【連載】「ニュースから知る、世界の仕組み」 vol.43 大谷翔平選手の年間収入 |Numero TOKYO
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【連載】「ニュースから知る、世界の仕組み」 vol.43 大谷翔平選手の年間収入

Sumally Founder & CEOの山本憲資による連載「ニュースから知る、世界の仕組み」。アートや音楽、食への造詣が深い彼ならではの視点で、ニュースの裏側を解説します。

vol.43 ダントツ1位! 大谷翔平選手の年俸とスポンサー契約料をあわせた年間収入

Photo: Aflo
Photo: Aflo

前回のWBCについてのコラムは準決勝の試合直後に書いたものでしたが、侍ジャパン、見事優勝を勝ち取ってくれました。未だに感動の余韻が残っていますが、投打に大活躍だった大谷翔平の今シーズンのエンゼルスからの年俸とスポンサー契約料をあわせた年間収入がForbesの調査によると87億円と、野球選手の中ではダントツ1位と報じられていました。

大谷翔平の年収がMLB新記録の87億円超え「他にいない影響力」

https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/news/202303280000929.html

エンゼルスからの年俸は3000万ドル(約40億円)とされていて、それでも圧倒的な割安で来季は年俸だけで倍以上になるのではと言われていますが、報道が事実だとすると今年は47億円程度をスポンサー契約で得ている計算になります。

WBCの中継で気づいた人もいるかもしれないですが、大谷翔平のグローブや手袋、スパイクが今季からニューバランスになっていることが実は大きく作用しています。昨年までは、ともに日本メーカーのアシックスが用具を、デサントがウェアのスポンサーでした。

野球カテゴリの中ではあまり存在感を発揮できていなかったニューバランスがこの分野にも切り込んでいこうとしているのだと思いますが、大谷選手とエンドースメント(肖像権使用と商品化権)契約を結び、グローバルのキャラクターに思い切って起用したのです。ニューヨーク・ポスト誌の名物コラムニストのジョン・ヘイマン氏によるとその契約額はこちらも年3000万ドル(約40億円)程度とされていて、この契約が大谷の収入を大きく押し上げていることがわかります。

レブロン・ジェームスのナイキとの契約は年3桁億とも言われておりそこまでの規模には及んでいないものの、全盛期のタイガー・ウッズがナイキと結んでいた契約や、フェデラーのユニクロとの契約と同等、ないしは上回る金額で、ニューバランスの力の入れようがよくわかります。その他にもメンズのビューティ市場にも積極的に進出しようとしているKOSEとのグローバル契約も話題になりましたし、ポルシェのアンバサダーや、HUGO BOSS、SEIKO、バンテリンの興和などもスポンサーとして名を連ねています。

また、ひとつ視点として考えられるのが、スポンサー収入がこれだけの割合になってくると、チームを移籍するとなった際にただ年俸が多いところを選べばいいというわけではなく、(スポンサー収入における一社の割合があまりにも高いと一概にそうとはいえないものの)やはり自分が最も活躍できる舞台かどうか、というポイントが収入を最大化することを目的にしたとしても、大きなパラメーターになってきます。

大谷選手の場合はそもそも収入に関わらずそういう環境を選びそうなイメージもありますが、収入を最大化させることを前提としてもイメージを高め続けるようなアクションが同時に大事になってくる、というのはいいエコシステムだなと、思っていたところにちょうどサウジアラビアのサッカーチームがメッシに年俸4億ユーロの掲示をしたというニュースがありました。

サウジのアル・ヒラル、パリSGメッシに年俸580億円のビッグオファー提示
https://www.nikkansports.com/soccer/world/news/202304050000109.html

上の文脈の話だとすると、中東のチームが高額の年俸を掲示したところで、選手としての年俸は下回っても世界最高峰のヨーロッパリーグでスタートして活躍し続けるほうがスポンサーからの契約金がついてくる、といった内容の「いい話」なのですが、資本主義の底力というのは往々にしてそういった「いい話」を超えてくるもので(おそらく肖像権利用等含めた内容とはいえ)年俸がここまで高騰化すると少々のスポンサーでは太刀打ちできるものではなく、お金を優先するとなるとこのオファーを受けるというのが最適な選択肢になるのでしょう。ただ、だからといってメッシがこの選択を選ぶかというとそれは別問題で「サッカーの環境」をお金以上に優先する可能性が大いにあります。

市場が大きくなるにつれてグローバルで活躍するプレーヤーの価値が天井なしにあがっていくのはどのスポーツでも同じで、バックグラウンドのルールもどんどん変化している様子はそれはそれで興味深いものですね。

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Text:Kensuke Yamamoto Edit:Chiho Inoue

Profile

山本憲資Kensuke Yamamoto 1981年、兵庫県神戸市出身。電通に入社。コンデナスト・ジャパン社に転職しGQ JAPANの編集者として活躍。その後、独立して「サマリー」を設立。スマホ収納サービス「サマリーポケット」が好評。

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