【連載】「ニュースから知る、世界の仕組み」 vol.24 トム・クルーズのギャランティ | Numero TOKYO
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【連載】「ニュースから知る、世界の仕組み」 vol.24 トム・クルーズのギャランティ

Sumally Founder & CEOの山本憲資による連載「ニュースから知る、世界の仕組み」。アートや音楽、食への造詣が深い彼ならではの視点で、ニュースの裏側を解説します。

vol.24 トム・クルーズの『トップガン マーヴェリック』出演ギャランティ

トム・クルーズの出世作、『トップガン』の36年ぶりの続編『トップガン マーヴェリック』が日本でも大ヒットしています。もう観られた方も多いと思いますが、今年還暦を迎えるトム・クルーズの変わらぬスタイルに僕も感銘を受けました。

ちなみに、今回のトム・クルーズの俳優としての出演ギャランティは1300万ドル(約17億円)と言われていて、絶対額としてはもちろん少なくないものの、ネットフリックスやアマゾンなども参入している今のハリウッドの映像作品に主演するスターのギャラ相場からすると、割と安めの金額だなという印象もあります。スタントも極力いれず、撮影のタフさを鑑みるとなおのことですし、Variery誌の下記記事の2021年のギャランティランキングの1位のダニエル・クレイグなんて『ナイブズ・アウト』の続編2作で1億ドル(135億円)ですからね。

From Daniel Craig to Dwayne Johnson, Inside the Biggest Movie Stars’ Salaries

https://variety.com/2021/film/news/biggest-movie-star-salaries-daniel-craig-dwayne-johnson-1235043305/

そう思って調べてみると、上記のトムの1300万ドルはあくまで前金の位置づけで、パラマウントとはバックエンドという興行成績に応じた出来高のギャランティ契約になっているとアメリカでは報道されていました。パラマウントの粗利(興行収入の半分と言われている)の10%がインセンティブとしてついているようで、『トップガン マーヴェリック』は先週の時点で5億ドルを超えていましたから、さらに2500万ドルの金額が上乗せされることが現時点で確定しており、一本の映画のギャランティとしては新記録となる1億ドル(135億円)を超える可能性もあるのでは、と一部では言われているほどの勢いのこと。

ダニエル・クレイグのナイブズ・アウトの続編の権利はネットフリックスが取得していて、配信メインの場合は興行収入という概念というよりはサービスのサブスクリプション契約数にどれだけ寄与してくれるか、というポイントからギャラを算定しているはずです。2位のドウェイン・ジョンソンの『Red One』もAmazon Studioの制作作品です。

出来高のバックエンド契約の作品も珍しくなかったハリウッドのギャランティ契約ですが、配信サービスの隆盛によって近年は主演スターに巨額のギャランティを先に支払うケースが目立ってきていました。

『トップガン マーヴェリック』も新型コロナの影響で思ったタイミングで公開できなかった部分があったはずですが、あくまで劇場でというトム・クルーズのこだわりもあり(契約があったせいとも言えるかもですが)、先に配信で公開することは決してなく、この度、満を持して劇場公開を迎えたのです。

ちなみにスカーレット・ヨハンソンもディズニーが親会社であるマーヴェル作品『ブラック・ウィドウ』出演に際して出来高ギャランティーのバックエンド契約を結んでいたとされ、こちらの作品のケースでは新型コロナの影響で、想定数以下の劇場公開にあわせてDisney+での配信がはじまってしまったことで、インセンティブのギャランティがーが下がってしまったヨハンソンがディズニーを訴える、という事象にまで発展してしまっています。この件は結果、和解に到達しているものの、劇場と配信の隔たりは契約においてもいろいろと存在していることが伺えます。

「ブラック・ウィドウ」訴訟、ディズニーと主演女優和解
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0126W0R01C21A0000000/

『トップガン』は『トップガン』で原作の権利が続編に向けて期限が切れていた件について、権利者の遺族がパラマウントを訴えるというニュースが報じられていましたが、こちらもなかなか興味深いニュースで、ちょっと注視しています。

何にせよともあれ『トップガン マーヴェリック』の完成度は素晴らしく、まだ観られていない方は劇場でぜひとも。トム・クルーズという俳優の気概が圧倒的な本物であることだけは疑いようがないことが、スクリーンからひしひしと伝わってきます。

『トップガン マーヴェリック』

監督/ジョセフ・コシンスキー
脚本/クリストファー・マッカリー
製作/ジェリー・ブラッカイマー、トム・クルーズ
出演/トム・クルーズ、エド・ハリス、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、ヴァル・キルマー
© 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
配給/東和ピクチャーズ
大ヒット上映中
https://topgunmovie.jp/

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Text:Kensuke Yamamoto Edit:Chiho Inoue

Profile

山本憲資Kensuke Yamamoto 1981年、兵庫県神戸市出身。電通に入社。コンデナスト・ジャパン社に転職しGQ JAPANの編集者として活躍。その後、独立して「サマリー」を設立。スマホ収納サービス「サマリーポケット」が好評。

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