「横尾忠則 寒山百得」展が東京国立博物館 表慶館で開催
日本アート界の超巨星、横尾忠則。80代後半にして画家活動最大の作品群が開花した。コロナ禍で一人、世俗を離れ描くなかで、古代中国の伝説の風狂人「寒山拾得(かんざんじっとく)」と感応。過去にも増して自由闊達、「横尾忠則 寒山百得(かんざんひゃくとく)」展に見える画業“最深”の境地とは。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年10月号掲載)
昔々、唐の国の天台山に寒山と拾得という変人がいた。寒山は洞窟住まいの破れ衣。拾得は寺のかまど番。この二人、毎日意味不明なことを言って笑い騒いで手に負えない。だが師の高僧は見抜いていた。あれこそ禅の目指すところ、世俗を超えた悟りの境地“風狂”だと——。
それから千数百年後の日本。新型コロナウイルス感染症の混乱下、横尾忠則(1936年生まれ)はアトリエで一人、自身の絵と向き合っていた。俗世を離れ、時空を超越し、宇宙を縦横無尽に駆け巡る。これだ。我が境地ここに見つけたり。かくて横尾は「寒山拾得」と深く感応。以来1年間、二人の姿や背景を変幻自在にメタモルフォーゼさせ、脳内に湧き出る形象をひたすらに描き出してきた。いつしかその作品群は、横尾の画家活動最大のシリーズへと成長。御年80代後半にしてさらに自由闊達、無窮なる絵画地平が出現したのである。
この新作群、横尾版「寒山拾得」シリーズ102点を初公開する本展。会場の東京国立博物館 表慶館と隣接する本館では、古来より描かれてきた「寒山拾得図」を一堂に集めた特集展示も開催される。心静かにして観自在(※)。横尾忠則の最深宇宙が、私たちを引き寄せる。
※寒山の詩の一節「棲遅観自在(心静かにしてあらゆる物事を自在に観ずる)」より。
「横尾忠則 寒山百得」展
会期/9月12日(火)〜12月3日(日)
会場/東京国立博物館 表慶館
住所/東京都台東区上野公園13-9
Tel/050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/kanzanhyakutoku/
※最新情報はサイトを参照のこと。
Edit & Text:Keita Fukasawa