【連載】「ニュースから知る、世界の仕組み」vol.54 オリックス 山本由伸投手のメジャー移籍
Sumally Founder & CEOの山本憲資による連載「ニュースから知る、世界の仕組み」。アートや音楽、食への造詣が深い彼ならではの視点で、ニュースの裏側を解説します。
vol.54 オリックスのエース 山本由伸投手のメジャー移籍
先週末に、阪神とオリックスの日本シリーズが開幕しました。僕は神戸出身なので、どちらのチームにもそれなりの愛着があります。59年ぶりの関西ダービーとなった今年のシリーズですが、阪神、オリックスともそこまで強くなかったので、この組み合わせが実現したことには少し驚きがあります。
そしてオリックスのエースの山本由伸投手、初戦は阪神打線が見事攻略しましたが、レギュラーシーズンにおいては16勝6敗、防御率1.21と圧巻の成績を残しました。シーズン後のポスティングシステムでのメジャー移籍が噂されています。
Is Japanese hurler Yoshinobu Yamamoto worth the $200M it may cost to sign him? For the Mets, he might be
https://nypost.com/2023/10/27/sports/is-japanese-hurler-yoshinobu-yamamoto-worth-200m-to-the-mets/
現地のNew York Post紙も上のように、2億ドル(約300億円)の価値はあるだろうか、おそらくメッツにはある!と見出しを打っていますが、契約年数は8年程度で合計の金額は2億ドルを越えるのではとも言われており、日本人選手では過去最高額の契約、メジャーの歴史をみても、投手でこの規模の契約を得た選手は一桁しかいません。
日本の球団が弾道測定機器の機器や「ホークアイ」と呼ばれる動作解析システムを導入しそのデータを提供し始めたことで、メジャーの各球団はそのデータを活用し、回転数やその速度、ボールの軌道や角度など項目ごとに詳細な分析ができるようになりました。それが故に、メジャー移籍前の選手に高額の年俸を掲示しやすくなったという経緯があります。
元々の所属球団に払われる譲渡金額のルールも、松坂大輔投手やダルビッシュ有投手の時代は純粋な入札性で、2人共5000万ドル(現在のレートで約75億円)を越えでしたが、その後は2000万ドル(現在のレートで約30億円)の上限が設定されていました。田中将大投手、前田健太投手、大谷翔平選手の3人はこの金額で移籍しています。
その後、さらに譲渡金を抑えたいメジャーの球団の意向にあわせて、契約総額に応じて15〜20%の金額が設定されるかたちにルールが変わり、昨シーズン末にメジャーに移籍した吉田正尚選手や鈴木誠也選手の譲渡金額は1500万ドル前後の譲渡金額だったのですが、仮に山本投手が2億ドルの程度の年俸総額になったとすると譲渡金額も3000万ドル超と、以前の上限をも越えてくる規模で、オリックスにとっては大きい臨時収入になります。
ちなみに大谷選手は今シーズン末でFAとなりこちらも争奪戦が想定され、手術からの回復にどれだけ時間がかかるかという不安はありつつも、新たな契約の総額は5億ドル(約750億円)を越えるメジャー史上において過去最高額の金額になるのではと言われており、それはそれで凄いとしかいいようがありません。
来年30歳を迎える大谷選手ですが、10年程度の契約を結ぶ可能性がそれなりに高く、そうなると残りの選手としての現役の期間すべてが契約の対象となる可能性が高いわけですが、いわゆる企業の時価総額と考えてもかなりの価値と判断されるような金額がつけられようとしていて、山本投手の場合は今年まだ25歳なので、今回8年の契約を結んだとしても、その契約満了後に今回と同程度、ないしはそれ以上の規模の契約をオファーされる可能性も十分にあります。
NPBがMLBのレベルに追いついているとはなかなか言い難い部分はありながら、トップ選手の実力に関しては追いつけ追い越せどころかすでに凌駕しているといえる部分も十分にあり、なんとも誇らしいことです。ただ、年俸の水準では大きく差があり、国内のリーグの盛り上がりのためには、今後はその差が埋まっていくことも期待したいところです。そんなことを思いながら、日本シリーズを見守っていきたいと思います。
Text:Kensuke Yamamoto Edit:Chiho Inoue