【連載】「ニュースから知る、世界の仕組み」 vol.21 カルティエのイベントと衣装の関係 | Numero TOKYO
Culture / Post

【連載】「ニュースから知る、世界の仕組み」 vol.21 カルティエのイベントと衣装の関係

Sumally Founder & CEOの山本憲資による連載「ニュースから知る、世界の仕組み」。アートや音楽、食への造詣が深い彼ならではの視点で、ニュースの裏側を解説します。

「シジエム サンス パル カルティエ」 ©︎Cartier
「シジエム サンス パル カルティエ」 ©︎Cartier


vol.21 カルティエのイベントでセレブリティが着用した衣装

先日、京都の京セラ美術館でハイジュエリーの受注会が開催されたのにあわせて大きなイベント(内覧会)があり、松嶋菜々子さんや数多くの著名人が会場に来場し、華やかな雰囲気を彩っていました。

松嶋菜々子 ©︎Cartier
松嶋菜々子 ©︎Cartier

「カルティエ」の京都でのジュエリーイベントに豪華ゲストが来場

https://www.wwdjapan.com/articles/1349965

記事にも出ているセレブリティが着ていたセットアップが、僕の好きなアーティストであるスターリング・ルビーの手掛けるブランドのものみたいでかっこいいなとニュースを見て思い、どこのブランドのものか調べてみると300年以上の歴史を持つ京都西陣の織屋「HOSOO」の西陣織のパターンのテキスタイルをデザイナーの三原康裕さんがオーダーメイドで仕立てたスーツとのこと。 

他にも同イベントのゲストだった、松嶋菜々子さん、倉科カナさんらの華やかな衣装も同様にHOSOOのテキスタイルをドレスに仕立てたものだったとのことでした。

倉科カナ ©︎Cartier

通常ブランドのイベントとなると、彼らのようなテレビをはじめとしたメディアで出席している様子が露出する著名人にはそのブランドの衣装を着用してもらうことが多いですが、カルティエにはアパレルラインがなく同ブランドの衣装を着用するという選択肢はありませんでした。

セレブリティたちの衣装をハイジュエリーも展開している競合ブランドのものにするのは当然NGなので、ジュエリーに特化したブランドのパーティとなるとスタイリストは頭を悩ませることが多いです。どこのブランドかわからない地味なもので無難に済ませるのではなく、今回、カルティエの主導で「西陣織」をドレスコード的に展開し、こういう座組で京都の雰囲気にマッチした華やかな衣装をゲストたちに纏わせたのはブランドの底力としても流石と唸らせられるものでした。

(左から)広末涼子、小栗旬 ©︎Cartier


平手友梨奈 ©︎Cartier

例えば衣装の主役はダイヤ尽くしの時計であったりするのですが、各々のゲストが着用したカルティエのハイジュエリーが一番引き立つようにスタイリングされているのは当然で、その華やかな衣装が目が眩むようなジュエリーの煌めきを一層際立たせ、夜桜が満開の京都にふさわしいパーティの雰囲気を醸すことにもまた一役買っていたのだと思います。

ちなみにショパンコンクールで見事入賞した小林愛実さんがファイナルで着用していたドレスも同じくHOSOOのテキスタイルをドレスに仕立て上げたものでした。僕はサントリーホールでの彼女の東京公演の際にそのドレスを着用しているのを見ましたが、和のテキスタイルをこういうかたちでフォーマルに仕立てた衣装というのは、世界を舞台に活躍する日本人に実に相応しいものだなという印象をそのときにも持ったものです。

このイベントにおいてもそうですが、着物となると合わせやすいジュエリーの幅が狭まったり、海外のレッドカーペットを袴で歩ける日本人となると北野武ぐらいしかパッと思いつかなかったり、トラディショナルな和装まで突き詰めるとどうしてもシチュエーションを選ぶ部分がある気がするのですが、こういうスタイルで日本人のアイデンティティを衣装としてもプレゼンテーションし、スタイルとしてはよりグローバルの雰囲気にハマりやすいかたちに落とし込んでいくというのは、新しい和洋折衷として絶妙のバランスだなとそこもまた感心したポイントではありました。

こんなことを書いていると、僕もこんな一張羅をいつかは着てみたいなと思ったりはするものの、そういう衣装を仕立てられるような身分まではまだまだ道は遠いなという現実の壁がしっかりと立ち塞がってくれる今日この頃です。

連載「ニュースから知る、世界の仕組み」をもっと読む

Text:Kensuke Yamamoto Edit:Chiho Inoue

Profile

山本憲資Kensuke Yamamoto 1981年、兵庫県神戸市出身。電通に入社。コンデナスト・ジャパン社に転職しGQ JAPANの編集者として活躍。その後、独立して「サマリー」を設立。スマホ収納サービス「サマリーポケット」が好評。

Magazine

MAY 2024 N°176

2024.3.28 発売

Black&White

白と黒

オンライン書店で購入する