ハワイの離島に暮らす画家・山崎美弥子が描く「1000年後の未来の風景」
ハワイ在住の画家、山崎美弥子。過去2万人余りを動員したという東京・青山のスパイラルガーデンでの展覧会を今年も開催予定だ。不思議な癒やしのパワーを持つ、海と空の絵に身も心も委ねて。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年10月号掲載)
山崎美弥子インタビュー
全ての“源の世界”を描き続ける
ハワイの離島で、愛する家族と共に暮らす画家の山崎美弥子。豊かな自然とハワイの伝統やアロハ・スピリットに囲まれ生み出される作品には日本にもファンが多い。今年9月に青山・スパイラルで行われる個展は、過去最大級の規模となり、100点以上の作品が展示される。テーマは「Dawn(夜明け)」。
「これまでと同じく“1000年後の未来の風景”を描いていますが、今回は“kind of blue”、夜が明ける前の青のシリーズです。これは自然界の夜明けであると同時に、人々の内面の夜明けであり、この世界の夜が明ける体験をテーマにしています」
彼女の作品には「1000年後の未来の風景」という一貫したテーマがある。これは10歳の頃に体験したある出来事がきっかけとなっている。
「何かが見えたり聞こえたりという現象ではないので説明が難しいのですが、例えるなら、モノクロの世界に生まれて、それが当たり前のように暮らしていたら、手の届くところに窓があることに気がついて。開けてみたら、向こう側に素晴らしい色彩の世界があったという体験だったんです。10歳の私は感激して2時間ほど泣き続けました。幼いながらにこれは哲学者や科学者、芸術家、全ての人が探し求める世界、全ての現象の源なんだという直感がありましたが、それが何だったのか、誰にも話せず一人で考え続けました」
小さな頃から絵を描くことが好きだった山崎は、美術大学へと進学し、イラストレーターとして活躍した後、東京を拠点にアーティストとして作品を発表する。そして2003年にパートナーと出会い、船上生活を経てハワイの離島へ移住することに。
「この島に降り立ったとき、あの体験で感じた、体温のような懐かしいぬくもりを感じたんです。そして夫に出会い、船の上で二人の暮らしを始めました。海と空、地平線を眺める生活の中で、子どもを授かり、私たちは陸に上がり、この島で生活をしてもうすぐ20年になります。私が描いているのは、ハワイの空や海の風景ですが、同時にあのとき、“窓”から見えた“風景”でもあるんです」
“1000年後の未来の風景”を探求していく
絵を描き、あの体験が何だったのかを探求し続ける中で、彼女は一つの言葉に出合う。それが「1000年後の未来の風景」だ。
「あるとき知人から『あなたは1000年後の未来、人々の理想のさらに理想の世界から現代にやって来た人。その風景を絵画として皆さんに見せるのが使命なのでは』と言われ、ハッとしました。私が描いているのはそれかもしれないと。それ以来、“1000年後の未来の風景”という言葉で表現しています。私の絵は誰かに理解してほしくて描き始めたわけではないけれど、この絵に何かを感じてくださった方がたくさんいらっしゃったことは驚きでもあり、とてもうれしいことでもありました」
アロハの精神に包まれた穏やかな暮らしの中で、山崎は、絵を描き続けている。
「私の絵は“答え”ではなく、“窓”に気づくための、きっかけなのかもしれません。私は、これからもずっと探求を続けていきます」
山崎美弥子展 YAMAZAKI MIYAKO with /360°
“DAWN -kind of blue”
会期/9月15日(金)〜10月1日(日) ※会期中無休
会場/スパイラルガーデン
住所/東京都港区南青山5-6-23 スパイラル1F
時間/11:00〜20:00
料金/無料
URL/www.spiral.co.jp/topics/spiral-garden/dawn-kind-of-blue
主催:山崎美弥子展”DAWN -kind of blue”実行委員会 企画協⼒:スパイラル 協賛:株式会社ワコール
Edit:Mariko Kimbara Interview & Text:Miho Matsuda
Profile
Instagram/@miyakoyamazaki