生粋のごはん狂・平野紗季子が選ぶ“至福の一皿”アドレス
食いしん坊のフードエッセイスト・平野紗季子さんが「口に運べば幸せな気持ちになれること間違いなし」と、太鼓判を押すメニューとは。朝ごはんからディナーにかけて至福の一皿を、時系列で厳選!(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2019年11月号より抜粋)
健やかなるときも、病めるときも。食べる幸せのいろいろなかたち
![ホテルオークラ東京が9/12に新ホテルとして開業。今回リニューアル前に平野さんが別館のルームサービスでオーダーしたレモンパイは、引き続きデリカテッセンで楽しめる。 The Okura Tokyo「シェフズガーデン」 東京都港区虎ノ門2-10-4 オークラ プレステージタワー5F Tel/03-3505-6072 営業時間/6:30〜22:00 ケーキ販売/11:00〜 レモンパイ 1カット¥520 ホール¥4,000](https://numero.jp/wp-content/uploads/2019/10/131_p140_sakikohirano650-e1572406022199.jpg)
毎日働く女性ならじーんとくる、沁みるエピソードも。
「会社勤めしていたときは深夜まで働く日も多くて。いつも帰宅する頃はヘトヘトだったんですが、自宅の前に、ツルの赤いメガネを掛けた男性がやっているカウンターの食堂があったんです。深夜2時近くまで営業していて、夜中に疲れ果ててお邪魔すると黙って出してくれるのが、春菊のすり流し。漫画みたいですよね(笑)。ラーメン屋や居酒屋しか開いてないような時間に、相手の状態を見てそっと食べ物を出してくれるとか……泣くしかない。彼のおかげで頑張って生きようと思えましたね」
いわゆるご馳走だけが幸せに直結しているわけではない。身体や心が弱っているときに寄り添い、労ってくれる一皿に格別なありがたみを感じる。それも幸せ。
心身を満たす5皿をリコメンド
![台湾の朝ごはんのひとつ、鹹豆漿(シェントゥジャン)。豆乳を酢で固めたもので、揚げパンを浸して食べるのがお決まり。酥餅(スーピン)の中身は豚肉や塩もみした大根、ピーナツなど。東京では珍しく本場の味が楽しめる。 <東京豆漿生活> 東京都品川区西五反田1-20-3(※誌面に掲載の住所に間違いがありました。正しくはこちらになります。お詫びして訂正いたします) Tel/03-6417-0335 営業時間/8:00〜14:00(売り切れ時は閉店) 日休 予算/〜¥999](https://numero.jp/wp-content/uploads/2019/10/131_p144_sakikohirano_tokyomamehana.jpg)
朝ごはんからディナーまで。それぞれを選出した理由についてはこう語る。まずは、異国情緒あふれる朝ごはん(東京豆漿生活)から。
「とろんとした舌触りと優しい甘さの豆漿に、ジュワッと揚げパンを浸していただきます。満員電車も寝不足も遠い世界の出来事みたいな、リラックスな台湾式朝ごはん」
続くのは、モダンな飲茶(YAUMAY)のランチ。
「リッチな素材を惜しげもなく使ったハイクオリティな飲茶たち。蒸篭を開けるたびに立ち昇る湯気に包まれながら美味を頰張っていると、雲の上にいるかのような天国的な時間が訪れます」
![世界的レストランプロデューサー、アラン・ヤウの日本初出店舗。点心に最も適した日本の素材を厳選し、全20種類の点心を展開する。意外な食感を駆使した進化系中華を堪能できる。腸粉の中は海老とパリパリの湯葉が。 <YAUMAY>東京都千代田区丸の内3-2-3丸の内二重橋スクエア2F Tel/03-6269-9818 営業時間/11:00〜15:00(14:30 L.O) 17:30〜23:00(22:00 L.O) 土・日・祝11:00〜23:00(21:30 L.O) 元旦・点検日は休み 予算/海老と揚げ湯葉の腸粉¥1,200〜、ランチ¥4,500〜、ディナー¥9,000〜](https://numero.jp/wp-content/uploads/2019/10/131_p144_sakikohirano_yaumay.jpg)
さらに、おやつもいただこう。
「リトルシェフの生姜のパフェは、真っ白。最後の一口までおいしく食べられるパフェが少ない中、こちらのパフェは味のバランスが完璧、一瞬でペロリですよ。このパフェを好きな人と食べたら、ちょっとやそっとのいざこざなんぞって思いますね」
![「おいしいと思う料理を手作りで提供したい」という思いからオープンした。ランチは和定食が中心。パフェは生姜のブラマンジェにジャスミンティーのアイス、ホワイトチョコをコーティングした玄米フレークなどを使用している。 <Little chef>東京都目黒区平町1-23-18 マヌワール都立大103 Tel/03-6421-2179 営業時間/11:30〜18:00(17:30 L.O) ランチ11:30〜15:00 ティータイム15:00〜18:00 水・第2木休 予算/生姜のパフェ¥1,300、ランチ¥1,400〜](https://numero.jp/wp-content/uploads/2019/10/131_p145_sakikohirano_littlechef.jpg)
日が落ち始めたら、ディナーに向けて気軽にアペロも楽しみたい。
「Le Boutonオリジナルのウスターソースと、vinmariオリジナルのタルタルソースがおいしすぎて。ひとつもふたつも上を行くアジフライです。お店の内装も素敵で、トイレのノブがやたら可愛いです(笑)」
![2018年にソムリエがオープン。フレンチや北欧料理を基にしたアラカルトと癖が少ないきれいめのヴァンナチュールが揃う。カラッと揚げたアジフライには特製タルタルソースと店主が勤めていた「Le Bouton」のウスターソースを。 <vinmari>東京都渋谷区千駄ケ谷4-3-7 1F Tel/03-6812-9109 営業時間/18:00〜23:00( 22:30 L.O) 土・祝15:00〜20:00( 19:30 L.O) 休/日・第1&第3月 予算/アジフライ¥900〜(魚は変更の可能性あり)、グラスワイン¥900〜](https://numero.jp/wp-content/uploads/2019/10/131_p145_sakikohirano_vinmari.jpg)
一日を締めくくるにふさわしいディナー(noura)は、驚きのアミューズで幕開け。
「スフレタイプのパンケーキに、トリュフオイルとメープルシロップがたらり。ふわふわ食感、底はガリッとキャラメリゼ。反則レベルの幸せアミューズです」。
食べることを起承転結で楽しみ尽くすラインナップに。
![ミシュラン2つ星のフレンチ「オマージュ」の裏にオープンしたビストロ。気軽に訪れられる価格設定で、遊び心溢れる2種類のコースを展開。アミューズのパンケーキはメイプルシロップに岩塩、トリュフオイルをかけて。 <noura>東京都台東区浅草4-10-6 Tel/03-6458-1255 営業時間/11:30〜15:00(14:00L.O) 18:00〜23:00(21:00L.O ※翌日が定休日の場合は20:00L.O) 休/月・火(月が祝日の場合、火・水はランチ休業) 予算/ランチコース¥2,000、ディナーコース¥3,800、¥5,800](https://numero.jp/wp-content/uploads/2019/10/131_p145_sakikohirano_noura.jpg)
淡い憧れを叶え、心の支えになり、特別な人との時間や純粋な楽しみとしても力を貸してくれる。〝幸せの一皿〞は、奥が深い。
Photos:Kisshomaru Shimamura(Portrait), Ayumu Yoshida(Food) Interview & Text:Aika Kawada Edit:Chiho Inoue
Profile
![](https://numero.jp/wp-content/uploads/2019/10/131_p144_sakikohirano.jpg)