誰も孤独にしない真のポップスター、レディー・ガガの真骨頂! 来日ツアーの様子をレポート| Numero TOKYO
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誰も孤独にしない真のポップスター、レディー・ガガの真骨頂! 『クロマティカ・ボール』ツアーの模様をレポート

レディー・ガガのワールドツアー「クロマティカ・ボール」の日本公演が埼玉所沢のベルーナドームで2日間にわたって行われた。そのライブの模様をお届けする。

愛する日本のオーディエンスへの想い

会場には国籍も性別も年代も違う多種多様な人々が集った。なかにはスーツケースを持っている人もいて、遠方からはるばる8年ぶりの来日を目撃しようと足を延ばした人も多くいたことがうかがえた。

開演時刻になり、巨大なヴィジョンに鋭角なフォルムの衣装をまとったガガの姿が映り、満員の場内は大興奮に包まれる。まずは、2009年にリリースされた大ヒット曲「Bad romance」からスタート。ガガはミニマルな棺のような器の中に収まったままで歌う。曲中、「Come on Tokyo!」「Tokyo! Put your hands up!」と叫ぶ。この日のライブ中、ガガは何度もオーディエンスに直接的に話しかけた。それは、板のような装置に寝た状態でも、ダンサーによって掲げられながらでも、アグレッシブなダンスの最中でも、ステージに寝転がりながらでも、変わらなかった。

ライブは「オープニング」から始まり、「アクト1」「アクト2」という風に何章かに分かれており、章が変わる度に舞台装置、演出、衣装が大きく変わるという超スペクタクルな内容。世界最高峰のエンターテインメントショーが繰り広げられながらも、ライブが進む度にガガとオーディエンスの距離は近くなった。「愛してます、東京!」と何度も日本語で叫び、アリーナエリアの中を歩いてサブステージに移動する等、物理的にも少しでも愛する日本のオーディエンスに近づこうという想いが溢れていた。

中盤、アリーナエリア後方のサブステージでピアノを前にしたガガは「LGBTQコミュニティに捧げます」と言って「Born This Way」を歌った。あらゆるジェンダー、国籍、環境の分断をなくし、すべての人々を肯定し、ありのままの自分を愛そうと高らかに歌うこの曲を、ピアノバージョン→ダンスバージョンという圧巻の流れで披露。誰も孤独にしない真のポップスター、ガガの真骨頂だった。

サブステージで昆虫のようなヘッドピースをまとい、主演映画『アリー/スター誕生』の劇中曲「Shallow」から始まったピアノの弾き語りブロックでは、たくさんのことをオーディエンスに語り掛けた。長い時間待ってくれたことへの感謝を述べ、いかに自分が日本のオーディエンスを大事に思っているかを笑顔で伝え、再会を約束した。多くのオーディエンスとガガの心が共鳴する中での「The Edge of Glory」は感動そのものだった。

アンコールではまっすぐに愛を求める「Stupid Love」と、アリアナ・グランデとのコラボ曲でありパワフルにこの世界を生き抜こうとする「Rain On me」という『クロマティカ』収録のキャッチーで生命力あふれるヒット曲を披露。そして、日本でも大ヒット中の『トップガン マーヴェリック』の主題歌「Hold My Hand」も聴かせるという惜しみないエンターテイナーぶりを発揮。充実した笑顔を浮かべ、バンドメンバーと手を繋ぎハグをし、両手でハートマークを作り、深々とおじぎをして去っていった。

肉体性、アート性、メッセージ性──そのどれもが超一流のエンターテインメントを約2時間半、真摯に届けたガガ。何としてでも全オーディエンスを楽しませ、幸せを与えるんだという使命感を抱いたポップの化身のようであり、同時に人間臭い愛にも溢れたガガの姿はとても尊かった。これまでどれだけの人々がガガから生きる活力をもらい、またこれからも受け取るのだろうか。4日のライブ後には突然の雨が降るなか、ガガからエネルギーをもらい帰路につくオーディエンスの前に、衣装のまま笑顔で姿を現したというサプライズも、実にガガらしいエピソードだった。

Photos:Masanori Naruse Text:Kaori Komatsu Edit:Mariko Kimbara

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