「ニュースから知る、世界の仕組み」 vol.35 サッカーにおけるジャイアント・キリングとは |Numero TOKYO
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【連載】「ニュースから知る、世界の仕組み」 vol.35 サッカーにおけるジャイアント・キリングとは

Sumally Founder & CEOの山本憲資による連載「ニュースから知る、世界の仕組み」。アートや音楽、食への造詣が深い彼ならではの視点で、ニュースの裏側を解説します。

vol.35 サッカーにおけるジャイアント・キリングとは。

Photo: Aflo
Photo: Aflo

11月20日(日)にワールドカップが開幕し、連日連夜、各国が繰り広げる熱戦に魅了されているという人は読者のみなさまにも少なくないことと思います。我らが日本代表は、残念ながら27日(日)のコスタリカ戦には破れてしまったものの、23日(水)のドイツ戦での勝利には列島が大きく湧きました。この試合の勝因として、森保監督のとった後半開始からのシステム変更が、功を奏した言われています。

吉田麻也が語る「前半のうちに修正しなかった理由」
https://news.livedoor.com/article/detail/23253255/

AbemaTVがオンラインで全試合生中継で無料放送しているというのも今回のエポックなトピックのひとつだと思うのですが、Abemaの中継に解説者として出演していた本田圭佑は前半の時点ですでにシステム変更の必要性を提言していました。

ただ、上の記事で主将の吉田麻也選手は(敢えて)前半のうちに修正せずにハーフタイムを経て後半開始からの変更というのがそもそもの作戦で「あまりにもプラン通りに事が進んだ」と試合後にコメントしています。

ドイツ代表は選手も一流ながら、チームを率いる監督のハンジ・フリックもバイエルン時代にはブンデスリーガからチャンピオンズリーグのタイトルまで獲得している超がつくほどの一流の名将ながら、そこが一緒に練習する時間が限られている代表チームの難しいところでハーフタイムを挟めば対応可能だった側面も多分にあるでしょうが、ゲーム中に相手チームの変化に応じたゲームプランにアップデートするというのはこの名将をしても容易なことではななかったようです。

森保監督がどこまでそこを狙っていたのかはやや不明瞭なところはありながら、対戦相手より弱いとされているチームの立場を利用して、このシステムで戦ってくるなら今のままで勝てると相手に思わせたところでガラッと戦術変更を行い相手に対応の時間を与えずに、さらなら効果的な選手起用がストラテジックに炸裂しジャイアントキリングをやりきったのがドイツ戦だったのでしょう。マンガの『ジャイアント・キリング』の中でも、達海監督の采配としてまさに似たようなエピソードがあったことを思い出しました。

対して27日(日)に対戦したコスタリカは、日本のFIFAランキング24位に対して31位と今回のグループリーグ内で唯一の『格下』ともいえる相手でした。にもかかわらず遠藤航選手や伊藤洋輝選手は「試合前から0-0で進む分には問題ない感じだった」といったコメントを敗戦後にしており、そこまで積極的にでない、むしろ消極的ともいえる試合運びも、ある種チームの同意の下でそうなっていたことが伺えました。

ドイツ戦のようなジャイアント・キリングではそもそもないことは分かりつつも、コスタリカ戦で死にものぐるいで勝利を掴みにいく姿勢をとったほうが引き分け狙いでもいいといったスタンスよりも決勝リーグ進出の可能性は高まっていたのでは、ということくらいはただの確率論としてもそう思います。

ドイツとスペインが引き分けたことで、リーグはさらなる混戦に。スペインがドイツに勝っていた場合、日本戦はある種の消化試合になっていた部分もありましたが、スペインは日本に勝たないとグループリーグ敗退の可能性もある以上、どうみても本気で向き合ってくるでしょう。本気のスペインとの試合を観られるという楽しみはあるものの、決勝リーグへ日本が進出できる期待値はドイツ戦直後より下がってしまっています。戦略的な采配の定義というのもなかなか難しいものだなぁと思って日々ニュースをみています。

とはいえ4年に一度のお祭り、12月2日(金)の朝4時、早起きして観戦に臨みたいと思います。日本代表にとっては今大会最後の試合になる可能性もありつつ、なんとか奇跡が起こってくれたらいいのですが。

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Text:Kensuke Yamamoto Edit:Chiho Inoue

Profile

山本憲資Kensuke Yamamoto 1981年、兵庫県神戸市出身。電通に入社。コンデナスト・ジャパン社に転職しGQ JAPANの編集者として活躍。その後、独立して「サマリー」を設立。スマホ収納サービス「サマリーポケット」が好評。

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