【連載】「ニュースから知る、世界の仕組み」 vol.39 三浦瑠麗の発言から考える、ジャーナリズムにおける倫理観
Sumally Founder & CEOの山本憲資による連載「ニュースから知る、世界の仕組み」。アートや音楽、食への造詣が深い彼ならではの視点で、ニュースの裏側を解説します。
vol.39 三浦瑠麗、夫の投資トラブルから広がる波紋
国際政治学者の三浦瑠麗氏の夫の清志氏が代表を務める会社に家宅捜索が入り、彼女がめざまし8などのコメンテーターを一時降板していることが話題になっています。
夫の経営に関与全否定も過去の「互いの会社の株を半々で持ってる」発言が波紋
https://news.yahoo.co.jp/articles/9d2b5db25d81c385de409d59e1d625d0c94cbc54
彼女のシンクタンク「山猫総合研究所」のオフィスも捜索の入った夫氏が代表を務める「トライベイキャピタル」同じビルの同じフロアにあると報道されていますが(同じスペースを共有しているのではないかなという気も勝手にしつつ、家宅捜索が入ったタイミングで「夫の会社経営には関与しておらず、一切知り得ないこと」とコメントしていました。
しかし彼女の著作に夫婦間で株を半分ずつ持ち合ってるとの記述があり、実務に関わってないとご本人の感覚的に認識しているということには事実のところもあるのではとも思いますが、50%の株を持っている会社に関与していない、というのは実際相当に無理があります。
以前にもコメンテーター、評論家の立場としてテレビ等で太陽光を擁護する発言をしていたことも報じられていますが、発言は控えるべきとまではいかずとも、評論家の倫理観として株主としてでも自分がそこに関わっている立場であることを明示した上で行うべきです。金銭授受を伴うソーシャルの投稿にPR表記が一定義務づけられていることや、雑誌のタイアップ記事にも当然PRのの表記が入ることとも同じですし、スタートアップ業界でも、投資家が専門家の立場として客観的に投資先およびその業界にポジティブな意見を出す際は、その企業が投資先であることを明示することが多いです。
また、出自や信教について、彼女がツイッターで下記のように書いていました。
わたしはこれまで、中国人、在日朝鮮人、創価学会員、はてまた統一協会信者ではないかなど、さまざまなネット上での憶測を寄せられてきました。自由主義者として、自らの信教や人種、民族的出自などについて解答と踏み絵を迫る言説には与しません。ですので聞いても無駄ですのでどうぞご放念ください。
— 三浦瑠麗 Lully MIURA (@lullymiura) July 18, 2022
「自由主義者として、自らの信教や人種、民族的出自などについて解答と踏み絵を迫る言説には与しません」とのことですが、それを踏み絵と認識するかは人それぞれかなと思いつつも、コメントしたくないものに答える義務がないことには、僕も完全に同意です。国籍や信教を理由に非難されたりすることも許されることではないです。
彼女のつぶやきやコメントの中には統一教会を擁護するスタンスのものが多く見受られていて、今回の清志氏の弁護士は信者でもある統一教会の顧問弁護士が務めていて、信者かどうかはともかく、統一教会と何かしらのつながりがあるのかなとは推察されます。
仮に彼女が信者であってもそのこと自体は当然ながら非難されるべきことではなく、個人の自由が保証されるべきです。ただ、特定宗教の信者ないしは関係者が、その立場を明かさずにその宗教についての意見をコメンテーターとして客観的な立場でコメントしていたとしたら、客観性が担保されている前提とは言えず、ジャーナリズムにおける倫理観としてはアウトではないかと感じています。少なくとも立場を明示することが最低限必要でしょうし、(そもそも客観的にコメントできないという)そういった立場を明らかにできない場合はその件に関するコメントを控えるべきでしょう。
僕は特定宗教の信者ではないことを前提で書いていますが、当然政党も同じで、公明党と創価学会の関係は明示されている分、そういう観点からはフェアなものといえるものなのだと思います。自民党も統一協会の関係が実際問題として切れないのであれば、いっそのこともっとつながりをオープンにして、それくらいの覚悟で選挙にも臨んでほしいものですね。
Text:Kensuke Yamamoto Edit:Chiho Inoue