LVMHが展開する世界最上リゾート、モルディブの「シュヴァル ブラン ランデリ」へ【前編】 | Numero TOKYO
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LVMHが展開する世界最上リゾート、モルディブの「シュヴァル ブラン ランデリ」へ【前編】

スリランカの南西、インド洋に浮かぶ約1,200の島々と26の環礁からなる共和国、モルディブ。そのリゾートは多くがワンアイランド、ワンリゾートという逃げ場のなさ、何より透明度が高い水色の海があまりに甘美なせいで、それこそハネムーンや蜜月段階のパートナーとの旅での機会を逃してしまうと、その後のバカンスで候補に挙がることはもしかしたら少ないかもしれない。

そんななかで酸いも甘いも知った大人の二人だからこそ、いや、もっと言うなら、全方位にラグジュアリーの場数を踏んだスタイリッシュな旅人にしか味わい尽くせないリゾートが、「CHEVAL BLANC RANDHELI(シュヴァル ブラン ランデリ)」。 それもそのはず、ここはルイ・ヴィトンをはじめ約70のブランドを保有するLVMHのホテルマネジメントが手掛け、今回の滞在をSNSで投稿したら、世界のリゾートを飛び回る百戦錬磨のトラベルジャーナリストから「CHEVAL BLANC最強!」とわざわざコメントがあったほど。いわゆるホテルチェーンとは成り立ちから一線を画し、LVMHが本気のクリエイティビティを発揮したプレシャスなリゾートだ。 今回はシンガポールでトランジット、辿り着いたモルディブの首都マーレの国際空港から、水上飛行機専用のターミナルへ。そこから北に150㎞、島が現れるたびにその周りに広がる環礁の神秘に目を奪われること約45分。リゾートの名前にも冠されているメイン アイランドのランデリ島に到着。シュヴァル ブラン ランデリがあるヌーヌ環礁は近年になって観光開発が始まったばかりで手付かずの自然が残るとされ、海の青さもことさら無垢に感じられる。

©Cheval Bland Randheli
©Cheval Bland Randheli

リゾート専用の水上飛行機は、パステルイエロー×トープというシュヴァル ブラン ランデリのツートーンカラー。

デッキに降り立つとスタッフ総出で出迎えを受け、極めてスムーズなチェックインを経た後、滞在中の相棒とも言うべきマジョルドム(フランス語で「執事」を意味)が運転するカートで、早速ヴィラへ。

ちなみにシュヴァル ブラン ランデリの建築デザインを手掛けたのは、Jean-Michel Gathy(ジャン=ミシェル・ギャシー)。モルディブではやはり最高級クラスで北マーレ環礁に位置する「ワン&オンリー リーティラ」、他にも2020年にオープンするNYを含む数々のアマンリゾートやあのマリーナベイ・サンズも設計した、言わばリゾート建築のレジェンドだ。今回は点在する46棟のヴィラのうち、スタンダードタイプといえる240㎡の「ウォーター・ヴィラ」に滞在。足を踏み入れると、カテドラルに着想を得た天井高7メートルの圧倒的な開放感が、一気に非日常に誘ってくれる。手前のリビングルームからは、ベッドルーム、さらに奥のバスルームまでが見渡せる一方で、空間の境目に存在するルーバーを全て閉め切ると、それぞれが独立した個室に。建築や特注家具には、ディテールにチークやラタン、バンブーやヤシ、ココナッツや貝殻といったインド洋の素材が用いられていて、もれなくハイセンス。

NYの現代アートギャラリーで世界でも指折りのコレクションを誇るガゴシアンのクォータリーマガジンがさりげなく置かれていたり、アートが置き去りにされていることもない。

ベッドには「リネンの交換は不必要」のメッセージを伝えるランデリ島をかたどった小さなクッション、写真だけでも上質さが伝わるはずの数種のピローには、それぞれ「Shape memory」「Unique」「Happiness」「Beauty」といったメッセージが。どれを選択しても、今宵は素敵な夢を見られそうな気持ちになる。

そして窓の外にはプライベートのインフィニティプールからのオーシャンビュー!

