Culture / Feature

TWIGGY. 松浦美穂×小野りりあん「都会で自然のためにできること」

私たちは地球環境のために何ができるのだろう? 環境や健康をベースにした美を提案し続けるヘアスタイリストの松浦美穂とモデルで環境活動家の小野りりあんが、課題解決に向けて重要なマインドを語り合った。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2021年3月号掲載)

環境問題についてさまざまな取り組みを行う松浦美穂と小野りりあん。お互いの活動を通じて気づきを得ているという二人の対談は100%自然電力で運営している松浦美穂のヘアサロン「TWIGGY.」で行われた。

小野りりあん(以下、O)「松浦さんが自然エネルギーに切り替えた理由は何だったんですか」

松浦美穂(以下、M)「そのほうが心地よかったから。それまでは部屋に石油が降ってる感じがしたけど、太陽と水と風で作られた電気を取り込めるってなんて気持ちがいいんだろうってワクワクしたんだよね」

O「素敵なイメージ! きっかけは?」

M「東日本大震災がきっかけ。サロンはたくさんの電気を使うからどうにかしないとって。ビルの屋上にソーラーパネルを設置することも考えたけど、当時はすごく高額な上に、まかなえる電気はわずか。何かいい方法がないかと考えていたときに自然電力株式会社〈1〉の社長と話す機会があって。『自然電力だけで安定した電気が供給できるの?』って心配してたんだけど、電気料を支払う先が変わるだけで送電の仕組みは変わらないから停電の心配もないと知って」

〈1〉自然電力株式会社 太陽、水力、風力など再生可能エネルギーを使って発電事業を行う電力会社。供給エリアは沖縄を除いて全国。shizendenryoku.jp

O「そう、電気自体は何も変わらないんですよね。〝買い物は投票〞といわれるように、どの電力会社を選ぶかということも意思表示の一つ。なぜまず電力会社を見直そうと言っているのかというと、日本のCO2排出量の大部分が化石燃料を使う発電所によるものだからです。日本では2016年に電力自由化が始まったものの8割の人が電力会社を変更しておらず、内訳もガス会社などに変更した人ばかりで再エネを押す会社を選んだ人は1%にも満たない状況。私が参加している『あと4年、未来を守れるのは今』〈2〉キャンペーンでは2025年までにCO2排出量を前年に比べて7.6%ずつ減らすことを目標に掲げていますが、原発や石炭などの火力発電に頼っているままではCO2削減の目標は達成できません。未来を変えられるかどうか大事な時期にいる今こそ、見直してほしい」

〈2〉あと4年、未来を守れるのは今 再生可能エネルギー転換を先送りにしている日本政府に対し、パリ協定の目標に整合した気候・エネルギー政策を求めるキャンペーン。ato4nen.com

M「自然エネルギーを供給する電力会社はいろいろあるけど、迷ってる人はまず何をしたらいいと思う?」

O『パワーシフト』〈3〉のサイトを見るのがいいと思います。自治体やベンチャー企業など、地域経済を支えるさまざまな再生可能エネルギー会社を選択肢として用意しているのがいい」

〈3〉パワーシフト 持続可能な社会を目指し、自然の力を利用した再生可能エネルギーを供給する
電力会社を紹介するウェブサイト。 power-shift.org

M「自分に合うものを選べるっていうのがいいよね。そういえば先日、自然電力株式会社の社長、磯野さんの勉強会に出席した時に、高校生の男女が参加していたの。彼らは音楽フェス「Climate Live Japan」〈4〉の中心メンバーだそうで、そのとき「CO2を排出せずに自然電力で作るフェスが実現したら素敵」と思って、自然電力を提案したの。私は歌ったり踊ったりできないけれど(笑)、人と人をつなげることはできるから。そういうことでお役に立てれば! と思って」

〈4〉Climate Live Japan 学生が主体となり、気候変動への理解と行動喚起を目的に世界40カ国で実施される音楽ライブ。第一回は4月24日に開催予定。グレタ・トゥーンベリのほか、国内ではコムアイらが賛同。www.climatelivejapan.com

O「そうですよね。私もこのフェスに裏方として参加しているんですけど、学生が中心となって頑張っている活動を応援することも大事なアクションの一つだと思っています」

“知る”ことが第一歩になる

M「電力会社を見直す以外にも環境のためにできることはたくさんあるよね。まずは何からするといい?」

O「やっぱり知ることかな。例えば、自然保護団体の「グリーンピース・ジャパン」〈5〉のサイトでは再生エネルギーだけでなく、食の安全や海洋資源の保護などさまざまな情報を発信していて、メルマガやインスタで知識を得ることができます。私たちが運営しているオープンコミュニティ「Green TEA」〈6〉では週に2回、zoomで誰でも参加できるミーティングや勉強会をしていて、環境にまつわる情報をシェアしています。気候危機問題について専門的に学びたい人は「350 Japan」〈7〉に参加するといいと思う。世界中の環境問題に関するレポートやニュースをピックアップしていて、身近なことからできるアクションのアイデアをくれます。ほかにも情報があふれているけど、正直フェイクニュースも多い。日本語でたどりつける情報が限られているから、いま友達と正確な情報に日本語で一気にアクセスできるビッグサイトを作ろうと計画をしていて」

