健康寿命を伸ばす⁉︎ 小顔効果⁉︎ 進化する最新デンタルケア
口内環境が体の健康にも大きく影響するという事実がクローズアップされる昨今。健康な歯は人生のQOLを高くし、また正しいケアの継続で小顔になったりと美容的にもいいことづくし! いますぐ、毎日のデンタルケアをアップデートして。(「ヌメロ・トウキョウ」2018年6月号掲載)
“歯周病という炎症”が全身を蝕んでしまう!?
今、世界的に注目されているのが歯周病と全身疾患の関係性。とりわけ糖尿病に関しては相関関係が認められている。それは歯周病菌に対する免疫反応から生じる炎症物質・サイトカインが、血糖値を下げるために欠かせないインスリンの働きを阻害するため。血糖値が高い状態では、免疫力が下がって細菌が繁殖しやすくなるので、余計に歯周病になりやすくなるという負のスパイラルが生まれるのだ。
また、公益財団法人ライオン歯科衛生研究所が日本大学歯学部と共同で、歯周病とメタボリックシンドロームとの関係性を4年間にわたって追跡調査したところ、4mm以上の歯周ポケットがある人は、ない人に比べてメタボリックシンドロームを発症するリスクが高まることが分かった。
歯周病と心臓疾患、動脈硬化、骨粗鬆症、誤嚥性(ごえんせい)肺炎の関係も取り沙汰されている。オーラルケアクリニック青山の若林健史氏は歯周病菌が体内に広がるリスクを指摘する。
「ばい菌の塊である歯垢が歯と歯茎の間に付着すると免疫反応が起こり、血液中の白血球が毛細血管を介して歯茎に集まってきます。このとき、毛細血管は太く、血管の壁は薄くなって破裂しやすくなり、裂け目から歯周病菌が血液に入って全身を巡る危険性が生まれる。血管壁に細菌が付いて血栓となり、動脈硬化や脳梗塞を引き起こすことも考えられます」
さらに、歯周病になると陣痛を引き起こすプロスタグランジンが体内で過剰に分泌されるため、早産を助長するリスクもあるという。歯周病にならないことが、いきいきと健康的でいるためのキーであることが、次々と明らかになっているのだ。
歯のケアとは、つまり「リスクコントロール」
口腔内の環境は千差万別、自分に合ったケアでリスク回避を
一度削った歯が、もう二度と元に戻らないのは周知の事実。誰もが子どもの頃から繰り返し言われてきたことかもしれないが、デンタルケアこそ予防がものを言う。では皆が皆、同じケアに取り組めばいいのだろうか。公益財団法人ライオン歯科衛生研究所・歯科衛生士の藤春知佳氏は、自分の口内環境やどんなリスクが高いタイプかを把握し、適切なケアを選ぶことによって、よりよい状態を維持することにつながると語る。
「一人ひとりの歯科疾患に対するリスクを科学的に把握し、未然に防ぐリスクコントロールが大切。その人ならではのリスクを考慮しながら予防と治療を行うという考え方を『リスクコントロールデンティストリー』と呼びます。口の中の状況や生活習慣などにより、個人によって優先すべき予防ケアは変わってきます。特に30代の約8割がかかっているともいわれる歯周病に関しては、早い段階で気づけば専門家の指導に基づくセルフケアだけで健康な状態に戻すことができるのです」
リスクコントロールの第一歩、自分の口の中の状態を知るためには歯科医院でのチェックが欠かせない。一般の歯科検診で行われる歯や歯茎、歯石の有無やレントゲン撮影による骨の状態の検査に加え、唾液の分泌量や総細菌数などの検査をすると、口腔環境をデータとして把握できる。
「検査の結果から見えてくるリスクに応じたセルフケアを取り入れて。歯周病のリスクが高い人なら、歯茎の境目の歯垢をしっかり落とすことができるよう、歯と歯茎の間にある歯周ポケットにアプローチしやすい極細毛の歯ブラシや歯周病菌を殺菌する成分が入った歯磨き剤を選ぶのがおすすめです。虫歯のリスクが高い人なら歯の表面に付いた歯垢をしっかりとらえられるフラットカットの歯ブラシやフッ素入りの歯磨き剤が適している。さらに、むし歯になりやすい歯と歯の間にはデンタルフロスを使うことも有効です。また、口の中のケアだけでなく、間食のとり方を注意するなど、生活習慣を見直すことも大切」
口腔疾患のリスクが最も高まるのは就寝中。唾液の分泌量が減り自浄作用が低下するうえに、口腔内の温度・湿度が一定に保たれ、細菌が増殖しやくなるためだ。夜は特に念入りに、リスクを意識したケアを行うべきだという。
「研究者の発表(老年歯科医学会第3巻1号1989)によると、担当歯科医師の指示通りのメンテナンスを継続し、リスクコントロールしている女性としていない女性が1年間に失う歯の平均は、メンテナンス継続者が約0.1本なのに対し、痛いときだけ歯科医院に行く人は0.3本という結果に。免疫力や女性ホルモンの低下、唾液量の減少により加齢とともに口内疾患リスクは増しますが、リスクを把握し、定期的なメンテナンスと自分に合ったセルフケアを行なうことで、美しい口元を生涯保つことができるのです。身だしなみのひとつとして、エステに行く感覚で歯科医院に行くことをおすすめしたい」
セルフ・リスクチェック
日々のセルフチェックも口腔内を美しく保つ鍵。該当する項目があったら早めに検診。
□最近、歯が長くなってきた
□歯の表面を舌で触るとザラつく
□歯を磨くと出血する
□起床したとき口の中が粘つく
□歯茎が赤黒っぽい
□口臭が気になる
□歯と歯の間に食べ物が挟まる
タイプ別に選びたいリスクヘッジのためのプロダクト
お肌の状態に合わせてコスメを選ぶように、まずは歯ブラシを口内環境に合わせたものにシフトしたい。
<上>歯周病が気になる人はこちら。歯周ポケットの汚れをかき出しやすい超極細毛を採用。従来品よりヘッドが薄くなり、口腔内の隅々にアプローチしやすい仕様に進化。システマハブラシ超コンパクト4列ふつう¥240(編集部調べ)
<中>奥歯のさらに奥や歯並びが悪い部分など、通常の歯ブラシでは届きにくい所もケアしやすい。システマデンタルタフト歯周ポケット集中ケア¥300(編集部調べ)
<下>虫歯が気になる人には、弾力性とフィット性に優れた毛質のおかげで歯に付いた歯垢や汚れを除去しやすいこのタイプがおすすめ。薄さを極めたヘッドも特徴。クリニカアドバンテージハブラシコンパクトふつう¥237(編集部調べ)
Lion
ライオン お客様センター
TEL/0120-813-752
藤春知佳(Chika Fujimaru)
公益財団法人ライオン歯科衛生研究所保健研究部普及推進室室長。歯科衛生士、日本歯周病学会認定歯科衛生士。
ライオン歯科衛生研究所東京デンタルクリニック
唾液分泌量、総細菌数、唾液緩衝能などを含んだ「リスク検査」と、一般の歯科検診やブラッシング指導が受けられる(¥7,350税込・一般健診後に要予約)
住所/東京都品川区東五反田5-23-7 五反田不二越ビル2F
TEL/03-3473-6721
診察時間/10:00~18:00
歯周病外来/月曜・水曜 17:15〜20:00
休院日/木曜・日曜
Illustration:Emma Mori Cutout Photos:Yuji Namba Text:Chihiro Horie Edit:Hisako Yamazaki