デッキのステップを降りればそのまま海に入ることもできるのと、たまにサメの赤ちゃんがやってきたりも。とはいえ、我がマジョルドムによると「ベイビーシャークはデンジャーじゃない」そうな。そう、彼らは大半がモルディヴ人で、なかには「隣の島で育ったんだ」なんて人もいて、朝の空模様を見ただけで「午後から雨が降るよ」と教えてくれたり、生物や天気とともに生きて来た頼もしさと文明より自然を愛でるあり方は、こちらを本来の人間へと回帰させてくれるものがあった。

さらにワークデスクからは静寂の海を眺めることができて、万が一持ち込まざるを得なかった仕事があったとしても、自然のパワーから新たなインスピレーションを得ることができるはずである。

やはり海を望むパウダールームは、バスタブとシャワーブースを挟んだ反対側にパートナー用にもうひとつが独立してレイアウトされ、なんでもかんでも横並びじゃない、程良い距離感がある大人カップル仕様。

ドレッシングルームの収納もやはり向かい合って全く同じタイプのものがレイアウトされていて、次にここに来るときの旅の連れはTPOごとにファッションを着替えることができる粋なパートナーじゃないと! という妙な決意が生まれたりも(笑)。

他にも海を眺めるカウチの横のロッキングチェアにはこれも一目で上質なキャンバス地だとわかるオリジナルのビーチバッグが置かれていて(室内にあったレターには「持って帰りたい場合は、マジョルドムに一声を」とあった)、リゾートのロゴ入りエスパドリーユはNYのニットブランド「ARTESANIA(アルテサニア)」のハンドメイド。こうしたセンスにもラグジュアリーブランドを束ねるLVMHクオリティが感じられ、高揚感が増す。

こちらは夜のバスルーム。ディナーから戻るとキャンドルが灯され、壁面に掲げられているパリの現代アーティストVincent Beaurin(ヴィンセント・ビーオーリン)による砂を素材した円形の作品も、昼とは違うドラマティックな趣が。

さらにアメニティはというと、シャンプー&リンスにはフランスでナチュラルなヘアケアの先駆的ブランド「Leonor Greyl(レオノール・グイユ)」を、ボディケアのプロダクトにも全てナチュラル・シルク・プロテイン入りと明記。ミネラルウォーターは基本的に瓶詰めで、ノーペットボトルの姿勢も徹底されていた。

ところでランデリ島にあるコンセプトストアには、前述のヴィンセント・ビーオーリン×LVMHファミリーの「HUBLOT(ウブロ)」によるリミテッドエディションのウォッチや、「EMILIO PUCCI(エミリオ・プッチ)」のスイムウェアやリゾートドレス、さらにハイジュエリーやメンズのアイテムも品揃え豊富で、こなれたセレクトもがさすが。「持ってきた服がちょっと違ってて、気分がアガらない(涙)」なんてときにここに駆け込めば、その後のビーチライフにもリッチに重宝するショッピングができること間違いなし。

余談だが、私はこの特大アメジストのリングにうっかり心惹かれ、最後まで買おうか買うまいか悩んで、結局、決断できずに島を去った次第…。

ちなみにLVMHクオリティという点では、メインアイランドのランデリ島のすぐ目の前に、「GUERLAN(ゲラン)」のスパ ・アイランドも存在する。

文字通りゲランの最高級プロダクトを使い、シュヴァル ブラン ランデリのためにカスタマイズされたボディ・トリートメントやアンチエイジングのスキンケア(施術体験に関しては爆睡してしまいほとんど記憶がないという失態…)、ヨガやピラティスはグループレッスンと予約制のプライベートセッション、瞑想プログラムや常時1組のゲストだけが利用できるハマムも完備している。

