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Lifestyle Trip

Chim↑Pomエリイ伊勢志摩へ行く
お伊勢参りと神様の歴史を学ぶ

現代アーティスト集団「チンポム(Chim↑Pom)」の一員として、展覧会やアートイベントで世界中を飛び回るエリイ。プライベートでもかなりの旅好きというエリイが伊勢観光の王道名所、伊勢神宮に、猿田彦神社。さらには、神道や斎王の歴史を学ぶゆかりの地を訪問する。


内宮(皇大神宮)宇治橋の鳥居の前で。

清く正しく「お伊勢参り」

志摩を後にしたエリイが向かったのは、次の目的地、伊勢。伊勢といえば、伊勢神宮。昔の人は、一生に一度はお伊勢参りといっていたくらい憧れの場所であり、江戸時代にはお蔭参りと呼ばれ集団参拝するほどの大ブームとなり、あの交通機関のない時代に歩いて年間500万人もの人がお参りしたというからすごい。その伊勢神宮は、皇室の御祖先の神であり、日本人の大御祖神(おおみおやがみ)として崇敬を集める太陽神、天照大御神(あまてらすおおみかみ)を祀る「内宮(ないくう」)こと「皇大神宮(こうたいじんぐう)」と、衣食住や産業の守り神である豊受大御神(とようけのおおみかみ)の「外宮げくう)」こと「豊受大神宮」を筆頭に、別宮、摂社、125の宮社からなる。

以前、内宮しか訪れずに、伊勢神宮をお参りした気になっていたエリイ、今回は、外宮から内宮の順で、本来の参拝のならわしにのっとってお参りすることに。ということで、まずは「外宮(げくう)」へ。


猿田彦神社で開かれた⁉︎ 不思議な出会い

外宮を参拝した後、外宮と内宮の途中にある猿田彦神社を途中訪れてから、内宮をお参りすることにしていた無知な我々に思いも寄らぬ出会いがあった。まずは、タクシーでの移動中のこと。地方でタクシーに乗ると、観光ガイドまでしてくれる親切な運転手さんが大概いるものだが、御多分にもれず、今回もそうだった。猿田彦神社へ行き先を告げると、真偽のほどはさておき、興味深い都市伝説のような噂を聞かせてくれた。

本来、みちひらきの神として知られる、猿田彦大神は、天孫降臨の時に、天と地の別れ道で待ち迎え、みちひらきをし、天照大御神の孫である瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を高千穂へ導いた後、伊勢に戻り国土を開拓した地主神。ということで、人生の道、仕事や学業をよき方向へと道を開いてくれる神様として崇められている。

だが、タクシー運転手の話によると、その猿田彦大神が、実は、なんと青い目をした外国人(しかもロシア人)で長身のイケメンで、ロシアから中国を経由して日本にやってきたというのだ。とはいえ、『日本書紀』でも、猿田彦さまのことを「鼻の長さは七咫、背丈は七尺、目が八咫鏡のようでホオズキのように照り輝いていた」と記され、長身で体格のいい、鼻が異常に高い(長い?)天狗のような容姿だったいう説も。どこでどう目まで青くなったかは謎。

そもそもエリイが猿田彦神社に行きたいと思ったきっかけは、知人である大林組の大林剛郎会長の薦め。大林組の神輿も納めているらしいが、それもそのはず、みちひらきと同時に、国土を広く開拓したことから土地神さま、建築安全の神でもあるのだ。思わず納得。

境内には、猿田彦の妻、天宇受売命(あまのうずめのみこと)を祀る佐瑠女神社も。天照大御神が天岩屋に閉じこもった際に、その前で舞を踊り、天照が再び世に現れるきっかけを作ったことから、芸能の祖神として俳優(わざおぎ)、音楽、芸術、スポーツなどエンタメ全般の成功上達と縁結びにご利益があるとされている。

既に見応え十分な猿田彦神社だが、うっかり見逃してはならないのが、本殿の裏に広がる、御神田(おみた)。ここがなんとも言えず、風の吹き抜ける、気持ちのいい場所なのだ。「この田んぼの佇まいが素晴らしい。この田んぼを見ないで帰ったらもったいない」とエリイも太鼓判。

ここで、田んぼを前に祈りを捧げる不思議な男性に出会った(以後、田んぼの彼)。エリイが話しかけると、伊勢神宮のことや猿田彦神社のことをいいろいろ話してくれた。そんなとき、突如カエルの鳴き声が。すると彼は、カエルは猿田彦さまの使いだからカエルが鳴くということは、彼が来ている!のだと。後で、よくよく調べると、猿田彦さまは黄泉(死者)の国から、偉大な力で舞い戻り、現世において息を吹き返したという伝説があるらしく、そこから「黄泉の国より帰る」転じて「甦る(よみがえる)」、「黄泉カエル」、「蛙(カエル)」となったらしい。知れば知るほど奥深い。


