沖縄の大自然を満喫!やんばるアートフェスティバルで冬のアート旅 | Numero TOKYO
Art / Feature

沖縄の大自然を満喫!やんばるアートフェスティバルで冬のアート旅

2018年12月15日(土)から2019年1月20日(日)まで、沖縄本島の北部地域にてやんばるアートフェスティバルが開催中。手付かずの森や美しい海、豊かな大自然を舞台に繰り広げられるアートやクラフト作品の見どころをレポート!

やんばるとは、沖縄本島の北部地方を指す名称で、「山原」と書くとおり手付かずの大自然に囲まれた地域。2016年には、33番目の国立公園として「やんばる国立公園」が指定されるなど、近年注目が集まっている。 そんな豊かな自然を舞台に行われるやんばるアートフェスティバルは、国内外からアーティストを招いた現代アートの「エキシビション部門」と、沖縄の伝統工芸にフォーカスした「クラフト部門」で構成される。

沖縄の新たな魅力を伝える、アートとクラフト

メイン会場となるのは、那覇空港からおよそ車で1時間半ほど北上したところにある、大宜味村立旧塩屋小学校。2015年に廃校になったこの小学校を舞台に、教室から体育館、校庭までいたるところに作品を展示。

「やんばるシーサー」DOPPEL
「やんばるシーサー」DOPPEL

校門をくぐると正面にある体育館には、妖怪画の墨絵アーティスト谷村紀明による、ガジュマルの樹をモチーフにした龍の迫力たっぷりの作品がお出迎え。

「GAJYUMARU」谷村紀明
「GAJYUMARU」谷村紀明

開催前日の内覧会では、家電や車などにエレキギターの技術を融合させた“サウンドスカルプチャー”のパフォーマンスで知られる現代アーティスト、宇治野宗輝によるライブも披露された。

「THE AUDIO DISTORTIONS」宇治野宗輝
「THE AUDIO DISTORTIONS」宇治野宗輝

工業製品が奏でる激しいディストーションに、ゆったりとした沖縄の空気が一瞬でカオスに。

「やんばるオオゴミウオ」淀川テクニック
「やんばるオオゴミウオ」淀川テクニック

外には、淀川テクニックによる巨大オブジェ「やんばるオオゴミウオ」が。その土地のゴミを使って作品を作る「ゴミハンタープロジェクト」の一環で、風景も含めた写真をSNSにアップし発表するというもの。自然豊かなやんばるにも、これだけのゴミが散乱しているとは。背景の美しい大自然とのコントラストにもまた、考えさせられる。

「Yambaru NEST」飛生アートコミュニティー
「Yambaru NEST」飛生アートコミュニティー

北海道白老町のアーティストたちによる共同アトリエとの「飛生アートコミュニティー」の作品も。ガジュマルの木に宿るという言い伝えのある沖縄の妖精キジムナーの寝床として作られた大きな鳥の巣。中にはふかふかの藁が敷き詰めてあり、自由に寝転んだりすることができる。校内には、この鳥の巣へと帰るキジムナーの足跡もあるので、ぜひ探してみて。

「小子居酒屋」孫遜
「小子居酒屋」孫遜

中国から招いた孫遜(スンシュン)は、アニメーションやドローイングで活躍する今注目のアーティスト。今回、日本の文化である居酒屋に興味をもち、家庭科室を舞台に居酒屋を出現させるというインスタレーションを発表。

残念ながら取材時には、まだ完成していなかったが、彼の目を通した居酒屋カルチャーがどう表現されているのか、この空間で体感してほしい。

教室ごとに異なるアーティストの部屋になっており、バラエティに富んだ作品が展示されている。注目の若手アーティストたちも、やんばるにインスパイアされ作品を制作。

やんばるの海辺で見つけた流木やセラミックに彫刻を施し、新しい植物のような作品を生み出したのは、絵画や彫刻のアーティスト福本健一郎。2週間ほど現地に滞在し、6点の作品を制作したという。自然の中にある造形に寄り添うような、作品にしたかったと語る。

「あめつちのかけら」福本健一郎
「あめつちのかけら」福本健一郎

ドローイングやイラストレーションを手がける寺本愛は、沖縄の戦前の写真をインスピレーション源にした。人々の生活がそこにきちんとあることに素直に感動したという。複雑な歴史を持つ沖縄でも、きちんと暮らしていることに変わりないのだと。見れば見るほど、不思議な魅力に引き込まれる絵は、昔の沖縄へと思いを馳せる。

「道をなぞる」寺本愛
「道をなぞる」寺本愛

他にも、沖縄在住の藤代冥砂が現地の少年少女を撮り下ろした写真のほか、インスタレーションや映像作品など、さまざまな表現方法で沖縄へのトリビュートをしている。


(左上から時計回りに)「琉球の君」藤代冥砂、「come to」吉濱翔、「シンドウ320のオキナワ モナムール ~okinawa mon amour~」信藤三雄、「すでる ~古琉球のMetamorphose~」仲程長治鋳型

