アートと暮らす達人たちのインテリア術 vol.1 フィリップ・テリアン&ジゼル・ゴー | Numero TOKYO
Art / Feature

アートと暮らす達人たちのインテリア術 vol.1 フィリップ・テリアン&ジゼル・ゴー

生活の中で当たり前のようにアートを楽しむ人はどのような家に住んでいるのだろう。今すぐ真似したくなるインテリアのアイデアは、人生を豊かにするためのアイデアでもあった。アートを愛する達人たちの暮らし拝見!Vol.1は「DAMDAM」ファウンダーのフィリップ・テリアン&ジゼル・ゴーのご自宅をご紹介。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年6月号掲載)

日本家屋と相性のいい作品に囲まれて

海を眺めるリビンングルームは、L字型に作られた母屋の中心。和紙職人の作品や木のスツールがバランス良くレイアウトされている。
海を眺めるリビンングルームは、L字型に作られた母屋の中心。和紙職人の作品や木のスツールがバランス良くレイアウトされている。

自然界に馴染む美しさを

富士山を一望する三浦半島の小さなビーチ。隣接した小高い丘に、フィリップ・テリアンとパートナーのジゼル・ゴーの別宅が昨年の夏に完成した。「古い平屋の骨組みを残して改装したので、名残りとして古い木目の天井や柱があります。都内の自宅は遊び心のある作品が多いですが、ここでは日本家屋の造りや雰囲気に合う自然由来のものを原料にした作品を飾っています」と語るのはフィリップ。

額に入ったフィリップの息子によるドローイングは、エッジの効いたカットワークの作品。棚の上段には、奄美大島に住む木工職人今田智幸が倒木で作った花器(中央)、KEICONDOの陶器の器(右)、日本各地の工芸品などが書籍やCDと陳列されている。

室内に複数ある和紙のシリーズは、まるで抽象絵画のよう。美濃を旅した際に出合った作品で、伝統的な技法で職人が作った和紙にボタニカルダイで着色してある。作品に惚れ込んだ理由をジゼルはこう語る。 「どれも異なるテクスチャーで、2つとして同じものはないところに惹かれました。海と地平線のように見えると思い、あえて海に面したリビングに飾ることにしたんです。どの作品も置く場所は、外の世界とコネクトでき、窓から見える海や太陽、竹藪など、自然界の景色と馴染むことを大切に考えています」

<左>尾関律子の版画は室内のどこからでも視界に入る。 <右>玄関にある和紙に漢字を書いた作品は加山幹子作。下は小林辛市によるオブジェ。

ほとんどが日本人アーティストの作品であることにも注目したい。尾関律子の版画は、テラスとダイニングをつなぐ壁に掛けられ、一際目を引く。 「見た瞬間に、ここに置きたいと思いました。黒い線とコンポジションが美しく、静けさとエナジーを感じたんです。作品は所有しているストックの中からフィーリングで選びますが、結果的に心が落ち着くムードのものが集まったと思います」

そう語るジゼルがフィリップへ贈ったユニークな作品もある。世界各地で創作するアーティスト、淺井裕介が電車のチケットに描いたドローイングだ。この作家は、土や水、石、火を使った創作で知られる。どの作品も旅好きで豊かな自然を尊び、日本の文化と奥ゆかしい美を愛する二人ならではのセレクト。


さまざまな国を旅してきた二人が注目するアーティストの淺井裕介の作品。「旅先にあるもので作った即興性のある作品はユーモラスだと思う」とジゼル。キッチンのカウンターからすぐ眺められるところに。

芸術がもたらすヒーリングの力

二人が手がける自然派スキンケアブランド「DAMDAM」は、日本人アーティストや職人と定期的にコラボレーションを行う。室内にある木のスツールやテーブルは、木材の加工を得意とする「TIMBER CREW PRODUCTS」によるもの。テーブルの上に置かれた陶器のお香立ては野口寛斎の作品。さらにKEICONDOの笠間焼の器が並ぶ。どれも穏やかな色彩と触れたくなるようなテクスチャーが心地いい。「日本の平屋はカリフォルニアのミッドセンチュリーの建築物に通じる雰囲気があり、洗練されたラインのオブジェや立体作品はとても相性が良いんです。いくつか置いても空間にハーモニーが生まれます」と語るフィリップ自身は、これまでアートに支えられてきたという。「東日本大震災をきっかけに絵を描くようなりました。週末は母屋の向かいにあるゲストハウスの一角をアトリエとして使い、抽象画を描いて過ごしているんですよ」

趣味で絵を描く場所は、最近完成した離れのゲストハウスに。
趣味で絵を描く場所は、最近完成した離れのゲストハウスに。

絵を描くことで無心になり、ヒーリング効果が得られる。作品はベッドルームやリビングルームに、フィリップの息子が描いた絵やジゼルとの旅先で見つけた思い出深い品々とともに置かれている。

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Photos:Tomohiro Mazawa Edit & Text:Aika Kawada

Profile

フィリップ・テリアン&ジゼル・ゴーPhilippe Terrien&Giselle Go 右/フィリップ・テリアン
パリ・ソルボンヌ大学経済学科日本語学科卒業。在日フランス系企業を経て独立。ヨーロッパのデザイナーや商品を日本に紹介し、ビジネスコンサルティング業務を行う。2003年にPR会社TFCを設立。17年、ジゼル・ゴーとともにナチュラルスキンケアブランドDAMDAMを設立。

左/ジゼル・ゴー
シンガポール版『Harper's BAZAAR』元編集長。2017年、フィリップ・テリアンとともにDAMDAMを設立。今年6月にはアメリカ大手コスメセレクトショップ「sephora」でDAMDAMの取り扱いがスタートする。

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