TOKYO女性デザイナーの最愛マイヴィンテージ|vol.1 進美影
今の気分を反映したリアルモードをつくり出すTOKYOの女性デザイナー。彼女たちがパーソナルに長く大切にしているアイテムとは? 手放せない理由から見えてくる、それぞれのアイデンティティ。自分らしさを見つめ直すことは、自身を愛することにつながる。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2021年5月号掲載)
進美影(MIKAGE SHIN ファッションデザイナー)
アクネストゥディオズのシューズ
パーソンズ在学中にNYファッションウィークに招待され、現在は東京を拠点に活動する新進ファッションデザイナー、進美影さん。彼女が手放せない一品はNYの古着屋で出合ったアクネストゥディオズのシューズ。そのストーリーは社会情勢からクリエーションを生み出す、彼女の服づくりを映し出す。「NYでは個性を大切にする仲間が多く、私自身も古着が好きなので、ユニークなものやインスピレーション源を求めて定期的に古着の店に出かけていました。この靴の初代は有名な古着店、ビーコンで4年前に一目惚れ。デザインはもちろん、歩きやすさも気に入って。素材探しで外を歩き回ることも多いので繰り返し履けるか、モードにもカジュアルにも合うかも考えて購入しました。でもあまりによく履いたので2年ほどで靴底が擦り切れてしまって。どうしても同じものが欲しくてeBayで探しました。今履いているのは3代目です。これもわざわざアメリカから取り寄せました。私も着なくなった服や小物は売りますが、世の中には服が溢れていてまだ着られるいいものも多くあるので、予算がかけられない若い人に循環させるほうがいいなと。
発表したばかりの2021年秋冬のテーマは『The Process』。今を生きる人に私の服を着て幸せになってほしい、それが根底にある本質で、私がリアルクローズにこだわる理由です。コロナで世界が不安定で暗くになってしまったけれど、未来から今を見れば一点の瞬間、通過点でしかない。過去を振り返っても60〜70年代は、ベトナム戦争、ケネディ暗殺など暗い出来事の反動でポップなカルチャーが生まれました。良くも悪くも変化の時代に生きていると肯定的に捉え、プロセス、変化にまつわるものをディレクションしてデザインしました。変化の機微の目撃者として、今、何が生まれているかを注視し、悲観も楽観もせず、真っすぐ前を見て生きていこうと考えています。服ってなくてもいいもの。だからこそ純粋に好きだから買うし、励まされる。そんなふうに勇気や自信を与えられたらと思っています」
Her Creation
サステナブルも意識した服づくり
「サステナブルはまったくやらずにゼロでいるよりは10でも20でも少しでもやったほうがいいと思うので、できることから始めている」と進さん。2021春夏ではリサイクルポリエステル、和紙や木の皮を使ったビーガンレザーも取り入れている。「サステナブルだからではなく、可愛いから着ているというふうにするのがデザイナーズブランドの真価。無理なく取り入れてほしい」
Photos : Hal Kuzuya Edit&Text : Hiroko Koizumi