Culture / Feature

入江悠監督インタビュー「ミニシアターを救うために私たちができること」

新型コロナウイルスの感染が広がる中で、街からは人が減り、多くの業種に深刻な影響を与えている。"街の小さな映画館"であるミニシアターもそのひとつ。シネコンでは上映されないような、世界各地の良質な映画や、過去の名作などを上映し、日本の映画文化を下支えするミニシアターの多くが、いま存続の危機に瀕している。

多くの映画人が賛同する「ミニシアターを救え!」プロジェクトとは

このままでは、日本からミニシアターの灯が消える。その状況に強い危機感を覚えた映画人たちは、すでにミニシアターを救うべく行動を開始している。映画監督・入江悠もその一人だ。入江は、自身のブログで支援を必要とするミニシアターのリストと、支援の方法を独自にまとめて公開。現在は、相前後して立ち上がった活動「#SaveTheCinema」の呼びかけ人の一人として、メディアやSNSを通じてミニシアター支援に関する情報発信を積極的に行なっている。そんな入江に、ミニシアターとはどのような場所で、なぜそれが必要なのか。そして、ミニシアターを救うために我々ができることはなにか。濃厚接触を避け、スカイプで話を聞いた。

入江悠が語る、ミニシアターと映画の多様性の関わり

──ミニシアターに対する支援活動をはじめたのは、どのようなきっかけでしょうか?

「都内でも映画館がどんどん一時閉館へと追い込まれる流れになったとき、なにかミニシアターを支援できる方法はないかと探したら、意外と情報をまとめているサイトがなかったんです。そこで、情報をまとめるだけでも誰かの助けになるかな? と、記事を作成したら大きな反響があって、そこから#SaveTheCinemaの活動と合流していったという流れですね」

──映画を観る場所としてはシネコンが一般的ですし、配信もあります。ミニシアターにこだわる理由は?

「まず、自分ごとでいうと、僕自身ミニシアター発でキャリアをはじめた監督なんです。以前のように助監督から監督になるという道がかなり狭まっていて、自主映画を作ってミニシアターで上映し、監督として認知されるっていうのが8、9割を占めています。たとえば『カメラを止めるな!』(2017)の上田慎一郎監督も#SaveTheCinemaに賛同している一人ですが、僕の『SRサイタマノラッパー』(2009)も『カメ止め』もミニシアターがなければ上映できていません。いま、映画監督として活動できていなかったかもしれません。

そして、地方からミニシアターが消えると、多様な映画を観る機会が失われます。とくに非・アメリカ映画ですね。ヨーロッパの映画、南米の映画、アジアやアフリカの映画のほどんどが、シネコンではかかりません。世界の良質な映画のほとんどを、日本人が劇場で観られなくなってしまうんです。東京ではミニシアターがいくつもありますが、地方では県にひとつしかないということもよくありますから、その地方ではシネコンでかかる映画しか観られない、という状況はすぐそこにあるんです。

たとえば、『レ・ミゼラブル』(2019)というフランス映画があります。有名なヴィクトル・ユーゴーの小説にヒントを得たっていう現代劇で、フランスの貧困地区を描いているんですが、この映画は地方のシネコンではほとんどかかりませんでした。でも、この映画はカンヌ国際映画祭で審査員賞っていう大きな賞をとっているんです。そういう映画でもミニシアターがなければ観られない。

僕は、映画は世界を見晴らすための窓だと思っています。シネコンは、たとえるならとっても大きな窓ですよね。でも、家に窓がひとつしかないと困るじゃないですか。ほかにも窓があったほうがいい。正面の窓からは山が見えるとする。でも、実は反対側には海が広がっているかもしれない。それも、窓がなければ見ることができません」

──ただ、意地悪なようですが、現代では劇場に行かずとも配信で観られるのでは? という気もしてしまいます。劇場で観るのと、配信で観るのでは何が違うのでしょうか。

「音楽であれば、やはり配信で聴くのとライブで聴くのとでは違います。映画も同じで、配信で観るのと映画館で観るのは大きく異なるんですね。たとえば、お子さんのいる家庭でいえば、公園に近いかもしれません。『公園がなくても、家でも遊べるからいいでしょ?』と言われても、きっと困りますよね。そういう問題じゃない。音楽でいえばライブハウスですし、映画でいえば映画館は、自分も社会の一員なんだと認めてくれる場所という側面があると思うんです。家で一人で音楽を聴いたり、映画を観るのとは、体験の質として根本的に違うんです。

それに配信の場合は、自分の好みの映画ばかりを推薦してくれて、知らない間に偏った映画しか観ないということにもなりかねません。私は日本文学が好きだから、海外文学はひとつも読まないっていうのはちょっともったいないのと同じで、映画の多様性に触れることって、すごく豊かなことだと思うんです。たとえば映画を見てその映画が撮られた国に興味を持って、旅してみたいと思うとか。描かれた職業に憧れて、その職業を目指すとか。そういう作用って、映画館で観てこそ起こると思うんです」

──なるほど。では、ミニシアターを守るために、私たちができることはどんなことでしょうか?

「多くのミニシアターが一時閉館していますから、映画館に行けない代わりに、各映画館がやっているクラウドファンディングや通販、それと年間パスなどを買ってもらいたいですね。未来のチケットをいま買っておく、というか。映画館は固定費がかかるので、閉めていてもどんどん赤字になっていくんです。現金収入が入ってくると、ひとまず家賃が払えます。

いいな、と思うのはミニシアター同士の連携がはじまっていること。たとえば関西のミニシアターが連携して、Tシャツを発売しています(※詳細はこちら)。そして、その売上は参加したミニシアターに還元される。普通にオシャレなデザインですし、映画館がオープンした後でそれを着て映画を観に行くなんてすごくいいんじゃないかなと思います。同じTシャツを着てる見知らぬ人同士で、『私たち、この映画館を守ったね』って連帯感が生まれるかもしれません(笑)」

「自分の街の映画館とか、好きな映画館、いつか行ってみたい映画館でもいいですし、『ここの映画館を応援したい』と思うミニシアターをなんらかのかたちで支援してもらえたら、ありがたいですね」

#SaveTheCinema 「ミニシアターを救え!」プロジェクト
公式Twitterはこちら
https://twitter.com/save_the_cinema

支援が必要なミニシアターの一覧
入江悠公式ブログhttp://u0u1.net/v33Xより

Interview&Text:Takako Sorbonne Edit:Chiho Inoue

Profile

入江悠Yu Irie 1979年、神奈川県生まれ、埼玉県育ち。03年、日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。09年、自主制作映画『SR サイタマノラッパー』がミニシアターを中心に大きな話題を呼び、のちメジャーデビュー。最新作は『AI崩壊』。

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