山崎直子が語る、宇宙が教えてくれたこと
子どもを持つ母としては日本人初の宇宙飛行士である山崎直子。宇宙に行く夢のためにハードな環境に身を置きながら子育てをした日々が よみがえるという、女性宇宙飛行士の葛藤を描いた映画『約束の宇宙(そら)』のスペシャルアンバサダー就任を機に、いかなる環境でも自分らしくいられる方法を聞いた。( 『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2021年5月号掲載)
── 理解し合い、助け合う環境の中で、周囲への感謝がセルフラブにつながっていくんですね。
そう思います。コロナ禍で日記の大切さが注目されていますよね。宇宙に滞在しているときも簡単にでも日記を書くことがすごく大事でした。慌ただしく作業をして一日が過ぎていくんですけど、日記を書くときにその日のことを思い出すと、「あの人がこんなこと言ってくれたな」とか「この人のおかげでこの作業がうまく進んだな」と思って、自分だけでなく周りに目を向けられるんですよね。そうすると、自分は一人で生きてるのではなくて、いろんな人のおかげで生かされていると実感できる。それで自分を大事にしようって思うんですよね。作業に追われる日々が続くと、ロボットではないので「いったい自分って何なんだろう」と思い詰めてしまうこともあって。そういうときは、あえてボーっとする時間をつくることで、リセットできたりしました。あと、本当に小さなことですけれども、お気に入りの香水をつけたり。宇宙船の中では香水は使えなかったので、練りデオドラントみたいなものを持っていって使ってました(笑)。お化粧品も多少は持っていけるので、ちょっと口紅を引いてみるとか。それだけでちょっと気分がウキウキしたんです。宇宙生活の中で自分なりのルーティンがある人も多かったですね。コーヒーをいれてから作業を始める人もいれば、窓の外を見てから作業を始める人もいて、そういうことによって気持ちをリセットして自分らしくいられる。私は何か温かい飲み物を飲んでから作業をすることが多かったですね。
── 誰しも日々選択に迷うことがあると思います。アドバイスするとしたら?
私が思うのは、やっぱり正解は決まってないということです。自分で決めて進んだ道をあとで振り返ったときに「その道で良かった」と思えるようにしていくしかないと思うようにしています。「こっちにすれば良かったかな」と思うことももちろんありますけれども、そこからまた道筋を変えるのも一つの解ですしね。どんな解を選んでも、自分にとっての正解になれるように努力していけばいいのかなと思っています。
映画『約束の宇宙(そら)」
フランス人宇宙飛行士のサラ(エヴァ・グリーン)は7歳の娘ステラと二人暮らし。宇宙へ行く長年の夢が叶うことになったが、娘とはしばらく離れ離れになってしまう……。
監督/アリス・ウィンクール
出演/エヴァ・グリーン、マット・ディロン
4/16(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
yakusokunosora.com
Photo:Ayako Masunaga Interview & Text:Kaori Komatsu