Art / Feature
心打つ虚構(フィクション)は時として、現実の見え方さえも変えてしまう。発端は2017年、ニューヨーク在住のワリー・コーヴァルがウェス・アンダーソンの映画作品に出てきそうな建物の写真をたまたま(Accidentally)目にしたこと。左右対称の造形、レトロなデザイン、パステルカラーの色づかい、作り込まれた構図──。彼は「旅行に行きたい場所のリスト」として“ウェスっぽい”風景の写真を集め始める。
『ウェス・アンダーソンの風景』
突出した美意識で人々を魅了してきたウェス・アンダーソン。彼の映画に出てきそうな風景を楽しむコミュニティが、まさかの本人OKで書籍化。現実×想像力で織りなす冒険の旅へ、ようこそ!(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2021年3月号掲載)
見開き中面より。(左)KAYAK ON LAKE TEKAPO Mackenzie Country, South Island, New Zealand Photo by Frida Berg @ friiidaberg fridaberg.com (右)FISHINGBOAT Leigh, North Island, New Zealand Photo by Petra Leary @petraleary petraleary.com
掲載作品より。SKYLINE Willemstad, Curaçao Photo by Jeffrey Czum @jeff reyczum
見開き中面より。MALLEY’S CHOCOLATES Cleveland, Ohio Photo by Aubrey Meadows @AubreyMeadows
掲載作品より。AMER FORT Rajasthan, India Photo by Chris Schalkx @chrsschlkx ricepotato.co
すると世界中から続々と情報が寄せられ、インスタグラムのフォロワー130万人以上を擁する人気コミュニティ「Accidentally Wes Anderson」に発展。ウェスの偏愛と美意識が生んだ世界観に触発されて人々の想像力(イマジネーション)に火が付き、現実世界を見つめ直す新たな気運をもたらしたのだ。その書籍化にあたり、ウェスはこうメッセージを寄せている。「本書におさめられた写真は、ぼくが出会ったこともない人々が(中略)撮ったものだが──実際、ぼくが撮りそうな写真だ」(序文より抜粋)。『ムーンライズ・キングダム』のような小屋、『ダージリン急行』を彷彿させる列車、『グランド・ブダペスト・ホテル』を思わせるアールデコ建築 etc.。現実の光景と人々の想像力が織りなす冒険の旅へ、さあ出かけよう。
掲載作品より。Hotel Sacher Vienna, Austria Photo by Paul Bauer @papapaulbauer photo.paulbauer.net
『ウェス・アンダーソンの風景』
著/ワリー・コーヴァル
訳/樋口武志
定価/¥3,500
発行元/DU BOOKS
URL/https://diskunion.net/dubooks/ct/detail/DUBK288
Edit & Text : Keita Fukasawa