ソムリエ店長がそっと教える「白ワイン」のちょっとマニアックな基本
白ワインの基本とは?
こんにちは、ワインブロガーのヒマワインです! さてみなさんは、「そろそろワインに詳しくなりたいな」と思うことはありませんか?
ワインに詳しくなったら、レストランでの食事ももっと楽しめそうだし、家飲みもさらに華やかになる気がしますよね。そこで今回は、「ちょっとマニアックな白ワインの基本」をテーマに、ワインマーケット・パーティ沼田英之店長にお話をうかがってきました。
基本を抑えつつ、ちょいマニアックなお話も伺っているので知識ゼロの方からちょっとかじったことのある方まで楽しんでいただけると思います!
それでは、以下私ヒマワインと沼田店長の掛け合いでお届けします!
【目次】
白ワイン「基本の3品種」
白ワイン基本の品種:ソーヴィニヨン・ブラン
白ワイン基本の品種:シャルドネ
白ワイン基本の品種:リースリング
辛口のリースリングは豚肉料理と好相性
ちょっと甘口リースリングと燻製肉を合わせてみる
白ワイン、ちょっとマニアックな3品種
エスニックに合わせたい、ゲヴュルツトラミネール
酸が魅力! 和食に合わせたい、アリゴテ
白ワインを楽しもう!
白ワイン「基本の3品種」
ヒマワイン(以下、ヒマ)「さて今回は「ちょっとマニアックな白ワインの基本」がテーマです」
沼田店長(以下、店長)「ちょっとマニアックっていうのがいいですね! では、まずは“基本”のところからお話していきましょうか。覚えてほしいのは基本の3品種です」
ヒマ「その3品種とは?」
店長「シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリングです」
ヒマ「おおざっぱに言えば、コクのあるシャルドネ、さっぱり系のソーヴィニヨン・ブラン、そして甘口にも辛口にもなる変幻自在のリースリング、といった感じですかね」
店長「ですね。この3品種だけ覚えておけば、その日つくる料理に合わせてスーパーでワインを選んだり、グラスワインの種類が豊富なレストランであれば、料理に合わせてワインをオーダーできるようにもなるはずですよ」
ヒマ「それができたらワイン通ですよ! ぜひ詳しく教えてください」
白ワイン基本の品種:ソーヴィニヨン・ブラン
店長「まず最初はソーヴィニヨン・ブランから。ヒマさんがおっしゃったように、さっぱり系の代表品種ですね」
ヒマ「スーパーなどで探すように記すと、ラベルに書いてある綴りは「Sauvignon Blanc」です」
店長「ソーヴィニヨン・ブランといえば、世界的にニュージーランド産のものが有名です。グレープフルーツのような香りがあって、しっかりと酸があって飲みやすい。暑い季節に冷やして飲むのに最高です」
ヒマ「間違いない」
店長「なので、まずはニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランを試すのがひとつ。基本的に味の方向性が似ているので、どれを選んでも大丈夫です。たとえばこの「インヴィーヴォ マールボロ ソーヴィニヨン・ブラン」もそのうちのひとつです」
ヒマ「あっ、これおいしいですよね。価格も2200円と手を出しやすい。合わせるならばどんな料理がいいでしょう?」
店長「ソーヴィニヨン・ブランはフランスのロワール地方が原産の品種ですが、ロワールではスモーク・サーモンやシェーヴル・チーズと合わせるのが定番。基本的には冷たい前菜に合わせたいワインです」
白ワイン基本の品種:シャルドネ
ヒマ「続いてはシャルドネでしょうか」
店長「ですね。ソーヴィニヨン・ブランがステンレスタンクで醸造し、タンクで熟成させる品種だとしたら、シャルドネはオーク樽との相性が良いワイン」
ヒマ「オーク樽で熟成させると、コクのある感じになりやすいんですよね」
店長「こちらのブレッド&バター シャルドネがいい例ですよね。ワインの熟成には内側を焼いた樽を使うんですが、その焼き具合で、まさにトーストだったりバターだったり、バニラだったりのニュアンスが出てくるんです」
ヒマ「“樽を効かせたシャルドネ”なんて言い方をするやつですね」
店長「それです。フランスのブルゴーニュ地方のシャルドネが有名ですが、焼いたパイナップルのような果実味と、樽由来のトーストやバニラ、それが特徴の品種なんです」
ヒマ「その味が基本だから、『Chardonnay』とラベルに書かれていたら、基本的にはいま沼田さんが教えてくれたような味になると」
店長「有名なフランスワインで、やはりシャルドネで造るシャブリなど一部の例外はありますが、基本的にそうですね。合わせたいのはクリームシチューやバターを効かせたムニエル」
