あの人がナビゲートする、知る喜び vol.10 ジン
「それ、いいね!」という言葉が飛び出すのは、知らないことを知ったとき。その道のプロでもファンとしてでも、時代の空気感を敏感に、意識的にキャッチしている人たちに聞いた、知ってうれしい深堀りカルチャーあれこれ。vol.10は、「HIGH(er)magazine」編集長のharu.が好きなジンと本屋を紹介。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2019年12月号掲載)
ZINEでわかるクリエイターの頭の中
「ZINEは私にとって名刺のようなもの。もともと私がZINEを作り始めたきっかけも、人とコミュニケーションを取るためなんです。作家自身の『好き』や『伝えたい』表現をぎゅっと濃縮して詰め込んだものだから、その人が普段どういう人で何を考えているのかを垣間見ることができるのが、いちばんの魅力だと思います。興味を持った人について知るために、イベントで知り合った方や、友人の友人などから直接購入することが多いですね。ほかにはアートブックフェアでの出店の合間や、本屋さんで偶然出合ったものを買います。流通先も人それぞれで、作り手と本屋さんの関係にもよるから、好きな本屋さんに足を運ぶと好きなZINEに出合える確率が高いんじゃないかな。『HIGH(er)magazine』でもマーケットを開催したり、ブースを出したりする際には、周りのクリエイターのZINEも一緒に販売するようにしているので、ぜひ見てほしいですね。ZINEとの出合いはフィジカル勝負です」
紙も製本方法も人それぞれ。個性あふれるZINE 4選
1. 『ボクたちのドラマシリーズ』綿貫大介/著¥1,500
「編集者でライターの綿貫くんには『HIGH(er)magazine』にも寄稿してもらっています。いわゆるZINEというよりは本格的な作り」。平成の傑作テレビドラマの数々を絡めたエッセイに加え、「ベタすぎるドラマあるある」などコラムも充実。
2.『快感図鑑』伊藤紺/著¥800
日常にあふれるさまざまな快感を14タイプに分類し、おしゃべり感覚で解説したミニエッセイ集。「歌人でライターの紺ちゃんとは『贅沢貧乏』という劇団のアフタートークで一緒になって。一冊一冊バラバラの紙を糸で縫い合わせてあるんです」。
3.『自分のことを“女”だと思えなかった人のフェミニズムZINE』安達茉莉子/著¥300
「『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』(タバブックス)という本の表紙のイラストを描いていたのを覚えていて、イベントで声をかけました。一枚の紙が折り畳まれて本になっています」。フェミニズムを身近に感じさせてくれる作品。
4.『volcano』yunbomu/著¥1,000
「グラフィックデザイナーの彼女とは、1993年生まれのアーティストを集めた『1993年展』で知り合い、購入」。どこか切なさが漂うグラフィックアート集。
間違いのない、行きつけの本屋さん
SPBS本店(エスピービーエス ホンテン)
「ここは照明がちょっと暗めなので落ち着くんです。本を選ぶ行為って脳内を覗かれてる感じがして、どこかソワソワしませんか? 広すぎず、それぞれの分野でセレクトが絞り込まれてるから、どれを買っても間違いないですね。カナイフユキさんのZINEには初めてここで出合い、寄稿してもらうまでに」
住所/東京都渋谷区神山町17-3 テラス神山1F
Tel/03-5465-0588
営業時間/月~土 11:00~23:00、日 11:00‐22:00 不定休 ※イベント等により変更あり
収まり場所のない刺激が欲しいときに
TACO ché(タコシェ)
「中野はキレイだけじゃない刺激が欲しいときに行くと、活力が湧いてくる街だなと思っていて。特にこのお店には生々しくて荒っぽいものがまだ揃っている。エログロのポストカードセットを買ったんですけど、誰に送れるんだろう(笑)? 『ROOKIE』のタヴィ・ゲヴィンソンを連れてきましたが、彼女も興味津々でした」
住所/東京都中野区中野5-52-15 中野ブロードウェイ3F
Tel/03-5343-3010
営業時間/12:00~20:00 年中無休