自分らしい新時代の働き方 vol.2 ひらりさが複業スタイルを選ぶ理由 | Numero TOKYO
Culture / Feature

自分らしい新時代の働き方 vol.2 ひらりさ

仕事に没頭するもよし、よりプライベートを充実させるもよし。さまざまな選択肢が見えてきたポストコロナの今だからこそ、働き方の理想を追い求めたい。まずは新しい働き方を実践&研究中の5人から学んでみよう。自分らしい働き方にもきっと近づけるはず。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年10月号掲載)

ひらりさが複業スタイルを選ぶ理由

オタク文化やフェミニズムなど女性に関するエッセイを執筆するひらりさは会社員としても働く“複業”スタイルを選んだ。好きなことを大切に働く方法と現代に働く女性たちが直面する問題について話を聞いた。

──ひらりささんは会社員をしながら、ご自身の執筆活動やオタク女子ユニット「劇団雌猫」のメンバーとして本も出版されています。フリーランスでなく"複業"スタイルで働く理由は?

「元々会社員としてウェブ編集者をしていたのですが、たくさんの締め切りをこなして生活費を稼ぐ仕事スタイルは私に合っていないと気づきました。締め切りに追われて疲労して、好きだからやっていることが好きでなくなるのがいやで、好きなこととお金になることを分けようと決めました」

──会社ではどんな仕事を?

「動画関連のエンターテインメント企業で働いています。会社って、フリーランスで一人でやっているよりも、関わる人の多様性があるので、インプット量が多くて良いなと思います。感覚がチューニングできて、それが執筆活動にも役立っています」

──両立させるにあたって、気持ちの切り替えが大変ではないですか。

「コロナ禍のおかげでテレワークもできるとはいえ、会社員として月から金までフルタイムで働いて終業後に執筆活動をするのは正直大変です。心がけているのは、飲み会に行かないこと(笑)。職場の人との楽しい時間も名残惜しいのですが、勤務後に自由に使える時間を確保するのが最優先。みんなが飲み屋に流れて行っても、歯を食いしばって退勤しています(笑)」

【Motivational items〜仕事へ向かう前のリフレッシュに!〜】「香水をつけると『今日も頑張ろう!』とスイッチが入ります。これは前職の職場の先輩からいただいたマルジェラの香水で、スッキリした香りがお気に入り。私も後輩にさらっと香水をプレゼントできる人になりたいな」
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──複業スタイルが合っている人はどんな人だと思いますか。

「何か自分のスキルで身を立てたいというとき、いきなりフリーランスになるよりは絶対複業スタイルがいいと思います。ただ、労働量が多くなりがちなのはたしか。週3日勤務の正社員として働きながらライターをしている知人がいて、本当はそれくらいのバランスが理想ですね。とはいえ執筆業は『嫌になったらいつでもやめていい』と思っています。あくまで、自分の好きなものや興味関心を世の中に伝えたい気持ちがあって、結果的にお金を得ているイメージなんです。これから『好き』を仕事にしたいという方も、まずは気軽に好きなものの感想をインターネットで書いておくことをおすすめします。発注者に発見される機会が増えます」

──ひらりささんの著書『それでも女をやっていく』では女性の生きづらさについて書かれています。現代において女性が仕事をしていく上で大変だと思う点を教えてください。

「女性はどうせ辞めるでしょって思っている会社が日本にはまだまだ多いですよね。それで、能力に見合った業務経験や地位を得られないことがかなりあるな、と感じます。産休や育休の待遇も問題が山積みですが、出産をするつもりがないのに、勝手に配慮されて負荷や責任の大きい仕事を男性に回す現状もよく聞きます。女性活躍、と言っているけれど、営業は男ばかりで、女性はバックオフィスばかりとか。人一倍アピールしないと、男性同様に期待してもらえないのって、大きなハンデ。また、これは男女限らずですが、『好き』を仕事にしようとすると、給料が安かったりハラスメント環境だったりしがちだ、とも自分の経験から感じています。フリーランスの労働環境が不安定なのも、その一環だなと。やりたいことがしたいなら他の条件は我慢して当然という空気感がありますよね。自分が受けている待遇が理不尽じゃないかなど、話し合える場が増えるといいですよね」

──そういった問題も含め、新しい働き方を模索している人が多いと思います。ひらりささんが働く上で心がけていることは?

「少しでも関心が持てることがあったら、グダグダ悩むより、まずはやってみるようにしています。編集者時代、担当していた作家さんが『やりたいことをずっとやっていると、やりたくないことをどんどんやらなくなっていく』と言っていて、確かにそのとおりだなと。何をやるかよりも何をやらないかを考えるのも重要だと思いますね。私は書き続けることはやっていきたいと思っていますが、気持ちが乗っていないときは無理にやらずに会社で働いてインプットの時期に充てるようにしています。そういった波を受け入れるほうが、両方とも楽しく向き合えると思うんですよね」

Photos:Kouki Hayashi Interview & Text & Edit:Saki Shibata

Profile

ひらりさHirarisa 文筆家。1989年生まれ、東京都出身。オタク文化、BL、美意識など、女性についてのさまざまな文章を執筆する。2021〜22年にイギリスの大学院に留学して修士号を取って帰国。単著に『それでも女をやっていく』(ワニブックス)、『沼で溺れてみたけれど』(講談社)。オタク女子ユニット「劇団雌猫」のメンバーとして活動中で、編著書に『浪費図鑑 ―悪友たちのないしょ話―』(小学館)、『だから私はメイクする』(柏書房)など。

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