5組のアーティストが問う、理想と現実の間で揺れる自己。「Role Play」展 @プラダ青山店
家族や友達、仕事先で、対面とSNSで、人格が変わる。“見せたい自分”の設定やキャラの数を増やし続ける一方で、私たちの役割演技(ロールプレイ)は何を目指して加速していくのか。5組のアーティストの作品から、そのゆくえを考える。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年5月号掲載)
服を着替え、写真を盛ってキャラ変する。SNSには裏アカがたくさん。仮想世界(メタバース)のアバターで理想の自分を作り上げる。こうした“見せたい自己”のあり方は、果たしてどこへ向かうのか。国際的な写真雑誌『Aperture』の元編集長で、ジャーナリスト、キュレーターのメリッサ・ハリスはこう語る。
「きっかけはソフィ・カルやシンディ・シャーマンをはじめ、多様な役割(ペルソナ)を探求してきたアーティストの多くが女性や有色人種、性的マイノリティだと気づいたこと。彼らの“分身願望”に着目し、インスタグラムやコスプレ、オンラインゲームなど幅広い事例を調べていくうちに、役割演技(ロールプレイ)には従来の社会的属性を根底から覆す可能性があるという考えに至ったのです」
そして彼女は、このテーマにふさわしいアーティスト5組を選出した。
「ジュノ・カリプソは核シェルター付きの邸宅で終末論的な恐怖を演出し、ハルカ・サカグチとグリセルダ・サン・マルティンはアメリカのエンタメ業界におけるステレオタイプな人物像を写し出す。澤田知子は日本のお見合いの典型的キャラクターに扮し、ベアトリーチェ・マルキは分身によって固定観念を皮肉り、ボゴシ・セクフニはアバターを用いて父親との関係をシミュレートしています」
私たちの誰もが抑圧や願望に駆られながら、入れ替え可能なアイデンティティを演じている。現実と仮想が融合し、幾つもの自分を織りなす時代。その幕開けにプラダが投じた一石を、あなたはどう読み解くだろうか。
「Role Play」
プラダ財団の支援のもと、ミラノのオッセルヴァトリオ・フォンダツィオーネ・プラダにおける展示の第2弾として企画された展覧会。
会期/2022年3月11日(金)〜6月20日(月)
会場/プラダ 青山店 5F
住所/東京都港区青山5-2-6
www.prada.com/jp/ja/pradasphere/special-projects/2022/role-play-prada-aoyama.html
※最新情報は上記サイトを参照のこと
Edit & Text : Keita Fukasawa