驚きのペアリング体験! カクテルで楽しむボルドーワインのすすめ
年間500種類のワインを飲むという人気ブロガーのヒマワインが、ボルドーワインを用いたカクテルとモダンベトナム料理のペアリングイベントをレポート!
ワインの王道、ボルドーワインがカクテルに!?
「ボルドーワイン」と聞いて、みなさんはどんなワインを想像しますか? ワインの王道とか定番のイメージから、濃くて力強く、渋みのしっかりとある赤ワインをイメージされる方が多いかもしれません。ワインブロガーである私も、ボルドーワインを飲む際はちょっと身構えるというか、「飲むぞ」と自分に気合を入れる感じがある気がします。
そんな“王道”ボルドーワインをカクテルにして、フードと合わせて楽しもう! というイベントがボルドーワイン委員会“公式”で開催されると聞いて、興味を引かれないわけにはいきません。ワインとフードのペアリングディナーの経験はあれど、ワインカクテルとフードのペアリングは初めての経験。ワクワクしながら会場のモダンベトナムレストラン・AnDi(アンディ)に向かいました。
AnDiは元銀座レカンのシェフ・ソムリエである大越基裕氏のお店。今回のイベントは、大越氏が考案したボルドーワインのカクテル5種とフードとのペアリングを軸に、気軽に楽しめるボルドーワインの魅力に迫るというのが趣旨。いったいボルドーワインはどのようにカクテルへと変身し、いったいどんなフードと組み合わされたのか。ビックリ箱を立て続けに開けたような、驚きに満ちたその中身をご紹介していきましょう。
最初に登場したカクテルは、クレマン・ド・ボルドー(ボルドー産スパークリングワイン)をほうじ茶、ローズウォーターとブレンドし、食用バラを添えたカクテル。スパークリングワインとお茶! いきなり仰天の組み合わせですが、大越氏はその狙いをこう解説します。
「お茶は香りがあって甘味がないため、食事に合わせるカクテル作りでは上手に使うことが大切です。このカクテルはほうじ茶のスモーキーさとストラクチャー(構造感)を活かしつつ、バラの香りを加えてエレガントに仕上げています」(大越氏)
カクテルは見た目からまるでロゼワインのようなやさしいバラ色。色のイメージから予想されるバラの香りがグラスから漂い、口に含むとお茶のニュアンスもたしかに感じられて飲んだことのない味わい。合わせた料理はカシューナッツと米粉をメインにセサミをつけたライスクレープでしたが、ゴマの香ばしさとスパークリングワインの弾ける泡が好相性で、バラ、ゴマ、お茶、そしてワイン本来の香りが渾然一体となって味覚を突き抜けてきます。これは面白い……!
私が着席していたテーブルには、このワインの生産者であるジャイアンスのルディヴィヌ・モンマイユールさんが同席されていました。せっかくなので、ルディヴィヌさんに自社のクレマン・ド・ボルドーを使ったカクテルについて、オススメを聞いてみました。
「たとえばカシスなど果実のリキュールを加えるのはオススメです。グレープフルーツジュースにコリアンダー、そこにお酒が好きな人は少しだけウォッカを加えてもいいですね。いちばんカンタンなのは、クレマン・ド・ボルドーにフローズンストロベリーやラズベリーを加えるカクテル。ワインが冷たいままで楽しめるというメリットもありますよ!」(ルディヴィヌさん)
これはいいことを聞きました。自宅冷凍庫には朝食のスムージーに使う冷凍イチゴが常備されているので、さっそくそれをワインに沈めてみたいと思います(笑)。そこにミントの葉っぱをあしらったりしたら、ホームパーティの乾杯用にも良さそうです。
このあとも、白ワインに煎茶やレモングラス、穂紫蘇、木の芽、ライムの皮を加えて爽やかに仕上げたカクテルをキャロットサラダと合わせたり、別の白ワインには麦焼酎(!)を合わせ、グラスの縁にカカオパウダーやスパイスなどをつけたカクテルと濃厚な揚げ春巻きを合わせたりと、驚きのペアリングが続いていきました。
どれも想像だにしなかったレシピ。それらを味わいながら、私はボルドーワイン委員会インターナショナル・プレス・リレーションズのセシル・ア氏が冒頭に語っていたことを思い出しました。
「ボルドーワインは複数のブドウのアッサンブラージュで造るのが特徴のワイン。造り方そのものがカクテルっぽいと言えるかもしれません。フルーティ、フローラル、スパイス、ハーブ……これらはワインの表現としておなじみですが、実際にそれらを使用したカクテルをお楽しみいただきたいですね」(ボルドーワイン委員会セシル・ア氏)
アッサンブラージュとは複数のブドウ品種(ワイン)を混ぜてワインを造ること。ボルドーでは赤ならカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フランにプティ・ベルド……といったそれぞれに性格の異なるブドウを原料としたワインを組み合わせて、ボルドーワインにしか出せない香りと味わいを作り出します。それがそもそも「カクテル的」だというわけです。うーん言われてみれば納得。
そして、たしかにワインを評するときにはナツメグ、アニス、コショウといったスパイス類、タイムやミントといったハーブ類などが、表現としてよく使われます。それらを実際にワインに加えることでワインの特徴がより強調され、それらを料理と合わせることでその魅力がさらに増幅されていく。そんな印象を受けました。
私と同席してくれたリュディヴィヌさんの「フランス人だからといって、ワインに詳しい状態で生まれてくるわけではありません」という言葉に象徴されるように、フランスにおいても「ワインを飲むには知識が必要」という意識があるのだそうです。日本人もフランス人もワインに感じる最初のハードルを同じなんですね。一言でいえば「よくわからない」。それで最初の一歩が踏み出せない。その最初の一歩を踏み出すきっかけとしてワインカクテルはすごく魅力的な提案だと感じました。
スペインでは、夏場は赤ワインにコーラを入れた「カリモーチョ」を楽しむそうです。ほかにも、白ワインに炭酸水とライムを加えた「スプリッツァー」、もっと気軽に白ワインにジンジャーエールとレモンを加えた「オペレーター」といったカクテルも、世界中で楽しまれています。
ボルドーには格付けワインと呼ばれる高級なワインもありますが、その生産地域の広さ、そして気候の良さから普段使いできるコスパの良いワインもたくさん存在します(実際、この日試飲したりカクテルに使われたワインは、どれも希望小売り価格1,000〜4,000円未満のワイン)。そんなカジュアルで高コスパなボルドーワインをカクテルにして楽しむ。これは、ワインの間口を広げるいい方法だし、私自身も今後ぜひ自分のワインライフに取り入れてみたいと感じました。
ワインラヴァーの方はもちろん、「ワイン、飲んでみたいけど何を選べばいいのかわからない」という人こそ、この夏はボルドーワインでワインカクテルデビューしてみてはいかがでしょうか?
Text:Hima Wine