自分らしい新時代の働き方 vol.1 長谷川ミラ&佐藤マクニッシュ怜子 | Numero TOKYO
Culture / Feature

自分らしい新時代の働き方 vol.1 長谷川ミラ&佐藤マクニッシュ怜子

仕事に没頭するもよし、よりプライベートを充実させるもよし。さまざまな選択肢が見えてきたポストコロナの今だからこそ、働き方の理想を追い求めたい。まずは新しい働き方を実践&研究中の5人から学んでみよう。自分らしい働き方にもきっと近づけるはず。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年10月号掲載)

 

長谷川ミラ&佐藤マクニッシュ怜子、20代「ボス」はこう働く

Z世代のオピニオンリーダーで二社の代表を務める長谷川ミラと、ナイトウェアブランドから始めた「アマテラス」の領域を次々と拡大させている佐藤マクニッシュ怜子。若くして「ボス」となった二人の働き方とは。

ミーティングは極力少なく、スタッフとの食事は大切に

──二人の仕事内容を教えてください。

長谷川ミラ(以下、長谷川)「私はタレント・モデル業のほかに二つの会社を経営しています。一つは友人と共同運営しているカフェ。もう一つはSDGsを軸としたデジタルマーケティングの会社です。そこでは私の直属のアシスタント以外のクリエイターと業務提携していて、プロジェクトごとにチームを編成。主な仕事内容は動画撮影や編集、SNS運用、マーケティングのコンサルなど。活動拠点は東京で、基本的にリモートで仕事をしています」

佐藤マクニッシュ怜子(以下、佐藤)「私はライフスタイルブランド「アマテラス」の経営をしています。海外展開を視野に入れて、一時期はマレーシアに移住していましたが、昨年ベースを日本に戻しました。そして、新たに飲食や空間デザインの事業もスタートしました」

(ミラ/左)ジャケット¥261,800 中に着たTシャツ¥39,600 パンツ¥167,200/すべてStella McCartney(ステラ マッカートニー カスタマーサービス 03-4579-6139) ピアス¥49,500 ネックレス¥79,000 リング(右手)¥661,000/すべてTom Wood(トムウッド プロジェクト www.tomwoodproject.com) (怜子/右)ジャケット¥16,500 パンツ¥11,000/ともにAmateras(アマテラス info@amateras-japan.com) 中に着たニット 本人私物
(ミラ/左)ジャケット¥261,800 中に着たTシャツ¥39,600 パンツ¥167,200/すべてStella McCartney(ステラ マッカートニー カスタマーサービス 03-4579-6139) ピアス¥49,500 ネックレス¥79,000 リング(右手)¥661,000/すべてTom Wood(トムウッド プロジェクト www.tomwoodproject.com) (怜子/右)ジャケット¥16,500 パンツ¥11,000/ともにAmateras(アマテラス info@amateras-japan.com) 中に着たニット 本人私物

──二人が気持ちよく働くために大事にしているルールはありますか。

長谷川「無駄な打ち合わせをしないこと。せっかちなので(笑)、不必要なものに時間を奪われたくないんです」

佐藤「私も社内ミーティングは「内容を90%まで詰めてから100%を決めるもの」と伝えています。90%にするために意見が欲しいときは事前に個別で話を聞くようにしているかな」

長谷川「これは私たちの仕事がある程度軌道に乗っていて頻繁にミーティングをしなくてもいいということもあると思う。あと、仕事仲間やアシスタントと密なコミュニケーションが取れる関係性というのも大きいかも」

──社内のコミュニケーションを取る上で意識することはありますか。

佐藤「ミーティングを最小限にしているからこそ、定期的にスタッフと食事に行くようにしています」

長谷川「私もコロナが明けて外食しやすくなったので、アシスタントとよく食事に行くようになりました。若い人たちは思っているよりもリアルな場でのコミュニケーションを求めていると感じます。また、今は物価が上昇し、食費を切り詰めているスタッフもいるので、福利厚生の一つとして食費の一部を経費精算できるようにしています。きちんと食事を取らないと、集中力が落ちて生産性が下がるし、疲れやすい。私自身、親から食を大事にしなさいと言われて育ったので、スタッフもきちんとした食事を取って、健康でいてほしい」