ヒマ「寒い季節になってきて、クリーム系の温かい料理が恋しくなってくると、シャルドネが食卓に上がる機会が増えますよね」
店長「鶏のクリーム煮とかね。仕上げにレモンスライスを入れて一煮立ちさせるとなお相性が良くなります」
ヒマ「それ、今夜やります(笑)」
白ワイン基本の品種:リースリング
店長「さて、基本の3品種の最後はリースリング(Riesling)という品種です。フランスのアルザス地方、オーストラリアの冷涼な地域、アメリカのニューヨーク州など世界中で栽培されていますが、やはり本場はドイツです」
ヒマ「ドイツといえばリースリング。私も白で1、2を争うほど好きな品種です」
店長「果肉の白いフルーツや梅などの果実のニュアンスに引き締まった酸のバランスが魅力で、ほんのわずかに石油っぽい香りがするのが特徴です」
ヒマ「ちょいマニアックにいうと“ペトロール香”ってやつですね」
店長「リースリングは、甘さによってタイプが大きく分かれるのが特徴なんです。細かい解説は省略して、今日は『辛口』『甘口』『ちょっと甘口』の3パターンを紹介させてください」
ヒマ「おいしいですよねえ、甘めのリースリング。大好物です」
店長「そう、最高においしいんです。ただ一方で、ドイツワインは日本で最初に広まったのが甘口なんです。だからドイツ=甘口と考えて敬遠する方が根強くいるのも事実。このあたり、ちょっと飲みながら解説しましょうか」
ヒマ「賛成です!(笑)」
辛口のリースリングは豚肉料理と好相性
店長「ではまずは辛口から。ヴァイングート・トゥーレのリースリング トロッケン2021です。これは3000円以下で買えるリースリングとしては最強だと思っている1本。
ヒマ「『トロッケン』っていうのが辛口っていう意味ですね。そしてうーん、これは3000円以下っていうのが信じられない味。甘くないのに果実の厚みは感じられて、突き抜けるような酸味とすごく高いところでバランスをとっています」
店長「おいしいから実家の母に贈ったんです。すると翌日『友だちに配るから6本売って欲しい』と連絡がありました(笑)」
ヒマ「辛口リースリングの良さがよくわかる1本ですね」
店長「合わせたいのはソーセージや豚肉の煮込みなんか最高」
ヒマ「辛口リースリングは甲殻類に合うっていう話もあるので、年末にカニとか食べるときはリースリングのことを思い出すといいかもしれませんね」
ちょっと甘口リースリングと燻製肉を合わせてみる
店長「では続いて、『ちょっと甘口』を試してください」
ヒマ「『ハルプトロッケン』とか『ファインヘルプ』なんて言われるやつですね」
店長「飲んでもらうのはファルケンシュタインの『ヘレンベルク リースリング シュペトレーゼ ファインヘルプ』」
ヒマ「これはめちゃくちゃおいしいですね。甘さはほのかに感じる程度で、これなら食事も邪魔しない。ハチミツレモン的味わいで、100人いたら99人が好きって言いそうです」
店長「アルコール度数が9%と控えめなので、アルコールが強くない方にもオススメ。普段ワインを飲まない方には、本当はこういうちょっと甘口のワインをオススメしたいんです」
ヒマ「問答無用でおいしいですもんね」
店長「合わせるならば、オススメは燻製したお肉。最近は国内でも鹿肉などジビエ系のお肉の燻製が多くありますから、そういうのをお取り寄せして合わせてみると楽しいと思います」
店長「さらに問答無用なのが、甘口(極甘口)なんですよ。このドクター・ローゼン『リースリング ベーレンアウスレーゼ2018』を飲んでみてください。これは衝撃的にうまい。トロピカルフルーツのニュアンスがあり、ほぼマンゴーと言っていいニュアンスがあります」
ヒマ「こっ、これはまさしくマンゴー! ワインを飲んでマンゴーを感じたのは初めてです(笑)。これはすごい!」
店長「これ187mlでの販売なんですよ。なので、寒い日に食前酒代わりに少し飲んで体を温めたり、逆に食事の終わりにデザート代わりにちびちび飲んだりしてほしいワイン。私の場合だと冷蔵庫の前を通るたびにちびちび飲んで、あっという間に空にしてしまいますが……」
ヒマ「甘口ワインはスイーツとの相性も見逃せないですよね。バニラアイスとかは100%合うし、プリンとかも合いそう。ともあれ、辛口、ちょっと甘口、甘口と、見事な“リースリング三段活用”でした」
店長「ワイン=辛口ってわけではありませんからね。ぜひドイツのリースリング、好きそうな甘さのものを試してもらいたいです」
白ワイン、ちょっとマニアックな3品種
