「ローマン&ウィリアムス」創始者夫妻に聞く、モントークとNYのデュアルライフ | Numero TOKYO
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「ローマン&ウィリアムス」創始者夫妻に聞く、モントークとNYのデュアルライフ

『ズーランダー』などハリウッド映画の舞台セットを手がけキャリアを積んだ後、俳優などの自宅インテリアを手がけるようになり、2002年に「ローマン&ウィリアムス(Roman & Williams)」を設立。NYのインテリアデザインの潮流をつくってきたロビン & スティーブン夫妻にインタビュー。(「ヌメロ・トウキョウ」2014年7・8月号掲載

毎週金曜日に彼らはマンハッタンを脱出する。モントークまでの道のりは車で約3時間。舗装された道路はやがて両脇が茂みに覆われた細い砂利道になり、潮風と波の音が感じられてくる。そもそもモントークには “モントーケット”と呼ばれるネイティブアメリカンたちが住んでいた。70年代にはアンディ・ウォーホルが広大な敷地を有する別荘を購入し、そこにローリング・ストーンズのメンバーなども出入りしていたという。昔からアーティストやミュージシャン、ライターなどクリエイターが好んできた場所。地理的にも半島の先のほうにあり、都会の喧噪や人ごみから逃れてスイッチオフするには最適な場所かもしれない。

彼らがここに家を買ったのは2006年のこと。

ロビン「その頃の私たちは毎日働きづめで、仕事の手を休めるのがとても難しいという状態になっていたの。週末といっても、マンハッタンのガヤガヤしたレストランでブランチしたり、人混みの中、買物に行ったり……、そういう環境から離れて自然の近くで静かに過ごす時間が本当に必要だと感じ始めたんです」

NY出身のロビンは70年代、子どもの頃から家族でよくモントークに来ていたという。一方で、スティーブンが初めてモントークを訪れたのは仕事でだった。

スティーブン「95年頃だったと思うけど、『Commandments』という映画の仕事で、モントークの灯台のセットを作るために計測に来たんだ。僕は昔からサーファーだったんだけど、それまでNYでは仕事ばっかりで、海に行く余裕なんてなかった。でもそのとき、ああNYにも海があるんだって新たな発見をしたような感じだった。それ以来、時々ロビンと一緒にモントークに行くようになったんだ」

当時、ハリウッド映画のセットを一緒に作っていた二人は恋愛関係に発展し、結婚、そしてこの家を購入することになった。

ロビン「入居してまず私たちがしたことといえば、二人でハンマーを持って80年代に取り付けたと思われる安っぽい壁や天井を打ち壊したこと!それでやっと家が息を吹き返したようだったわ(笑)」

スティーブン「幸いオリジナルの壁は木製だった。天井に仕込まれていた配管や電気系統などもむき出しのままにした。デコンストラクトでフリースタイルなのが僕ららしいと思ったんだ」

インテリアについてはこの家が建てられた当時と同じ、ミッドセンチュリーの雰囲気を活かしている。

ロビン「平日は仕事にフォーカスしているから、マンハッタンのアパートは寝るための大きなキャビンみたいな感じ。でも、このモントークの家は自分たちがどういう暮らしをしたいか、というアイデアを実現させていて、よりリアルな“ホーム”だと思っているの」

ここではだいたいスティーブンはサーフィンへ、そしてロビンはガーデニングに精を出している。庭ではトマトやケール、トウモロコシなどさまざまな野菜を作っていて、夏の間はほぼ自給自足。

ロビン「よく、農業って難しくない?って聞かれるけど、私が平日にやっている仕事のハードさに比べたら全然簡単!(笑)」

そして料理は主にスティーブンが担当、友人を招いてよくホームパーティもするという。そしてユニークなのは月曜日もこのモントークの家に泊まることだ。

ロビン「月曜日はここが私たちのラボラトリーになるの。二人で一緒にドローイングをしたり、集中してコンセプトワークをしたり。大きなプロジェクトを抱えているときほど、月曜日をモントークで過ごすことが大事」

最近はだいたい金曜日の夜に出て4泊し、火曜日の朝にマンハッタンに帰るというパターン。そして片道3時間のドライブも彼らにとっては特に大切な時間だ。

スティーブン「日常のいろんなことを確認し合ったり、ブレーンストーミングしたり。ドライブ中っていうのは二人とも前を見ているから肩越しの会話になる、だからこそいいんだ」

ロビン「お互いの顔色を見ないから、話がどんどん進むし、逆にアイデアも湧いてきたりするのよ」

そして彼らは年間を通して週末にはモントークにやって来る。忙しくて3時間ドライブすることが難しければヘリコプターを使ってでも。

スティーブン「3人乗りの小さなヘリ。低空飛行で、まるでペリカンにでもなったみたいな気分だよ。モントーク空港まで45分で到着する」

夏の間しか来ない“ニューヨーカー”も多い一方で、冬の間も欠かさず毎週やって来る彼らは、最近ようやく少しずつモントークのコミュニティに馴染んできた、と感じている。

スティーブン「10年同じ場所でサーフィンしても、ローカルのサーファーにはまだ挨拶さえしてもらえないね(笑)」

しかし、地元意識が高いからこそオリジナルのカルチャーが残っている。

ロビン「そんなモントークの流儀を私たちも尊重したいの」

Photo:Gion Text & Coordination:Akiko Ichikawa Edit:Michie Mito

Profile

Stephen Alesch, Robin Standefer(スティーブン・アレッシュ、ロビン・スタンデファー) 『ズーランダー』などハリウッド映画の舞台セットを手がけキャリアを積む。その後、俳優などの自宅インテリアを手がけるようになり、2002年Roman and Williams Buildings and Interiorsを設立。ホテルやレストランなどの内装やビルデザインなどの分野へ進出する。最近はオリジナルの家具や蛇口、ハンドルなど住宅設備機器などのデザインもスタート。今年、これまでの主な作品をまとめた『THINGS WE MADE ローマン アンド ウィリアムスの軌跡』日本語版がグラフィック社から発売になった。 URL/www.romanandwilliams.com/

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