イタリアワイン、家族の物語 【Vol.2】「Pieropan」誠実さを貫く、愛に満ちたソアーヴェ
日に日に夏へと向かうこれからの時季、キンと冷えた一杯の白ワインはオンとオフのいい切り替えになってくれる。ワイン造りに情熱を注ぐイタリアの家族にフォーカスし、月1回でお届けしているワイン連載の第2回は、ヴェネト州ヴェローナ近郊にある「Pieropan(ピエロパン)」のストーリー。
イタリアに根付く“アペリティーボ”の習慣
この時期のイタリアの日没は21時頃。サマータイム制度は今年で廃止ともいわれているが、いずれにしてもイタリアでは仕事終わりのディナー前、心地よい夕暮れ時にワインやスプマンテとともにおしゃべりに興じる“アペリティーボ”という習慣が定着している。街のバールでは1ドリンクのオーダーで本格的なフードをフリーで楽しめるとあって、テラス席は常に多くの人々で賑う。愛の街で生まれた白ワイン、ソアーヴェ
イタリアを代表する辛口の白ワインといえば、ソアーヴェ。「心地よい、甘美な」という意味のとおり、軽やかなテーブルワインとして愛されている。イタリアにはその土地でしか生産していない固有品種のブドウが2000種以上もあるが、ソアーヴェはその一つであるガルガーネガ種を主体とする。本物を守るピエロパンの真摯な姿勢
ピエロパンが所有する畑は、粘土や玄武岩質土壌で凝灰岩に富み、ミネラルが豊富なソアーヴェ クラッシコ地区の斜面という一等地。そのためソアーヴェらしいフレッシュですっきりした飲み心地のなかにも、上質なコクとわずかな苦味の後味が印象に残る。実はソアーヴェは一時、大量生産に走りすぎたことによる質の低下で評判を落とした時代があったのだという。そのとき不屈の精神で名誉回復に努め、ソアーヴェの価値を守ったのがピエロパンだった。大切にしている家族の哲学について二人に聞いた。
「私たちの哲学は昔からずっと変わりません。最良のブドウ畑からしか、良いワインはできないと思っています。コロナ禍以前、世界の流れは地元を重んじるよりグローバル化でした。けれどピエロパンは畑、人、土地というローカル要素を大事にし、本物を生み出すことにこだわり続けています。畑は20年前からオーガニックの認証を得ており、近い将来にはオーガニックで認められている薬剤すら使わない栽培を目指しています」
ピエロパンの白ワインは、イタリアでは珍しいすっきりと細身のライン型ボトル。ドイツワインに多い型を採用している理由は、創業の10年前まで北イタリアがオーストリアの統治下だったため。今では近隣でこの型を使い続ける唯一のワイナリーとなった。1920年代から変えていないという、ブドウの若芽と家紋を描いたクラシックなエチケット同様、そんなところにもピエロパン家の自負が垣間見える。
王道のソアーヴェ クラッシコのほか、より複雑な味わいを楽しめるソアーヴェ クラッシコ ラ ロッカ、ここ20年は念願の赤ワイン、ヴァルポリチェッラの生産にも力を入れている。ブドウ畑自体に重点を置くことにこだわり、高品質を追求する意識の高さ、醸造工程の革新を絶え間なく行う。本質を崩さず、ワインを生み出し紡いできた家族へのリスペクトも忘れない。その真っ直ぐな姿勢が、ピエロパンの正統的な味わいを表している。
推しワイン、造り手のおすすめペアリング
Pieropan Soave Classico DOC
ピエロパン ソアーヴェ クラッシコ
エレガントかつフレッシュな果実香で、ブドウの花やサクランボ、サンブーカの香りが特徴的。輝きを帯びた淡い麦わら色。酸味と新鮮な果実味のバランスが良く、これからの夏に飲み飽きしない味わい。ガルガーネガ種85%、トレッビアーノ・ディ・ソアーヴェ種15%。750ml ¥2,100(参考小売価格)
アンドレア&ダリオから、このワインにあうおすすめ料理:地中海料理。レモンを効かせた魚介。グリーンビーンズやアスパラガスのタリアテッレ、タレッジョチーズのトルテッリーニやプロシュット・クルードなども。
Pieropan Ghes Rosé Extra Dry
ピエロパン ゲス ロゼ エクストラ ドライ
ヴァルポリチェッラの主要なブドウ品種、コルヴィーナ100%で造られたロゼのスプマンテ。ゲスとはギリシャ語で「地球からの」を意味し、地球がなければワインは生まれないという関係性からネーミング。深いピンク色でラズベリーやブラックベリーの香り。イチゴや赤スグリのフルーティーな味わい。愛らしい酸が口の中で弾ける食前酒に最適なワイン。 750ml ¥3,000(参考小売価格)
アンドレア&ダリオから、このワインに合うおすすめ料理:ヴェネチアのフィンガーフード、チケッティ。また生魚も合うのでお刺身やマリネなども合う。
Foodliner
TEL/078-858-2043
イタリアワイン、家族の物語
Edit & Text:Hiroko Koizumi