Culture / Feature

三原勇希、あっこゴリラ、長井優希乃インタビュー「コロナ時代の令和ギャルズ的メンタルヘルス」

ポッドキャストの人気番組『POP LIFE』でフェミニズムやルッキズム、ジャッジメントなどさまざまな社会問題について語り合ってきた三原勇希、あっこゴリラ、長井優希乃、通称“令和ギャルズ”。3人がメンタルクリニック並みにガチ語りをして作った書籍『令和ギャルズの社会学』を通じて、伝えたかったことを聞いた。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2021年4月号掲載)

左から長井優希乃、三原勇希、あっこゴリラ。
左から長井優希乃、三原勇希、あっこゴリラ。

“ギャル”はマインド

──三原さんはタレント/ラジオDJ、あっこゴリラさんはラッパー、長井さんは教育や芸術の分野で活動されていて、それぞれ別のフィールドにいますが、“ソウルメイト”と呼び合い、よく語り合っていますよね。共通点の一つは“漫画『GALS!』好き”だとか。

三原勇希(以下、M)「3人とも小学生のときに『GALS!』を読んでて、すごく好きだったんです。主人公の寿蘭は渋谷最強のギャルと呼ばれていて、破天荒なんだけど正義感が強くてかっこいい。そんな『GALS!』の続編が2019年に17年ぶりに出て、久しぶりに読み返してみたら本当に哲学書だなって。リアルな社会で散々悩んだり、迷ったりしてきたけど、根本的にはこうありたいなって思うことが描かれてて」

あっこゴリラ(以下、A)「『GALS!』はバイブルだよね。蘭ちゃんはもはや神として崇める存在」

M「『令和ギャルズの社会学』のタイトルを見た人に、『その歳でギャル?』って言われることもあるんだけどね」

A「私も『32歳? ギャルじゃないやん』って言われてびっくりしたことがある。“ギャルに年齢関係ない”って、まだ言わなきゃいけないのかーって」

長井優希乃(以下、N)「見た目がギャルじゃないとダメって人もいるけど、“マインドがギャル”っていう考え、アリだと思うな。私も“令和ギャルズ”と呼ばれてるけど、どちらかというと自分のことヒッピーだと思ってたし(笑)。でも、ギャルの媚びないところとか、自分が考える“正義”に向かっていく姿勢はすごくいいなって共感してる」

自分自身の弱さや辛さと向き合った過程を書籍に

──今回はそんな3人が書籍『令和ギャルズの社会学』を作ったわけですが、“エンパワーメント本を作りたい”という依頼に対して、話し合いを重ねるうちに、それぞれのつらさや弱さをさらけ出すこと、それが3人にとってのエンパワーメントになったと。

M「2020年は私自身すごく悩んだし、弱ったし、コロナ禍やBLMで、ますます人々の価値観の違いもあらわになって。そんな中で自分たちが発信できることって何だろうって考えたときに、あっこが「『病んでます』とか『マジで無理』と言えることを推したい」って」

A「私は去年本当に苦しくて、今までのような“つよつよマインド”ではいられなかったんですね。そんな私が、空っぽな前向き発言をしてもむしろ傷つくし、かといってネガティブだだ漏れも嫌気が差すし。だったらうちらが今、何がどうきついのかを言語化したかったんだよね」

N「それが、同じように一人でつらさや苦しさを抱え込んでいる人の力になるかもしれないねって」

A「そう。でも、だからといって “これからはつよつよマインドではなくて、お互い弱さを見せ合ってエンパワーメントしませんか”って提案をしたいわけでは全くなくて。この本では3人が何を考え、何に悩み、どう生きているのかをさらけ出したドキュメンタリーみたいな作りになっただけなので」

M「うん。みんな答えを求めず、赤裸々におしゃべりを続けていった本だからね。でもその形、その姿を読者の方に見てもらいたかった」

N「だから、本の捉え方も人それぞれでいいんです」

A「とにかく本づくりのときは、己とのセッションにトライし続けたよね」

──己とのセッションというのは具体的にどのようなことを?

A「まず、この本はhow‒to本ではないので、こうやったらいいよって方法を提示することはできないんですけど、私の場合は相手が放った言葉や態度に対して『ん?』って立ち止まることかなと。これまでは『仕方ない』で放り投げていたものをそうしないみたいな。誰でも壁にぶち当たる瞬間なんてたくさんあって、その時々で自分のせいにしたり、人のせいにしたり、システムのせいにして済ませることがあると思うんです。そのほうが楽だから」

M「うん。まさに私は当たり前とされていることに違和感を持ちにくいタイプだった。何か嫌なことが起きても“自分が悪いんだ”って思って“解決したふう”にしてた。でも、あっこや優希乃と話すことで、その思考回路から抜け出せたというか。モヤモヤをそのままにせず、きちんと言語化していくと、染みついていた固定概念が少しずつ壊れて、自分の心の声に自信が持てるようになった」

N「己との対話の仕方って人それぞれあると思うけど、私は意識的にしたことはないんだよね。今までいろんな国の違う文化を持った人たちの中に一人飛び込んで、彼らと生活を共にするということをやってきたから。そうすると自分の中の“当たり前”がぶっ壊され続けて、常に自分というものに向き合わなきゃいけなくなる。だから、自ずと己との対話はできていた気がする」

必死に生きたい私も、死にたくなる私も、本当の私

──本の中では、お金や仕事、パートナーシップなどさまざまな事項に対して3人が考えていることがすごく正直に書かれていました。特に「生きてるから、死にたくなる」という言葉が印象的で。