佐藤「私は最近アパレル以外の仕事が増え、年上のスタッフが増えました。私よりも社会人経験も業務経験も豊富なので、接するときは常にリスペクトの気持ちを忘れないようにしています。でも、それは年下のスタッフに対しても同じ。“社長と部下”という上下関係ではなく、それぞれができることとできないことを補い合う関係だと思って接しています」

長谷川「私もそう。制作物については私がすべて指示を出すというよりも、若いスタッフのほうが得意なこともあるので、そこは彼/彼女たちが中心になって作ってもらっています。私の役目はそれぞれの長所や感性を生かして、活躍できる場をつくっていくこと。私自身、若いうちからたくさんのチャンスを与えてもらったので、下の代にも同じようにいろんな機会を与えられたらいいなと思う」

──二人は20代前半で起業されていますが、大変だったことはありますか?逆に20代だからこその強みはどんなものがあると思いますか?

佐藤「起業したばかりの頃は実績も経験もなかったので、ビジネスの話をしても真剣に聞いてくれない人がいたことがつらかったですね。「私が30代の男性だったらこんな思いをしないんじゃないか」と感じたことも。でも、そこから精神的に鍛えられました。実は昨年、仕事で人に騙されて精神的にも金銭的にも大きな苦痛を味わったのですが「いつまでもくよくよしてても仕方ない」とすぐに気持ちを切り替えました。そのおかげで新規事業を立ち上げたりと大きなチャンスに恵まれたと思っています」

長谷川「若くして起業すると誰かに教わる機会が少ないとは思います。それがネガティブポイントかな。私は10代から芸能の仕事をさせてもらってプロデューサーやマネージャーなど大人に指導いただく機会があったから、一般常識を学ぶことができてありがたかったです。逆に言えば、若いからこそ周りの人に「教えてください」と素直に言いやすいかも」

【Motivational items〜ジャケットで仕事モードに〜】「アマテラスのオリエンタルサテンジャケットは大事な会食やイベントのときに羽織るお気に入りアイテム。着心地がいいのに、体の動きをじゃませず、でもきちんと見せてくれる。着ていると必ず『それどこの?』と聞かれます」(佐藤)
【Motivational items〜ジャケットで仕事モードに〜】「アマテラスのオリエンタルサテンジャケットは大事な会食やイベントのときに羽織るお気に入りアイテム。着心地がいいのに、体の動きをじゃませず、でもきちんと見せてくれる。着ていると必ず『それどこの?』と聞かれます」(佐藤)

【Motivational items〜香りで切り替え〜】ニールズヤードのサロンでブレンドしてもらったというオリジナルアロマ。「私はオンからオフに切り替えるのが苦手なので、お気に入りの香りを嗅いでスイッチオフに。しっかり心も体も休めることで、ここぞというときのスイッチが入りやすい」(長谷川)
【Motivational items〜香りで切り替え〜】ニールズヤードのサロンでブレンドしてもらったというオリジナルアロマ。「私はオンからオフに切り替えるのが苦手なので、お気に入りの香りを嗅いでスイッチオフに。しっかり心も体も休めることで、ここぞというときのスイッチが入りやすい」(長谷川)

多様な働き方を認め合い、選択肢が広がる生き方を

──二人が考える理想的な働き方やスタッフとの関係は?

佐藤「スタッフと何でも言い合える関係を築くこと。私自身、無理なときは無理と言うし、できないことはできないと言おうと伝えています。私の会社は勤続年数が長い順に給与が増えていくというシステムではないので、仕事を通じていろんなことができるようになってほしいし、世界で通用する人になってほしい。本人が興味を持っていたら経験は浅くても仕事を渡すようにしています」

長谷川「人を信頼して任せられるのが怜子のすごいところ。私はなかなか人を、育てる余裕がない(笑)。個人的には時間や場所に縛られない働き方が理想で、一時期オフィスを借りていたこともありましたが、今は固定の場所は設けずに働いています」

──これからの働き方を考える上で「いらないもの」はありますか?

