辛酸なめ子がみた! 若き成功者のセルフラブ思考
日本人は自己肯定感が低い。彼らを知ったあとには、そんな言葉はもう遠い時代かのように感じるだろう。「地球を守り、火星を拓く」と宣言し気候変動と火星を研究する村木風海、中学2年生で起業し、高校1年生で母校を買収した仁禮彩香。漫画家の辛酸なめ子が、若き成功者である2人のセルフラブ思考について迫る。( 『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2021年5月号掲載)
【村木風海の場合】
よりよい社会のため、地球のために
人は何のために働くのでしょうか……。これまでは、稼ぐため、家族を養うため、欲しいものを手に入れるため、そんなモチベーションの人が多かったと思われますが、「Z世代」は、魂的にも進化しているようです。今回取材したニ人とも、社会を良くするために起業して、若くして世の中に大きな貢献をしていました。明確なビジョンと論理的な思考を持っていて、大人世代よりしっかりしています。
地球温暖化を解決する研究や発明をしつつ、人口爆発に備えて人類第二の故郷としての火星移住の可能性を研究している村木風海さんは、2000年生まれの化学者兼発明家。小学校の時から二酸化炭素について考え続けているそうですが、お堅い学者の印象はなく、オープンマインドでピースフルな雰囲気。「エコバッグと比較してレジ袋は環境に悪いと言われてますが、レジ袋一枚作るのにかかるエネルギーより、エコバッグ一枚にかかるエネルギーの方が大きいです。どのくらいエコバッグを使い続ければ、エコバッグはエコになると思いますか? 」と、ソフトな語り口調で質問を投げかけられました。ちなみに答えは「600回です。ニ年間使い続けないとエコじゃないんです」とのこと。「物が作られてから捨てられるまでのトータルな二酸化炭素排出量について考えることが必要です」。もう村木先生と呼びたいですが、わかりやすくて興味を引く話術も素晴らしいです。穏やかに語る村木さんですが、今人類はかなりの危機的状況にあり、2030年までに二酸化炭素排出量を半分まで減らさないと地球温暖化が手遅れなくらい進んでしまうそうです。村木さんが今の時代、地球に生まれてくださったことに希望の光を感じ、お任せしたい気持ちです。
【仁禮彩香の場合】
自己肯定感を育む環境
仁禮彩香さんは1997年生まれの社会的起業家。個性を伸ばす湘南インターナショナルスクールの幼稚園で学び、系列の小学校の設立を実現させます。日本人の自己肯定感が低い一因は、画一的な教育にある、と仁禮さん。「何か突出してできる子がいても、先生に、それはまだ習ってないからやらないで、と言われてペースを一定に揃えさせられる」と、一般の学校の問題点を分析。「失敗に対する恐れを生みやすい社会です。人間はそもそも不完全なのに、不完全性ということに対して許容性が低いんです。みんな同じであったほうが良い、という空気がありますが、私たちはみんな違う人間です。仕組みの中で、上に外れても、下に外れても、自分を肯定できなくなってしまいます」。おっしゃる通りで恐れ入りました……。仁禮さんはこれからもずっと「育む」ことに関わっていきたいと話していました。今は「学校を作る」という目標を持っているとか。「大人も子どもも楽しめる学校を作りたいです」とのことなので、設立されたらZ世代の叡智を授かりたいです。
ニ人ともセルフラブはもちろん、さらに壮大な人類愛、地球愛、といったところまで到達しているようでした。社会に愛を送れば、愛が返ってくる……それがシンプルな成功の法則のようです。
Illustration & Text:Nameko Shinasan Edit:Saki Shibata