしてしまうことがあるとハッとさせられました。オーディエンスが増えると、求められるものに応えたいという気持ちが生まれますが、音楽活動の原点でもある自分が楽しいと感じることを常に探すことも大事だと思っています」


さまざまなミュージシャンとジャムセッションを行うライブ「Reipresents”JAM!JAM!JAM!”2022」にてフェンダーのテレキャスターをかき鳴らしながら「LonelyDanceClub」を歌うRei。Photo:Hayashi Maco


愛用しているギターの一つで、本文中にも登場したピンクのジャズマスター。楽曲「COCOA」などで使用されている。Photo:Rei



Mini Album 『VOICE』

Reiny Records/ユニバーサルミュージック
各種配信はこちらから

Photo:Takao Iwasawa Hair & Makeup:Haruka Miyamoto Interview & Text:Kaori Komatsu Cooperation:Fender Flagship Tokyo

Profile

Reiレイ シンガー・ソングライター、ギタリスト。1993年に生まれ、幼少期をNYで過ごす。2015年、1stミニアルバム『BLU』でデビュー。21年にはUS/VerveForecastレーベルより全世界デビュー。22年にコラボレーションアルバム『QUILT』をリリースし、細野晴臣、長岡亮介、藤原さくらなど親交のある音楽仲間と楽曲を発表。同年、フォーブスジャパン誌が発表した「世界を変える30歳未満30人の日本人」の一人に選出される。23年6月に楽器メーカーのフェンダーとパートナーシップ契約を結ぶ。HPInstagramFacebookYouTube 

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