【連載】「ニュースから知る、世界の仕組み」 vol.30 3歳園児バス置き去り事故 | Numero TOKYO
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【連載】「ニュースから知る、世界の仕組み」 vol.30 3歳園児バス置き去り事故

Sumally Founder & CEOの山本憲資による連載「ニュースから知る、世界の仕組み」。アートや音楽、食への造詣が深い彼ならではの視点で、ニュースの裏側を解説します。

vol.30 3歳園児バス置き去り事故

写真はイメージです
写真はイメージです

静岡県で幼稚園の送迎バスに3歳の園児が置き去りにされてしまい、結果、幼い命まで失われてしまうという実に悲しいニュースがありました。

静岡の園児置き去り死 怠慢連鎖、システム整備も防げず
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE103DS0Q2A910C2000000/

 

僕も保育園に通っている小さい姪っ子がおり、ニュースを見て他人事ではないように思える部分もあり、亡くなってしまった子供のことを思うと本当にいたたまれない気持ちになりました。理事長らの会見を見ていると、やはり防げた事故だろうなという印象を強く持ちましたし、未必の殺人という表現は言い過ぎの部分があるかもしれませんが、このような事故は二度と起こってはいけません。

ちょうど、この原稿を書いている最中に、政府が全国の通園バスに国の補助金で安全装置を設置する、との報道がされていましたが、どんどん進めばいいと思いますし、今回の事件においても「登園アプリ」がうまくワークしていなかったことが悲劇の一因のひとつ、ともニュースでも報道されていました。

ワークしていなかった、というのはうまく機能しなかっというよりはそれを利用する人間がちゃんと運用できてないなかった、という側面が強く、アプリ自体はもちろん一定の役割を果たしているわけで、報道の意図としてアプリの完成度を責めたてるものではなかったです(僕もそれはそう思っています)。ただ、僕は自分が仕事でウェブサービス、アプリを提供していることもあって、職業柄なぜワークしなかったのか、というポイントが気になったところがあり、UX(ユーザーエクスペリエンス)について改めて考える機会にもなりました。

高いUXというのは、ただわかりやすい、使いやすいという概念に留まらず、直感的に触るだけでミスをせず運用できる、というところまで辿りつけるのが理想のレベルです。そしてそういったUXは何もアプリ上や安全装置にのみ伴って提供されるものでもないのですよね。

この事件のあとに、こういった事故を防ぐためのアイデアとして、園児がバスに乗車するときに必ず靴を脱がせるようにするべき、と書いている投稿をみて、確かにいいアイデアだな、と目からウロコでした。バスに乗ったままの園児がいると、乗車時に脱いだ靴が残っている状態になり、シートの下等に隠れていたとしても、直感的にまだ園児が乗っていることが分かる仕組みになり、探すことができます。

この仕組みも無論、UXを意識した設計といえ、導入コストもほぼかからず、視認性も高く、靴を脱がすことさえしっかりルール化できれば、圧倒的にミスも起こりにくいと思われます。

説明書を読んでしっかり理解すれば「物理的に動く」というコンディションと、ある意味、猿でもミスなく運用できそうなコンディションを比べると、UXという観点からいうと後者の方が圧倒的に優れていると言え、アプリのクオリティを高めたり安全装置を導入することももちろんがしがし進めていきつつ、誰でも簡単に運用できるかという観点もこのような事故を防ぐには非常に重要になってくるものだなと、考えさせられる機会になりました。このような不幸な事故が今後は起こりませんように。

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Text:Kensuke Yamamoto Edit:Chiho Inoue

Profile

山本憲資Kensuke Yamamoto 1981年、兵庫県神戸市出身。電通に入社。コンデナスト・ジャパン社に転職しGQ JAPANの編集者として活躍。その後、独立して「サマリー」を設立。スマホ収納サービス「サマリーポケット」が好評。

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