新・食習慣 フレキシタリアンにTRY! Vol.1 エスニック編
新しい生活様式ともに、食への興味は深まる一方。けれどもう美味しいだけでは、心が満足できなくなっているよう。健康のことはもちろん、環境へ配慮しているかどうか、ファッションと同様に食にもサステナブルへの意識が高まっている。そこでストイックにヴィーガンに転向とまではいけないけれど、まずはプラントベース(植物由来の食品)で時々は肉や魚も食す、ゆるベジタリアン=フレキシタリアンから始めてみない? という短期連載がスタート。第1回は晩夏にぴったりなエスニック編。
スパイス香る、中東風ベジタリアン料理「Salam」
NYの三ツ星レストラン、Jean-Georges本店で、日本人で初めてスー・シェフを務め、昨年末には書籍「ヴィーガン ・レシピ」(柴田書店)を上梓した米澤文雄シェフによる「Salam(サラーム)」。7月、広尾にオープンしたばかりの“EAT PLAY WORKS”がコンセプトの複合施設内に店を構える。アレルギーによってヴィーガンに転向する人が増えた2005年頃のNYで研鑽を積んだ経験から、「肉じゃなくても野菜が美味しい」と知ってもらうために、野菜の味わいを最大限に引き出す加熱調理にこだわる。さらにスパイスやフレーバーが印象的なレバノン、エジプト、トルコなど旧オスマン帝国の国々の料理にインスパイアされたシンプルかつ大胆なメニューは、野菜だけで視覚も味覚も十分満足できると教えてくれる。 写真上は、中東料理の定番、ペーストしたひよこ豆にコリアンダー、クミンなどを加えて揚げたフェラフェルは旬の枝豆を加えて。フムスのソースには色的にも映えるビーツ、そして黒ごまペースト、ブラックタヒニを添えている。人参の甘みに驚く一皿。こだわりの有機野菜で知られる茨城の久松農園から仕入れているという。火を入れた白桃の甘さのアクセントと、キプロスの塩漬けチーズ、ハルミチーズの塩味のコントラストが絶妙。中東のミックススパイス、ザタールを効かせ、ディルやミントが爽やかに香る。
ペアリングにおすすめなのは日本酒とか。ぽん女会を主宰する近藤淳子さんのセレクトで、宮城の伯楽星、石川の天狗舞などが揃う。もちろんビオワインもラインナップ。
Salam
EAT PLAY WORKS 1F / THE RESTAURANT
住所/東京都渋谷区広尾 5-4-16 GEMS HIROO CROSS 1F
営業時間/11:00~14:30(L.O.13:30)、17:30~23:00(L.O.22:00)
定休日/無休
※〜8月31日は22:00(L.O.21:00)木曜休
URL/http://salt-group.jp/shop/salam/
*予約対応はWebのみ
野菜たっぷり「BANDARA LANKA」のスリランカプレート
バターや生クリームなど動物性油脂を使うことが多いインドカレーに対し、具材は野菜たっぷりで、ココナッツオイルやミルクとプラントベースで仕上げるスリランカカレーは、ヘルシーなことでも人気。それもそのはず、スリランカ料理は朝食はたっぷり、昼、夜と量を減らして食べ、温かい飲み物で体を冷やさないというアーユルヴェーダの予防医学に基づいているのだ。
2018年10月のオープン以来、カレーマニアの間で一目置かれる名店が「BANDARA LANKA(バンダラランカ)」。
ランチはブッフェ形式だったが、コロナ禍の現在はこのスリランカプレートで提供。高級玄米のスリランカ赤米とターメリックライスの周囲に、具材に合わせトータル30種類以上のスパイスで煮込んだレンズ豆、長ねぎ、大根、かぼちゃ、ビーツ、春菊のカレーや副菜、そしてココナッツのふりかけ、ポルサンボルと、豆のおせんべい、パパダムが添えられている。
チキンが使ったカレーが一品と鰹節に似たモルディブフィッシュが出汁に使われているが、フレキシタリアンならこれも我慢する必要なし。上品で繊細な味わいに定評のあるスリランカの紅茶、JAF TEAとともに味わってほしい。
BANDARA LANKA
住所/東京都新宿区大京町12-9 アートコンプレックスセンター1F
TEL/03-6883-9607
営業時間/11:00~14:30(L.O.14:00)、17:00~21:30(L.O.21:00)
定休日/月
※8月25日まで伊勢丹新宿店B1Fの「ISETAN カレーフェス 2020」に
出店(テイクアウト)のため、店舗での通常営業は8月27日から。
URL/https://www.bandaralanka.jp
「Los Barbados」エキゾティックな野菜のアラブ風前菜
アフリカ、カリブ&アラブ料理、そしてヴィーガン&ヴェジタリアン料理でも知る人ぞ知る存在が奥渋で10年以上愛される「Los Barbados(ロス・バルバドス)」。カウンターだけの小ぢんまりした店内は、移民の多いパリの18〜20区を思わせるエキゾティックな雰囲気。あまり馴染みのないアフリカ料理は東西南北と中央部など地域によって異なるそうで、コンゴ音楽からこの道に入ったご主人のアフリカ愛とともに食文化もさり気なく伝えつつ提供している。女将曰く「美味しいと思って食べているうちに、気がつくと“うっかりヴィーガン”という常連さんも多いんです」。
訪れる人がほぼオーダーするのがアフロ・ヴィーガンコース(2人用¥5,500)にもラインナップされている、このヴェジタリアン・マッツア。レバノンなどアラブに影響を受けた北アフリカの前菜盛り合わせ。所沢の月野原農園に栽培を託しているニガナスの一種、コンゴのナス、ボマをトマトで煮込んだ夏限定の一品は、そのトロリとした食感がクセになる味わい。アフリカでよく食される黒目豆をハバネロと塩こしょうで味付けしたセネガル風サラダや紫キャベツのマリネ。そして挽き割り小麦、ブルグルとベジミートで作ったキッべとひよこ豆のファラフェルに添えているヨーグルトソースも豆乳が使われている。ビオワインが予定以上に進んでしまいそうな一皿だ。
Los Barbados
住所/東京都渋谷区宇田川町41-26 パピエビル104
TEL/03-3496-7157
営業時間/11:30〜21:30(L.O. 21:00)(月〜18:30 L.O.18:00)
定休日/日
URL/https://www.facebook.com/losbarbados.shibuya/
Photos:Shuichi Yamakawa Edit&Text:Hiroko Koizumi