ラブホルモンがつなげるSNS時代の新しい愛のカタチとは? | Numero TOKYO
Culture / Post

ラブホルモンがつなげる
SNS時代の新しい愛のカタチとは?

スマホやSNSの発達とともに、モデルやタレントがパートナーとのラブラブ写真や幸せな家族写真をアップするのも一般化してきた近年。そんな心理の変化はなぜ起きたのか? 医学博士の石川善樹にSNS時代の新しい愛のカタチを科学してもらう。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2017年5月号掲載

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そもそも「ラブホルモン」って何? 現代(=18世紀後半の産業革命以降)は、人間が都会に住むようになった初めての時代なんです。そのストレスが「オキシトシン」の分泌を促しています。オキシトシンとは別名「ラブホルモン」「幸せホルモン」とも呼ばれ、自分の子どもを前にしたときや、好きな人とスキンシップを取ったときに分泌されるホルモン。特徴としては、好きな人をもっと好きになったり、つながりたい、共有したいという気持ちが強くなるという作用があります。つまり、都会に住むストレスがオキシトシンの分泌を促し、つながりたい! 共感したい!という人々の気持ちが強くなったということ。SNSは、そんな人々の気持ちを容易に叶えてくれるツールとなったわけです。

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常にゆるくつながる
SNS時代は自然体でいい

そんなSNSで、いま現在は24時間どこにいても“常にゆるく人とつながる”という状況がつくり出されました。リアルで会うことも別れることも、昔ほど大げさなことではなくなったんですね。その結果、昔はメジャーだったキャラ変やキャラ作りが“常につながっているから無理!”となりました。海外で人気のモデルやインスタグラマーも“自然体の自分”をアップするようになり、日本人も都会の中でも自然体でいることを学び始めたんです。昔はアイドルも神秘性が売りだったけど、いまは共感のほうが重要。逆に、どれだけいろんな側面の自分を見てもらえるかが課題になりました。だから、ラブラブなカップル写真や幸せ家族写真も、素直に自分が幸せと感じる自然体を公開しているだけなんです。最近よく見かけるSNS上でのすっぴん公開という行為も同じ原理なのだと思います。

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スマホはラブホルモンへの
“どこでもドア”!?

さらにSNS時代では、リアルでは知らない人ばかりだけど、スマホを開きさえすれば知ってる人ばかりという逆転現象も起こりました。その結果、スマートフォンがオキシトシン=ラブホルモンへの“どこでもドア”になったのです。ユーザーは、タイムラインの写真からラブホルモンを受け取り、アップロードする側も“いいね!”からラブホルモンを受け取る。それがシェアされると、さらに共感の連鎖を生みます。人間は単純で“いいね!”に喜ぶようにできているので、ポジティブなフィードバックがあれば、またアップしたくなるんです。ただしオキシトシンには、好きな人はより好きになるけれど、嫌いな人はより嫌いになるという特徴を持っているので、注意が必要。基本的には好きなアカウントを選んでフォローしているので最初から精査されていますが、嫌いな人が幸せな写真をアップしているのを見るとネガティブな感情が働くのはそのためです。また、昔は青山のカフェ辺りだった聖域(=おしゃれをして出かける場所)がリアルなどこかから、SNS上に移行してきているともいえますね。現代は、スマホに始まってスマホで完結する時代。そして「つながり」は健康にまで影響するので、いろんな人とゆるくつながるSNS時代は、長寿にもつながる新時代といえるでしょう!

Interview & Text:Rie Hayashi
Illustration:Shoko Takahashi
Edit:Fumika Oi

Profile

石川善樹(Yoshiki Ishikawa) 1981年生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業後、ハーバード大学公衆衛生大学院修了、自治医科大学にて博士号(医学)を取得。「人がより良く行きるとは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究に従事。予防医学、行動科学、計算創造学などを専門分野とし、雑誌、テレビ、講演などにも多数出演する。

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