ゆう姫(YJY)×ショウダユキヒロ誰も見たことのない映像作品「KAMUY」とは?
Ms. COINTREAUの一人として、「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」が活動を追う、アーティストゆう姫(Young Juvenile Youth)が初となる映像作品に挑んだ。
自分の音楽をきちんと届けるということの大切さ
──今回映像の見せ方にもこだわっているということですが、具体的にはどういったことを考えているのでしょうか?
ショウダ「この企画自体当初想定していたよりも内容が膨らんで、壮大なプロジェクトになりました。でも、どうせだったら作って終わりじゃなくて、一番大切にしようと思ったのはどう見てもらうかということ。上映会場には、一人用の小さなベッドを用意して寝転んで赤ちゃんみたいな格好して、上を見上げて映像を見てもらおうと思ってます。映像のコンセプトを作ってる段階からそれに合った見方=体験の仕方を考えた上で映像制作をし、同時に会場のデザインや場所を探してきました。会場に入っていくときは小さな道を通っていくんだけど、それは赤ちゃんが母親の産道を通るような感覚をイメージしてます」
──まさに「見る」というより、むしろ映像を「体験する」という場になるのですね。
ショウダ「ただ作って、YouTubeにアップして終わりではなく、こういう発信の仕方があるというのを示したかったんです。今の時代、ムービーにしても、音楽にしてもサイクルが早すぎて、すぐに消費されてしまいます。それはそれでそういう役割があるとは思っているけれど、今回は消費されないものを作りたい、じっくりゆっくりとその場に行って全身で感じてもらいたいという思いがあった」
ゆう姫「最初にコンセプトを決めるときから体感できる場所ってないかな? そういう場所って作ってみたいね、というところから始まったんですよね。映像作品プラス見せ方も含めてのひとつのコンテンツとして持っていけるようにできたらいいなと話していました」
ショウダ「映画館や美術館など、映像を見る環境って、もともと選択肢があまりない。けれど、映像によってどんな格好でどんな風に見るのか、もっといろんな方法があってもいいんじゃないかって事も提案していきたい。体感できる空間作りという意味では映像のディズニーランドを作っていくみたいな(笑)?」
ゆう姫「う、うん、そうだね(苦笑)、スペースシップというか」
──ゆう姫さんご自身が、このプロジェクトを通して得たこと、学んだこととは?
ゆう姫「一言で言うと映像は楽しいですね。異世界だなと思いました。自分じゃないところに持って行かされるってこういうことだなって実感しました。今回の映像のテーマ曲として『A WAY OUT』という曲を使っているんですが、ショウダさんにいろいろデモを聴いてもらったなかでこれがいいんじゃないかって。その曲を、映像を通して聴くのがまた新鮮でした」
ショウダ「コンセプトを話している中で、映像にしたら絶対面白いのはこの曲なんじゃない?ってみんなで決めていったんです」
ゆう姫「歌詞の内容としても、私一人だけだったらわからないことが、相手がいるからこそわかるとか、自分の存在を知れるとか、誰かに助けてもらえるとかそういうことを歌っているんです。自分という得体の知れない存在を、誰かの目線越しに見ることで知ることができるんじゃないか、って少しわかった気がするんです。一人じゃなくて、誰かがいないと成立しない、というような内容なんですけれど、今回の作品は誕生がテーマなので、リンクするところがありましたね」
──映像でも、ゆう姫さん演じる宇宙とか神という存在があるからこそ、村上さん演じる兵士が生きている実感を感じているのでは、と思いました。
ゆう姫「結局どう世界が変わろうが、人間が進化しようが、プロデュース(生み出す)するという行為、つまり生命が誕生して、その命が次の世代につながっていくということは、永遠に変わることがなく、お互いが支え合っていくのだと思うんです。今回は、男性が身籠るということが起こり得るんじゃないかという話からスタートして、そうなったとしても、生命がつながれるということ自体は繰り返されるんだろうなと。とにかくいろんな事を考えさせられましたね」
──ご自身の音楽にどのように影響すると思いますか?
ゆう姫「自分の音楽は誰に届いているのか、もっと考えるようになりました。もともとメッセージを具体的に歌詞にのせるってことが、恥ずかしくてあんまり得意じゃないんですけれど、ダイレクトに人に届くような言葉をのせていくことも大切だなということも、この作品を通して気づきました。前回の『Animation』は私一人だけで完結しているんですが、今回は『誕生』というテーマを軸にストーリーが展開される中で、言葉の大切さ、歌詞の意味の大切さをより意識できるようになれたというか。これを機にまた新しい作品が作れるかなって思います」
──この作品の上映を控えている最中ですが、次の目標として、今後それぞれが挑戦していきたいことについてお聞きできますか?
ゆう姫「私はやっぱりもっと映像を作りたいです。もちろんショウダさんとか関根さんのような素晴らしい映像作家ともですし、もっとアンダーグラウンドの最近映像の作り方を習いましたというような、でもすごい自分の作りたいものがハッキリしている人もたくさんいるので。そういう人たちとどんどん組んで、いろんな作品を作りたいですね。そのためにはもっと曲をいっぱい書かないとですね。今って、尺が結構決まってるじゃないですか。例えば私の音楽で4分の曲があったら4分の映像を作らないといけないかもしれないけど、それは別に15秒でもいいんじゃないかなと思うし」
──なるほど。いろんな表現の仕方を模索されるのですね。ショウダさんの今後の展望は?
ショウダ「別にジャンルとかはこだわらず、おもしろいものの表現を追求していきたいです」
ゆう姫「この『KAMUY』を舞台化するのはどうですか?」
ショウダ「うん、それも一つの案だね」
ゆう姫「すごい大変だろうな。でもやってみたい」
ショウダ「今回の『KAMUY』みたいな見せ方自体を提案するというのもおもしろいと思うし、別に形式なんて決めなくていいやって。今回作ったNIONというプロダクションにはイギリスやカナダ出身の映像ディレクターも所属していますし、新しい何かを東京から生まれるものとして世界に発信して盛り上げていければいいなと思います」
(ゆう姫)デニムジャケット¥100,000/alice + olivia(LOOK 03-3794-9131) スカート¥124,000/YANG LI(VIA BUS STOP MUSEUM 03-5459-1567) シューズ¥35,000/G.V.G.V(k3 オフィス 03-3464-5357) ソックス¥9,500/FUKUI × G.V.G.V(k3 オフィス 03-3464-5357) インナー/スタイリスト私物 チョーカー、ピアス/ともに本人私物
(ショウダユキヒロ)すべて本人私物
Photos:Wataru Fukaya
Styling:Masaki Kataoka
Hair & Make:Tomomi Fukuchi
Interview&Text:Etsuko Soeda
Edit:Yukiko Shinmura