ゆう姫(YJY)×ショウダユキヒロ誰も見たことのない映像作品「KAMUY」とは?
Ms. COINTREAUの一人として、「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」が活動を追う、アーティストゆう姫(Young Juvenile Youth)が初となる映像作品に挑んだ。
「自分の音楽は誰に届いているのか」
そう考えるきっかけとなった映像の世界への挑戦
彼女がタッグを組んだのは、CMやアーティストのMVの制作を中心としながら、国内外で評価の高い「blind」「social 0.0 LAB」などメッセージ性の強い作品を発信する映像作家のショウダユキヒロ。彼らが今回作り上げた「KAMUY」という作品は、CGを駆使した映像美はもちろん、ストーリー、YJYが担当した音楽、さらに上映方法にもこだわり、映像と音楽を全身で体感するという手法で発表する。
出演は俳優、村上虹郎と、演技初挑戦のゆう姫。この実験的なプロジェクトに参加することで、ゆう姫自身のクリエイションや物事への考え方にどんな変化がもたらされたのだろうか。
本気で遊ぶクリエイターたちとの出会い
──そもそも今回のショートフィルムにゆう姫さんが出演しようと思ったきっかけ、またショウダさんがゆう姫さんを演者として選んだきっかけとはなんでしょうか?
ショウダ「もともと『Animation』が、同じプロダクションNIONの関根光才の作品ということもあり、ゆう姫の存在を知っていたし、それからJEMAPUR(ジェマパー)はもともと知っていました。一緒に遊ぶようになって、何十回遊んだかな? だから、選んだというよりは、飲みながら、『何かするか?』みたいなノリでスタートしたんです」
ゆう姫「私はショウダさんと何か一緒にやりたいという下心がもともとありました(笑)」
──短期間でぐっと距離が縮まったということですか?
ゆう姫「最初に会ったのは去年の8月か9月くらい?」
ショウダ「それでこのプロジェクトをスタートしたのが11月ぐらいだったかな?」
ゆう姫「私としてはショウダさんが一緒に何かやろうって言ってくれたことですごいワクワクドキドキしていました。最初にそんな話をしてから一人増え、また一人増え、という感じで仲間が増えていった感じです」
ショウダ「そうそう、なんというか、ドラクエしているみたいな感覚だったかな」
──その仲間の一人として、スタイリストとして伏見京子さんが参加されていますが、きっかけは何だったのでしょうか。
ゆう姫「ザ ハプニングというショーをやっているスタイリストの方がいるっていうお話をショウダさんに提案したら、『この人面白そうだね』みたいな」
ショウダ「全員そんな感じで、集まっていきました」
──具体的なヘアメイクや衣装のプランはどのように決めていったのですか?
ショウダ「特に具体的なリファレンスがあったわけではなく、例えば兵士という人物を登場させようとなったとき、負傷して盲目になり、口がきけないという設定にしよう、じゃあコンセプトがこうなったら、ヴィジュアルの表現はこんな風にしたら面白いんじゃないか、という感じでそれぞれが意見を出し合って、特殊メイクや衣装が決まっていきました。基本はオレがコンセプトを考えてきて、それを話しながら、またみんなで0から話したりして。もともとみんな作り手だからどんどんいろんなアイデアが出てくる。そうやってみんなで作り上げていきました。それぞれ自分のフィールドで発信しているような人たちとコラボレートしたいなというのが大元の企画だったので」
ゆう姫「撮影は2月だったんですよね。撮影に入る前も構想を決めるだけで3ヶ月くらいかかりました。最後はむしろもう時間がないから撮り始めなきゃという感じでしたね?!」
ショウダ「最初は南極やアイスランドに行こうとしていたけど描きたい世界の撮影手法がCGでしか表現しきれないことがわかり多くの部分をデジタルで再現しています。人間が進化して世界が良くなっていくってどういうことだろう、というところから始まって、地球にはありとあらゆる事象があって、エネルギーがあって、それぞれが刺激し合って、影響し合う。そんな世界に生まれ出た、もしくはお腹の中にいる、まだ目の見えない赤ちゃんはどんなことを見る(感じる)のか? そういう表現を突き詰めていくと普通に実写を切り取ることで表現するのはちょっと違うと思った。そういう世界ってどういうことなのか、その中で見えてくる大事なことって何なのか。それらをまとめてどうヴィジュアライズしていくのか、どうしたら一番面白くなるだろうというところをみんながそれぞれアイデアを出し合っていくのが本当に楽しかった。逆に楽しくなかったら途中でやめていたかも(笑)。平たく言うと友達みんなで、全力で遊びましたということ。気づいたら大きなプロジェクトになっていました」
ゆう姫「アイデア出しの時点で、もうみんなすごくて、話についていけなくなったりもしました(笑)」
ショウダ「映像の世界だけなのか日本人特有なのか分かりませんが、普段の撮影では監督が指示したものに対しスタイリストやヘアメイクが全然違うオリジナルの意見を言うっていうことはあまりないんだけれど、今回に関しては、コンセプトの部分から全スタッフにガシガシ参加してもらい活発なアイデアを交換することができました」
ゆう姫「でも実は、本当に最後までショウダさんの思い描いていることが明確に実現するんだろうか?って考えていたんですよ。実際の現場でそれが現実となっていく様を見て本当にすごいなと思いました。たぶん当日までショウダさんしかわかっていなかったと思うんです。私たちは現場で紐解くように、『あ、こういうことだったんだ!』って一つひとつを理解していったという感じでした」
ショウダ「周りが真っ暗で、『ここはこういうシーンだから、こういう風に動いて』とか指示されても、『あ、そうですか』って思うよな、普通(笑)」
ゆう姫「でも今回の映像を最初に想像するところが天才だなと思いました。現実に落とし込めるのかなってみんな思っていただろうし、でもまだ見たことのない映像が見てみたいという好奇心でいっぱいで、それはみんな一緒だったと思う。スタッフのみんなもたぶんどういうことが正解なのかずっと考えながらやっていたと思うんです。みんな自己表現をそこにする場所であり、だからこそそれぞれのこだわりが詰まった作品になったと思う」
Photos:Wataru Fukaya
Styling:Masaki Kataoka
Hair & Make:Tomomi Fukuchi
Interview&Text:Etsuko Soeda
Edit:Yukiko Shinmura