香りは語る。想像力を刺激し、記憶を呼び覚ますフレグランス15選
香りは私たちの想像力を刺激し、イメージや感覚、記憶を呼び覚ます。香りのストーリーへと没入させてくれる自分だけの1本をみつけて。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年6月号掲載)
「この香り、懐かしい」「旅した街の匂いがする」──人生で忘れられない瞬間や、旅先での思い出……。ときに嗅覚は私たちの記憶を無意識的に呼び覚ます。実はこれは脳の構造ゆえ。視覚や味覚が“理性的な脳”といわれる大脳新皮質に達するのに対して、嗅覚は“原子的な脳”といわれる大脳辺縁系に伝わる。香りを嗅いだ瞬間、自分の意志とは関係なく、過去の記憶が呼び起こされたり、理屈抜きで“好き”“嫌い”を感じるのは嗅覚が本能とつながっているから。本能を信じて、自分を心地いい世界へと連れて行ってくれる1本を選びたい。
1|Kilian
クーリング効果で肌がリフレッシュ
永遠の愛を象徴するオレンジブロッサムに、天然香料のハニーやバニラが恋する女性の柔らかな空気感を演出。さらにアンバー系のラブダナムが、胸がキュンとする奥行きを添えて。
2|Valentino Beauty
夕暮れに染まるローマの高揚感をフルーティに表現
オレンジやローズが輝くフルーティフローラルの香調。夕日に染まり表情を変える街並みのように、徐々にジャスミンの妖艶な余韻へと変化。
3|Sisley
花やハーブの葉が奏でるビターなハーモニー
ミントやシソ、ゼラニウムの葉をこすったときに弾けるような強く爽やかなアロマで幕開け。次第にシダーやパチュリが存在感を増す、洗練のグリーンノートは男性にも◎。一日中フレッシュな印象が持続する。
4|Jo Malone London
野性味あふれる花々の強くボタニカルな香り
スコットランドの大自然の景色を香りに。
5|Ella K
旅したベトナム、朝露に濡れたカメリアを香りに
女性調香師ならではの繊細な感覚で、ベトナムの旅で見た緋色の花を表現。ドラゴンフルーツやジンジャー、マンダリンを、天然香料とエコフレンドリーな採取法であるヘッドスペース法で融合。
6|Aésop
現実と空想を行き来するミステリアスな遊び
肌とのケミストリーを楽しむ神秘的なスパイシーフローラル。オレンジなどの花々にクローブやサフランの刺激が思いがけない調和を生む。調香師バーナベ・フィリオンによるポエティックな香りの戯れをぜひ。
7|Tom Ford
可愛らしいチェリーの鮮烈な誘惑に夢中!
可愛いのにどこか蠱惑的。そんなチェリーの個性を香りにした遊び心あふれる1本。弾ける果実感から、ジャスミンやムスクがセクシーな存在感を増すめくるめく香り。
8|Parfums Givenchy
ヘプバーンに捧げた門外不出の香りをカジュアルに再解釈
名香「ランテルディ」の香りの骨格を生かしつつ、ジンジャーやクミンなどのスパイスを加えてより情熱的に。現代的なモダンさが光る。
9|Maison Margiela
完熟のぶどうとムスクが夕暮れ時に出合ったら
みずみずしいぶどうにエレガントな色気を含むローズが加わり、ムスクが官能的なひと時を締めくくる。ワインをたしなむように、甘美なイマジネーションを楽しみたい香り。
10|Ferragamo
前向きに生きたい女性に贈る大人の洗練フローラル
ベルガモットや洋梨のアップリフティングな幕開け。時とともに愛おしさを増すように、温かなカシミアウッドやピンクシュガーがかすかにパウダリーな余韻を残し、やがて自分の香りになる。
11|Tartine et Chocolat
懐かしくて、新しい。元祖“愛され”香水をふたたび
石けんのような清潔感あふれる香りで長年愛されてきた香りが、自然由来97%に進化してリニューアル。気分転換や就寝前の香りとしても今注目!
12|Maison Crivelli
「香りは、体験そのもの」五感が目覚めるクリエイション
ティボー・クリヴェリが実体験で得た、驚きや感情も含めて香りで表現する注目ブランドが上陸。宝石市場でハイビスカスティーを味わった体験を、天然香料でまろやかに調香。
13|Armani Beauty
神秘の香木、サンダルウッドの甘い罠
中国の宮城に漂う静謐さと神秘性をイメージし、サンダルウッドを主役にモダンな香りに。鼻腔をくすぐるカルダモンのスパイシーな幕開けに粋を感じるエキゾティックなムスク。
14|Dusita
タイの女性調香師によるポエティックな創作
調香師のピサラ・ウマヴィジャニが、著名な詩人だった父が遺した詩を香りへと昇華。“魂の友”を意味するアナムカラは、フリージアやチュベローズの花々を、大地を感じるベチバーやシダーが結わえた力強い香り。
15|Diptyque
創造力への挑戦──“紙”を香りで表現すると?
“紙”にオマージュを捧げるクリエイティブな香りは、紙の質感や香りをライススチームが表現。さらにゴマやシリアルが紙に染み込むインクを連想させ、現実と空想の境界線へと私たちを誘う。
Photos:Kouki Hayashi Edit & Text:Naho Sasaki