クラフト部門では、スタイリストの熊谷隆志ディレクションによる伝統工芸作品の展示販売を実施。沖縄の器やちむんや琉球ガラス、木工から芭蕉布、紅型まで、なかなか出合えないローカルな作家にもフィーチャーしている。

まざまなクラフト作品を一堂に見ることができる。気に入ったものがあったら、その場で購入できるのも嬉しい。

大宜味村立旧塩屋小学校(大宜味ユーティリティーセンター)

住所/沖縄県国頭郡大宜味村塩屋538
開館時間/平日11:00~17:00 土日祝 11:00~19:00
※毎週火曜日、1月2日は閉館

雄大な自然をキャンバスに、風景に溶け込むアート

旧塩屋小学校小学校以外にも、数カ所で作品を展示している。自然との融合が楽しめるアートを提案。

「大宜味村人看板計画 2018」仲本 賢
「大宜味村人看板計画 2018」仲本 賢

大宜味村立旧喜如嘉小学校では、校庭に村民を撮影して作ったベニヤ板の白い看板を設置。自然と人をアート作品としたプロジェクトだという。

大宜味村立旧喜如嘉小学校

住所/沖縄県国頭郡大宜味村喜如嘉2083

「POST PARADISE PRODUCT(Prototype_02)」椿昇
「POST PARADISE PRODUCT(Prototype_02)」椿昇

リゾートホテルのカヌチャリゾートには、近未来的な巨大オブジェが出現。

カヌチャリゾート

住所/沖縄県名護市字安部156-2
URL/www.kanucha.jp/

「アグーの森」多田 弘[カゼモニワ]×濱元朝和
「アグーの森」多田 弘[カゼモニワ]×濱元朝和

名護市民会館前のアグー像前には、2017年に引き続き、未来への希望を込めた沖縄の植物の植栽が。

名護市民会館前アグー像

住所/沖縄県名護市港2-1-1

「やんばる BEAT」多田 弘[カゼモニワ]×濱元朝和
「やんばる BEAT」多田 弘[カゼモニワ]×濱元朝和

オキナワマリオット リゾート&スパでは、沖縄固有の植物を使った森のようなインスタレーション。小さな沖縄盆栽などの緑がその周りを囲む。

オキナワマリオット リゾート&スパ

住所/沖縄県名護市喜瀬1490-1
URL/www.okinawa-marriott.com/

ちょっと足を伸ばしていきたい絶景スポット

アート巡りの合間に立ち寄りたい、やんばるの自然に触れられるとっておきのスポットを紹介。今帰仁村の古宇利島と名護市の屋我地島を結ぶ、全長1960メートルの古宇利大橋を望むビーチは絶景! 本島屈指の美しさとも言われるエメラルドブルーの海が広がる。

橋を渡って古宇利島に着いたら、カートに乗って古宇利オーシャンタワーへ。古宇利大橋を一望できる絶好のロケーションから、抜群の眺望を楽しめる。

古宇利オーシャンタワー

住所/沖縄県国頭郡今帰仁村古宇利538
TEL/0980-56-1616
営業時間/9:00~18:00(最終入園 17:30)
入場料/大人 ¥800
年中無休
URL/www.kouri-oceantower.com/

長寿の知恵が詰まった絶品パワーランチ

「長寿の里」として知られている大宜味村で、お昼時になるとローカルも観光客も詰めかける「笑味の店」。お目当ては、二ガナややんばる竹の子などの島野菜をふんだんに使った、ボリューム満点のランチ。

大宜味村発祥の伝統料理である二ガナの白和え、きびなごのマース(塩)煮、シークヮーサーを練り込んだ麺、炊き込みご飯のやんばるジューシーなど、ご当地食材が小さな小鉢にたくさん並ぶ。

「まかちくみそぅれランチ」¥1,100(税込)
「まかちくみそぅれランチ」¥1,100(税込)

ヘルシーで、滋養たっぷりの料理に、みるみるパワーがみなぎるはず!やんばるの魅力を食からも堪能してみては。

笑味の店

住所/沖縄県国頭郡大宜味村大兼久61
TEL/0980-44-3220
営業時間/9:00~17:00(L.O.16:00)(食事は11:30~)
URL/eminomise.com/

やんばるアートフェスティバル

会期/2018年12月15日(土)〜2019年1月20日(日)
会場/沖縄本島 北部地域
大宜味村 大宜味村立旧塩屋小学校(大宜味ユーティリティーセンター)
国頭村 オクマ プライベートビーチ & リゾート
本部町 国営沖縄記念公園(海洋博公園)
名護市 オキナワマリオット リゾート&スパ、カヌチャリゾート、名護市民会館アグー像
入場料/無料
URL/yambaru-artfes.jp/

Photos: Kouki Hayashi Text: Yukiko Shinto

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