イタリアワイン、家族の物語 【Vol.1】「Cusumano」兄弟で紡ぐシチリアのテロワール
新しい生活様式での限られた楽しみとして、ワインをよく嗜むようになったという声を耳にする。そのラインナップにぜひ加えたいのが、チャーミングで親しみを感じさせるイタリアワイン。それぞれのワインが生み出された背景にはどのような家族の歴史、脈々と受け継がれるものづくりがあるのか。月1回でお届けする連載の初回は、シチリアの「Cusumano(クズマーノ)」のストーリーをお届けする。
シチリアのテロワールとは?
イタリアは長靴に似た縦長の地形ゆえ、気候、環境も多彩で、土地により趣の異なるワインが生み出されている。このところ、そのようにワインが生み出される気候、土壌、地形といった自然環境要因=土地の個性が“テロワール”と表現され、大切な要素になっている。さらに風土や文化、造り手までも含めた概念とも考えられるようになり、テロワールという表現はワイン以外の食材でも使われるように。というように、今、テロワールは食材が生まれた土地という意味合いを超え、五感を刺激する世界観として重要なキーワードになっている。クズマーノ家のワイン造り
ほかのシチリアの生産者同様、クズマーノ家も祖父の代からバルクワインを製造。ワイン畑のなかで育った現オーナーのアルベルト&ディエゴ兄弟は自社畑で地元のブドウ品種を使い、家族の名前でワインを生産することが幼い頃からの夢だった。1994年、大学を卒業したばかりの弟、ディエゴが自社でのワインのボトル詰めを提言。そこからシチリア各地を訪れて、自分たちのプロジェクトに適した土地をリサーチ。若手醸造家とワイン造りをスタートし、名醸造家からもアドバイスを受けるなど研究を重ねた。農業を学んだ兄のアルベルトが生産と品質管理を行い、経済を学んだ弟のディエゴがマーケティングと営業を担当。兄弟それぞれに秀でた能力を融合し、伝統を大切にしながらも新しいチャレンジで「シチリアの土地をそのまま表現したワイン」を生み出している。
ワイン専門家も注目するエトナ山でのワイン造り
クズマーノは自社畑をシチリア各所に所有しており、その土地の個性を生かしたワイン造りを追求。フランス・ブルゴーニュ、イタリア・ピエモンテのランゲとともに世界三大テロワールのひとつとして、いま非常に注目されるシチリアのエトナ山にもブドウ畑を購入。2013年には「Alta Mora(アルタ モーラ)」というプロジェクトもスタートした。独自のネットワークを生かし、早くに情報をキャッチすることで、エトナ山のなかでも良質な北斜面に土地を確保したのだという。
現在クズマーノ ブランドでは、ネロ・ターヴォラ、インソリアなどシチリアの固有品種とシャルドネ、シラーなど在来品種のワインを16種類、アルタ モーラではネレッロ・マスカレーゼとカリカンテという固有品種のワイン5種類を日本でも展開。レストランはもとより、店舗やオンラインなどワイン専門店でも取り扱われており、コストパフォーマンスも高く人気となっている。
会社の顔でもあるディエゴに、コロナ禍での変化、気づきを聞いてみた。「ブランドの価値や外部とのつながりの大切さを再認識したね」先代からの家の教え「ベストを尽くすのみ」を胸に、今日もシチリアを映し出すクズマーノ独自のテロワールを探求している。
推しワイン、造り手のおすすめペアリング
Cusumano Jalé Sicilia DOC
クズマーノ ヤレ
色と果汁も濃く、南の太陽を十分に浴びたシチリアの恵みを享受できるシャルドネ100%の白ワイン。ヤレとはシャルドネ畑沿いの白っぽい小道の呼び名。本拠地のパレルモ近郊のフィクッツァの畑でつくられている。アルコール度は13.5%とやや高めで酸が優しい特徴を持つ。 750ml ¥3,500(参考小売価格)
ディエゴから、このワインに合うおすすめ料理:グリルしたマグロ
Alta Mora Etna Rosso DOC Guardiola
アルタ モーラ ロッソ グアルディオーラ
再注目されているエトナ特有の赤ブドウ品種、ネレッロ・マスカレーゼ100%。標高の高いエトナの火山性土壌から生まれる美しいルビー色のワイン。熟した果実のほのかな香りに始まり、魅力的なスパイシーさとミネラル感が熟した野イチゴの香りを際立たせる。広がりのある味わいは、上品かつコクがあり余韻も長い。 750ml ¥5,800(参考小売価格)
ディエゴから、このワインに合うおすすめ料理:ソーセージ、鶏肉のスチーム料理
Foodliner
Tel/078-858-2043
Edit&Text:Hiroko Koizumi