Art / Feature
小さき視点のアートたち【4】AKI INOMATA
見慣れた眺めのはずなのに、目を凝らしてみた途端、自分を取り巻く景色が一変する。身近なものの形や影、思わぬ隙間や裏側まで。いつもの世界の見え方が鮮やかに変わる。それこそアートの得意技! 小さな視点から広がる奥行きを、じっくり覗いて感じてみよう。Vol.4はAKI INOMATA。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年7・8月合併号掲載)
AKI INOMATA
『やどかりに「やど」をわたしてみる』
2014-15年 © AKI INOMATA courtesy of Maho Kubota Gallery
生き物との共同作業のプロセスを作品化するアーティスト。本作は3Dプリンターで出力したプラスチック製の「やど」をヤドカリに渡し、引っ越す様子を観察したシリーズだ。ヤドカリが「やど」として背負っているのは日本の「結婚式教会」。西洋建築を参考に設計された擬洋風の建物で挙式を行う非キリスト教徒のカップルたち。ヤドカリと「やど」というミクロな世界から、欧米を模倣することで都市を近代化したと思い込み、そこに“借り住まい”をしている私たちの姿が垣間見える。
Text : Akane Naniwa Edit : Keita Fukasawa
Profile
あき・いのまたAKI INOMATA
1983年、東京都生まれ。移民や難民をテーマにした『やどかりに「やど」をわたしてみる』や『犬の毛を私がまとい、私の髪を犬がまとう』など、生き物との関わりから生まれるもの、あるいはその関係性をテーマに作品を手がける。過去の主な個展に十和田市現代美術館(2019年)、主なグループ展にニューヨーク近代美術館(MoMA)「Broken Nature」(2020〜21年)などがある。9月11日(日)まで金沢21世紀美術館にて個展「アペルト16 AKI INOMATA:Acting Shells」が開催中。