〈5〉グリーンピース・ジャパン 「グリーン」(持続可能)で「ピース」(平和)な世界を目指し、世界55カ国以上の国と地域で連携して取り組む国際環境NGO。 www.greenpeace.org
〈6〉Green TEA 環境にまつわる情報収集はもちろん、好きなテーマのグループチャットやzoomでのミーティングに誰でも参加できるオンラインコミュニティ。 Instagram:@green.tea.official
〈7〉350 Japan 100%自然エネルギー社会の実現に向けて、情報発信やセミナーを行うNGO団体。世界の約180カ国において運動を展開。 world.350.org/ja/

M「早く作って(笑)」

O「そうですよね。あとはポッドキャスト『Emerald Practices』〈8〉も始めました! 松浦さんもラジオ『Clean, Simple, Smart. RADIO』〈9〉をされていますよね」

〈8〉Emerald Practices 俳優のTAOと小野りりあんがナビゲートし、暮らしをよりグリーンにする情報を発信するポッドキャスト。 anchor.fm/emerald-practices
〈6〉Clean, Simple, Smart. RADIO 「都会で心地よく暮らす」をテーマに、さまざまな分野で活躍するスペシャリストを迎えて対談するWEBラジオ番組(東京FM)。 audee.jp/program/show/100000087

M「そう、活字から入ると頭で考えちゃうから、音声メディアのほうがいいなと思って始めたの。りりあんもゲストに来てもらったけど、毎回いろんなゲストを呼んで、環境問題だけにとどまらず彼らの体験や想い、知識をシェアしてもらっています」

O「私も字が苦手で(笑)。環境問題やエネルギーについて詳しい人に聞いたほうが早いと思って、いろんなコミュニティに入ったんです。そうするといろんな情報が届くんですよね」

取り残さない、手をつなぐ時代へ

M「環境について考えることは難しいことではなくて、自分が想像できるイメージの世界にあると思う。例えば、電気は誰にとっても身近なものだよね。私みたいに“自然電力にするとワクワクする”とかそういった感情が動くことから始めればいい。だから、どういう未来にしたいかをイメージすることってすごく大事。人によっては車を買い替えることかもしれないし、肉を食べる日を減らすことかもしれない。みんな暮らし方が違うから、自分が楽しめることからやっていけばいいと」

O「そうですね。それに、知ることって面白いし、まずは興味のあることから調べてほしい。そして、気持ちを伝える大切さにも気づいてもらえたら。心に留めておくだけでは社会に反映されないから、自分の想いを身近な人に言ってみたり、署名、SNSやコミュニティで発信したり。方法はいろいろとある。環境問題に取り組むことは抗議したり、批判したり、過激なイメージがあるかもしれないけれど、“自分にとって大切なこと”を言葉にすることなんですよね」

M「そうだね。そして大事なのは、勉強した人だけが勝ち残るのではなくて、知らなかった人にも手を差し伸べる世の中であること。人それぞれに愛や正義があって、向いている方向が違うだけだから、お互い拒否しない入り口をつくることも必要。これからは意見の違う人を切り捨てるのではなくて、耳を傾け、手をつなぐ時代だと思う。それに日々情報も変わっていくと思うから、自分を常に更新できる柔軟性も大事。去年はコロナウイルスによって、多くの人が『地球を侵すこと=自分を傷つけること』だと気づいて、ライフスタイルを見直したと思うけれど、真面目になりすぎると息苦しくなってしまう。環境問題は急を要する問題だけれど、ストイックでいることが必ずしも正しいんじゃなくて、あなたが幸せでいることが正しいんだよということも忘れないでほしい」

O:頑張りすぎると自分が持たないですからね。実は私もすべてが嫌になったことがあるんです。環境問題に取り組む上で日々目にする科学者たちのレポートはシビアなものが多くて、「もう何やったってダメじゃん」って落ち込んじゃって。

M「どうやって立ち直ったの?」

O「仲間が支えてくれたんですよね。『りりあんが動けない間も世界中に頑張ってる人たちはたくさんいるし、今は休んでていいよ』って言ってくれて。自分のペースでいいんだって気づいてからは気持ちが軽くなったし、私、愛されてるんだなとも思った」

M「そうなの! 結局は愛なんだよね。大切な人が笑ってくれることが自分の幸せであるということ」

O「私が活動を続けている理由も人への愛があるから。これまでの資本主義は経済が中心で、人を分断していくことで利益が回っていくシステムだったけど、その結果、気候変動が起きた。これからは人と人、国と国同士が協力するしかない。逆にいえば、それしかもう道が残されていないというのはある意味、希望だなとも思う」

M「そうだね。ライバルじゃなくて、みんな仲間。経済最優先の、物質至上主義は終わり、これからはもっと自由に、ボーダーレスでクリエイティブな『愛』の時代に入っていくんだと思います」

特集「母なる森に呼ばれて」をもっと読む

Photo:Ayako Masunaga Text:Mariko Uramoto

Profile

松浦美穂Miho Matsuura 1990年に英国より帰国し、ヘアサロン「TWIGGY.」設立。雑誌、広告、ショーなどでも活躍。ヘアケアプロダクツ「YUMEDREAMING EPICUREAN」シリーズも手がけ、健康と美容、地球環境をテーマに活動の場を広げている。
小野りりあんLilian Ono 1989年青森県生まれ、札幌育ち。モデルとして活躍する一方で、環境アクティビストとして活動。ウェブメディア「Spiral Club」、アクティビストハウス「the roots」、オンラインプラットフォーム を「Green TEA」を設立。

Recommended Post

Magazine

#147_ec

June 2021 N°147

2021.4.28発売

Body Philosophy

からだのはなし

オンライン書店で購入する