ゲランといえばもともとフレグランスのメゾンとしてスタートしたことで知られるが、モルディブで島と島を行き来する“ドーニー”と呼ばれる伝統的な帆船に乗り込んでスパ ・アイランドに上島するとすかさずウェットタオルが出てきて、そこにシュッと香りを吹きかけられるというスタイルもそのDNAを伝えるものだったのと、この儀式はシュヴァル ブラン ランデリのどのレストランに行っても徹底されていた。

スパ ・アイランドのインフィニティプールに面した「SPA BARS(スパ ・バー)」は、シュヴァル ブラン ランデリにある5つのレストランの中で最もヘルシーなメニューに特化していて、「旅から帰った後はいつも体重が増えてなかなか戻らない」という非常事態が容易に想定されたり、普段から高タンパク低糖質を徹底している貴女には強い味方に。

そうしてスパ ・アイランドからメインアイランドへ、船着場で待ち構えていた我がマジョルドムのカートでヴィラへ戻ると(そう、ここでは各パートの担当者がゲストの動きを連携して知らせ合っているため、自分から誰かを呼んだり何か欲しがったりしなくても、常に先手のサービスが差し出される)、エントランスの脇に、小さな入り江に至る可愛らしい道しるべを見つけた。うっかり見逃しそうなささやかさが大人でも照れずに「行ってみようかな」と思わせてくれて、いちいち気が利いている。

その後、今回は取材ということもありジェネラルマネージャーからの手紙とともにシャンパンクーラーに差し入れてあったLVMHが誇る「RUNART(ルイナール)」のブラン・ド・ブランの栓を開けて、徐々にピンク色の面積を変えながら暮れゆく空を見ながら、プールに併設したアウドドアリビングに居座り興奮で乾いた喉を潤す。嗚呼、至福とはこのこと。

ヴィラのワインセラーには赤だけでこのラインナップ。それなりの知識がある大人なら、スペシャルなヴィンテージワインの栓を開けるという享楽も。

いやぁ、生きていると本当にたまに、ご褒美みたいなことがあるんだなぁ(ベタだけど笑)。

決して単純なLVMHの礼賛ということではなく、そこにあるのはラグジュアリーでありながら金満とは無縁の最上のクリエイティビティ。その価値がわかる大人になったこれまでの旅の失敗もあらゆる人生の経験も肯定できるような滞在は、ここからのリゾート体験においても、より確かな審美眼を与えてくれるはずだ。

シュヴァル ブラン ランデリ

フランスのクーシュベルに次いで、2番目のシュヴァル ブランとして2013年に誕生。その後、フランス・サントロペ、カリブ諸島のセントバース島にもオープン。2020年春にはパリの老舗百貨店サマリテーヌの改築オープンに伴い、その上層階にも開業が予定されている。
https://www.chevalblanc.com/en/

Edit & Photos:Yuka Okada

Profile

旅した人:岡田有加Yuka Okada 編集者・プロデューサー。『anan』編集部で学び、石川次郎氏に師事。ジャンルを問わないアーティストとの交流と人軸をベースに、ラグジュアリーブランドからカルチャーまで、雑誌と書籍を故郷に、TVプログラムやムービーなどの多彩なメディアおよびプロジェクトに参画。近年企画編集を手掛けたものに、映画プロデューサーで作家の川村元気著のいずれも対話集『仕事。』(単行本/集英社・文庫版/文藝春秋)と『理系に学ぶ。』(ダイヤモンド社)、俳優・小関裕太の写真集「Kiitos! Yuta Koseki in Finrand」(アミューズ)ほか。2017年からGINZA SIX発行のマガジン『GINZA SIX magazine』の編集長も担い、『Numero TOKYO』では長期にわたる連載「見城徹の五つの場」「松浦勝人の徒然なるままに…」も担当、他誌でも多数の連載を持つ。なお、趣味の旅では一つのシティに滞在しながらも気になるホテルに転々と滞在するホテル・ラバー。

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