佐藤「私も広いオフィスは必要ないかな。社員全員が同じ時間、同じ場所に来て働くよりも、それぞれがフレキシブルに仕事をしたほうがチャンスをつかみやすいと思う。毎日、定時に来て与えられた仕事をこなすより、効率的に仕事を終わらせられれば、自由に使える時間が増えますよね」

長谷川「私の会社も決まった勤務時間は設けてないな。自分のタスクを期限内にこなしさえすれば、時間で縛る必要はないと思う」

佐藤「効率よく働く能力は必要だよね。と言いつつ、私はついスケジュールを詰めがちなんですけど(笑)」

──仕事とプライベートについても教えてください。また、将来の妊娠や出産、子育てなどライフイベントとのバランスはどう考えていますか。 

長谷川「私は子どもを産むかもしれないし、産まないかもしれない。どうなるかわからないので、将来産みたくなったときのために卵子凍結をしたり、パートナーに頼らずに一人でも育てられるように貯蓄をしています。将来の選択肢をたくさん残しておくことが、今できることかなと」

佐藤「私はプライベートと仕事は完全には切り分けていなくて、どちらも緩やかにつながっています。「いつ休んでるの?」と心配されることもあるけど(笑)、これが自分に合っていると思う。いつか子どもを持てたらいいけれど、今は仕事に集中していたい時期。今もし妊娠したり、想定外のことが起きても「大丈夫。なんとかなる!」というマインドで」

──育休や産休など社内の体制づくりについてはどうでしょうか。

長谷川「私の場合、スタッフとは業務提携で、雇用しているわけではないので、産休・育休中の給与保証はありません。ただ、大手企業のように十分な制度があったとしても実際には使いづらいのが現状だと思います。一緒に働く人が「いま育休に入られると困るんだよね」じゃなくて、どうやって意識を変えていけるか。これは一人一人が考えるべき課題。私は仕事と同じくらい家族と過ごす時間を大事にしたいけれど、今はどちらかを犠牲にしないと無理なんじゃないかと。それはうまく両立しているロールモデルがあまりいないから。いろんな働き方が増え、どちらも諦めなくていい生き方を歩めたらいいなと思う」

佐藤「私の周りにはパートナーも子どももいて、さらにいくつもの会社を手がけているパワフルな先輩がいます。彼女を見ているとやる気が出てくる。「自分はまだまだ」って思っていたいし、そう思わせてくれる人と接していることが大事ですね。つくづく、周りの環境というか会う人で人生は変わるなって思う」

長谷川「私と怜子も20代になって出会って、お互い切磋琢磨しながら成長してきた仲間だと思っている。これから仕事を通じてどんな人に出会えるのかなと思うと楽しみですね」

Photos:Anna Miyoshi Styling:Kana Tanaka(Mila) Hair & Makeup:Miri Sawaki(Mila), Kazunori Miyasaka(Reiko) Interview & Text:Mariko Uramoto Edit:Mariko Kimbara

Profile

長谷川ミラMila Hasegawa 1997年、東京都生まれ。モデル、ラジオ番組のナビゲーター、テレビ番組などで活躍。デジタルマーケティングなどを手がけるクリエイティブクルー「ジャム」のCEO。コミュニティカフェ「アム カフェ」共同代表。専門家と一般の人をつなぐオピニオンリーダーとしての発信が評価され、2022年、雑誌『フォーブス・ジャパン』の「世界を変える30歳未満の30人」に選出された。
佐藤マクニッシュ怜子REIKO MCNISH SATO 1995年、東京都生まれのカナダ育ち。実業家。大学在学中にナイトウェアブランドとして始めた「アマテラス」が今年5周年を迎えた。ブランドのコンセプトである「和」×「洋」を核に、デイリーウェアやドレス、オケージョンウェアの販売、5つ星ホテルとのコラボやマレーシアでのルーフトップバー運営、海外進出など次々と領域を拡大させ、成長に導いている。

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