悠久の時を紡ぐ オートクチュールの世界 vol.1 Chanel
世界の情勢が大きく変化するいま、時間やものの価値が見直され、ふるいにかけられている。そんなときこそ、モードに寄り添う純粋な心と作り手の情熱に立ち返りラグジュアリーの本質に迫りたい。時や美学にまつわる数字を切り口にエレガンスの原点であるオートクチュールのいまを探る。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年7・8月合併号掲載)
CHANEL
パリ・モードの原点、ガブリエルの真髄を今に
クチュリエとしてのタフさとエネルギッシュなマインドで発想を広げ、新時代を切り開いた創業者、ガブリエル・シャネル。オートクチュールのデザイナーとしてキャリアをスタートさせた彼女の想いは、現在ヴィルジニー・ヴィアールに託されている。就任2シーズン目となる2020年春夏コレクションの舞台は、ガブリエルが幼少期を過ごしたオバジーヌ修道院を再現したもの。ステンドグラスや廊下に描かれたモチーフなど、シャネルのスタイルコードを形成する上で最も重要な場所にフォーカスした。丁寧にひと針ずつパーツを縫い重ねる刺繍専門のアトリエでは、クリエイションに対する徹底した姿勢と技術でメゾンの精神を引き継いでいる。
1450 hours
シルク地のドレスにかけられた総製作時間は1,450時間。1万個のスパンコールを用いて植物標本のように花の刺繍を施している。スカートには9,000個ものスパンコールを使った小花が。いずれも職人の手仕事によるもの。
Photos : Official Photos, Aflo Edit&Text:Yuko Aoki