N「必死に生きていたら死にたくなることあるなと思ってて。私は人から“明るくてハッピーな人”だと見られているし、自分でもそう思うんですけど、その中に“死にたさ”みたいなものもあるんです。でも、それって言い出しづらいじゃないですか。そういうこと言っちゃうと“あの人、メンヘラなんだ”ってラベル貼られちゃって。いや、そうじゃなくて、生きたさも死にたさも両論併記できるってことを伝えたくて。人から見たら、自分の強いところやポジティブなところばかりがクローズアップされてしまいがちだけれど、もちろん弱い部分もありますよね。でも、弱い部分も隠すんじゃなくて、少しずつでも出していけたら楽になるんじゃないかなと思う」

──本の中でも、あっこさんが「一人の人間でも複雑で波がある」って話していましたよね。

A「今、フェミニズムにせよ、環境問題にせよ、人種差別にせよ、何かを訴えたら、“そういうカテゴリーの人”とラベルを貼ってしまいがちじゃないですか。私は“フェミニスト”としての言葉や行動を求められることが多くなって、そうじゃない部分を社会が許容してくれない感じがした。フェミニストが『フェミニスト、だるい』って思うことすら許されないというか。でも、だるいって思うのも本当の私だし。フェミニストかフェミニストじゃないのか、正義か悪か、女か男か、そういう二項対立の話はしたくない。私自身、男の瞬間もあるし、女の瞬間もあるし、どっちかよくわからないときもある。だから流動的でいいんじゃないかと」

M「考えも日々変わっていくしね」

N「うん。一人一人複雑で、尊い存在ということに変わりはないから」

わかり合うにはどうしたらいい?

──最近は他者とわかり合うことの大切さを説く風潮もありますが、三人はどう考えますか?

M「“わかり合う”に近い言葉でいうと“違いがわかる”ってことかなと思うんですよね。だから、私は“それぞれ違う”という前提で話をするようにしています」

A「私はそもそもわかり合わなくていいと思う。わかろうとするからトラブルが起きる。『なんでわかってくれないの?』って。わかり合えないことがデフォルトで、わかり合えたとしたらそれは勘違い。でも、その勘違いって超素敵なんじゃないって」

N「私の場合は文化人類学のフィールドワークとしてインドやマラウイなど、生まれ育った場所と全く違う環境で生活していたので、わからないことしかなかった。相手のことをどうにかわかろうと努力するんだけどわからない。でも、それって同じ言葉を話す日本人同士でも似たような経験すると思うんです。“わからない”って消化不良のような気持ち悪さもあるんだけど、それでもいいかなって。全部わかることって絶対にないから。海外にいたときは、わからないことも面白がることで、自分が救われたところはあるかも。それでも私は“わかりたい”と努力することはやめたくない。『この人訳わかんないから、とりあえずメンヘラのラベル貼っとこう』ってことをしたくないというか」

M「そうだね。私はどちらかというと自分の意見を言うのが苦手なタイプだったから、どんな人でも『私はこう思う』って違う意見を言いやすい環境を大事にしたい」

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A「うん。だから、わかり合えないままで全然いいと思う。私は“女子のムダ毛はダメ。脱毛一強”みたいな日本の広告に違和感があって、脇毛を生やしてたことがあるんだけど、それを見た夫に『やめて』って言われて。で私、号泣しちゃったんだよね。『他の人はわかってくれなくてもいいけど、なんでおまえはわかってくんないんだよ〜!』って。脇毛についてはお互いわかり合えなかったけど、別に離婚とはならないし(笑)。だから、わかり合わなくても共存できる。多様性を尊重するって要するにそういうことで、それぞれ信仰している神は別々だけど手をつなぐ、みたいなことかなと」

M「うん。バラバラなままでも共存していきたいし、できると思う。私たちだって考え方や性格は三者三様だけど、仲いいし」

N「いいバイブスで会話が弾むときもあるし、そうじゃないときもある。でも、それぞれ尊い存在で、リスペクトする気持ちは変わらない。そういう3人が内面をさらけ出して一冊の本を作り上げた。これも一つの共存のあり方かなって思います」

令和ギャルズって?

三原勇希が田中宗一郎とパーソナリティーを務める人気ポッドキャスト番組『POP LIFE:The Podcast』に、友人であるあっこゴリラ、長井優希乃がゲスト出演したことを機に漫画『GALS!』に影響を受けた第3ギャル世代の彼女たちを「令和ギャルズ」と田中宗一郎が命名。2020年1月27日に番組発の公式本として『令和ギャルズの社会学』(主婦の友社)を発売した。

PROFILE

長井優希乃
Yukino Nagai

ヘナアーティスト、芸術教育アドバイザー、生命大好きニスト。京都大学大学院修了後、JICAにてマラウイ共和国に派遣。現地の小学校で芸術教育アドバイザーを務める。『集英社新書プラス』にて「バイブス人類学」を連載中。

三原勇希
Yuuki Mihara

タレント。雑誌『ニコラ』でモデルデビュー。音楽、スポーツ、ファッションなど多趣味を生かし、ポッドキャストや雑誌、テレビなどでマルチに活躍中。ランニングコミュニティを主催しスポーツを通して女性が輝く場を創出。2021年4月から始まるラジオ番組『N-FIELD』(NACK5)のメインパーソナリティに就任。

あっこゴリラ
AKKOGORILLA

ラッパー。社会にはびこる“当たり前”の概念に一石を投じる曲を次々と発表。valknee、田島ハルコらと「Zoomgals」としても活動。J-WAVE「SONARMUSI C」のメインナビゲーターを務める。

Interview & Text:Mariko Uramoto Edit:Mariko Kimbara

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