ヒマ「スッキリとしたソーヴィニヨン・ブラン、コクのあるシャルドネ、そして辛口、甘口、ちょっと甘口と甘さを選べるリースリング。この3品種を知っておくだけでも白ワイン選びがずっとカンタンになりそうですね。これらならスーパーの棚にはほぼ確実にあるし、なんならコンビニでも置いてある可能性が高いですから」
店長「こってりしたクリームシチューにキンキンに冷やしたソーヴィニヨン・ブランを合わせたり、反対にスモークサーモンのマリネに樽の効いたシャルドネを合わせるのはもったいない。品種に関する知識をちょっと持っているだけで、白ワインと料理をもっと楽しめると思います!」
店長「ちょっとだけマニアックな話もしていいですか? ほかにも、知っておくと料理との組み合わせがもっと楽しめるワインがあるんです」
ヒマ「もちろんです。たとえばどんなものでしょう?」
エスニックに合わせたい、ゲヴュルツトラミネール
店長「まずは『ゲヴュルツトラミネール(Gewürztraminer)』です。フランスのアルザス地方など、主に冷涼な産地に植えられている品種ですが、バラやライチの香りがするんです」
ヒマ「出ましたね。私も初心者の方にはたいていこの品種を勧めます。なぜなら私も初心者のころ大好きだったから……! 今でも大好きですが……!」
店長「ウチのお店でいうと、このドメーヌ・トラぺ・ペール・エ・フィスの『ゲヴュルツトラミネール べブレンヘイム』がオススメ。『娘がハタチになったので、一緒に楽しめるワインを探している』というお客様にはこれ一択です(笑)」
ヒマ「これは4750円する高級ワインですが、ゲヴュルツトラミネールは安いものでもおいしいですよ!」
店長「料理でいえば、クミンを使ったスパイシーなものだったり、エスニック系と相性がいいのでぜひ試してもらいたいですね」
酸が魅力! 和食に合わせたい、アリゴテ
店長「続いてはフランス・ブルゴーニュ地方が有名な『アリゴテ(Aligote)』。酸っぱいのが特徴の品種で、これが和食によく合うんです。なので、今日は和食の献立だけどワインなにかないかなーっていうときはアリゴテは勧められます。このフィリップ・ブズロー ブルゴーニュ・アリゴテも酸がシャープでおいしいですよ」
ヒマ「最近は温暖化で果実味が乗って、再評価の機運がありますしね」
店長「余談ですが、このアリゴテはもともと酸っぱくて二級品種みたいに思われていたみたいなんです。そこで、ブルゴーニュの中心地・ディジョン市の市長が同じく名産品であるカシスリキュールと組み合わせて、『キール』っていうカクテルを生み出したという逸話もあります」
ヒマ「いいなあ、キール。カシスの小さいボトル買ってきて、食前酒にちょっと飲むなんてシャレてる……! シャンパンで割った『キール・ロワイヤル』もいいですよね。余談の余談だけど」
店長「ではマニアック系最後です。イタリア品種からひとつ、『グレコ(greco)』を選んでみました。
ヒマ「出た、イタリア品種! イタリアには土着品種がたくさんあって、覚えるのめちゃくちゃ大変なんですよ。読者のみなさん、この品種は本当にマニアックです(笑)」
店長「イタリアワイン好き的にはポピュラーなんですけどね……。グレコはナポリがあるカンパーニャ州を代表する品種のひとつ。ナポリといえばやっぱりピザですが、グレコはやっぱりピザや魚介のマリネ、カプレーゼなどによく合います。宅配でマルゲリータピザを頼んだときこのファットリア・パガーノの『グレーコ・ディ・トゥーフォ』があると重宝します。やっぱり同じ土地の料理とワインは合いますからね」
ヒマ「イタリア料理店などで料理とワインの産地を合わせてオーダーしたりできたらカッコいいですね!」
店長「はい。イタリア品種を覚えるのは大変ですが、その土地の料理とワインを合わせると合いやすいのは覚えておいて損がありません」
白ワインを楽しもう!
ヒマ「基本からややマニアックな品種まで、白ワインについて教えてもらいましたが、改めて考えるとこの“基本”だけでも十分楽しめちゃいますね」
店長「そうですね。これはいつも言うことですが、その日の献立や、レストランで頼むメニューに合わせて品種を選べると、食事をもっと楽しめると思います。そして、基本の3品種はたいていのワイン売り場やレストランにあるはずです」
ヒマ「赤ワインが苦手っていう人も意外と多いですからね。肉料理=赤ワインと決めつけず、白でも合うワインを探したりするの、楽しいですよね」
店長「イタリアにもまだまだおいしい品種がありますし、ほかにもポルトガルの品種に日本の品種にとおいしい白ワインはたくさんあります。ぜひ興味を持ったらいろいろ試してもらいたいですね!」
Photos & Text: Hima_Wine
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