田んぼの脇には、猿の石像も。

また、田んぼの彼に、この後(時すでに夕刻)内宮に行く旨を話すと、朝食前の朝、行くよう助言されたので、素直に従うことに。他にも、お参りの心構え、最初にどこそこに行くといいとか、服装のこととか、いろいろと教えてもらう。「神様は信じるものにしか現れないし、感じない。要は信じるかそうでないか」だと。よくよく話を聞くと、彼はなんと東京の新宿で警備の仕事をしつつ、もう一つの顔は、リーディングをする人だったらしい。新宿に縁のあるエリイにとって、まさに偶然とは思えぬお導きだった。


内宮への入口、五十鈴川にかかる宇治橋は、日常の世界から神聖な世界へ、人と神とを結ぶ架け橋なのだそう。

朝の内宮で体感した格別なエネルギー

昨日、出会った田んぼの彼の「精神が研ぎ澄まされ、集中力の高い朝、朝食前に空腹の状態で行くように」という言葉通り、朝が苦手にもかかわらず、午前8時には、張り切って内宮に到着。休日とは思えない、ほぼ人がいないという珍しい状況。外宮を黒い服でお参りしたことを反省し、今回は白いブラウス姿でいざ出発!

「もともと神聖な場だけど、朝はより一層、気を感じる。空いててよかった、おかげでエネルギーが人々の思惑で薄汚れてなく、台風の後のような一掃された澄み切った朝でした」とエリイ。


手水舎と同じようにお清めができる、五十鈴川御手洗場で昔ながらのならわし通りにお清め。この濁りのない澄んだ水!街中とは思えない透明感に驚き。

またもや田んぼの彼の教えに従い、昔の禊の場である、五十鈴川御手洗場で手をお清め。誰もいない五十鈴川は、響き渡る鳥のさえずりと水のせせらぎが清々しい気持ちにさせてくれる。その後、まず川のすぐ側の「瀧祭神(たきまつりのかみ)」に、これから天照大御神様をお参りすることを告げ、今日のお参りがうまくいくようご挨拶。そうすると、天照大御神に繋いでくれるよう取り計らってくれるのだという(もちろん田んぼの彼のウケウリ)。

神道にとても興味を持っているエリイは、お参りについてこう語る。
「普段から、ご祈祷もするし、神社にもよくお参りに行きますが、お祈りをしていると、何か神聖なものと心が触れ合う瞬間があるような気がするんです。それって子どもの頃から神社をお参りしてるから、多分得意な方なのではないかと。初心者だと、どうお参りしていいか戸惑ったり、どういう態度でのぞんでいいかわからないかもしれない。でも、私はすぐに気持ちが切り替わって、気が散らずに集中してお祈りができるというか、繋がれるというか。家でも神棚のお水を毎日替えてお祈りしていると、空気がガラッと変わって、何か未知なるものと心が触れ合う瞬間がある。きっと、それがお祈りなんだだと思います」

しっかりご祈祷もしてもらい、晴れやかな気持ちで、内宮を後にしました。


日中あんなに賑わう横丁も朝早いと人っこ一人いない。

お伊勢さんの門前町「おはらい町」「おかげ横丁」をぶらぶら散策


すっかりお腹も空いたので朝食を取ろうと、懐かしい和風木造建築が建ち並ぶ「おかげ横丁」へ。だが、10時前はほとんどのお店がまだ開いておらず、ようやく見つけた、五十鈴川を臨むカフェでモーニングセットをいただくことに。

五十鈴川カフェ

住所/三重県伊勢市宇治中之切町12
TEL/0596-23-9002
営業時間/9:00~17:30


朝食後、ようやく人もちらほら。


古き良き時代劇風の店構えのうどん屋で、名物の伊勢うどんにもトライ。たまり醤油の甘めの濃厚なつゆ(タレ)を、やわらかく煮た極太緬に絡めて食べる、伊勢うどん。今まで味わったことのない不思議な食感。

ふくすけ

住所/三重県伊勢市宇治中之切町52
TEL/0596-23-8807
営業時間/10:00~17:30

「おみやげを買っている私。“おみやげ”の語源は、お宮参りの後に買ったからおみやげになったという説を聞いたことがある。江戸時代に流行した、一生に一度のお伊勢参りだけど、何日もかけて行く大イベントだから、行けなかった人のために、鈴とかちょっとでも何か買っていってあげたことが発祥らしい。というわけで、これはお宮参りの後に買った、本来のおみやげ!」


インスタ映えなおかげ横丁の「赤福本店」


古い木造の門の奥にはお目当の「神道歴史博物館」

「神道歴史博物館」で再発見!生活に根付く神道文化

エリイが行きたいと思っていた、神道や神社の文化伝統や歴史を紹介する、皇學館大学付属「神道歴史博物館」。ここでは神社における祭祀(まつり)に用いられる祭具や装束、神社にお供えされる「神饌(しんせん)」や賀茂・春日・率川神社などの祭り事の際の「特殊神饌」などが再現・展示されている。閲覧料も無料なので、ぜひ伊勢神宮とセットで訪れてほしい。


「何よりも、供物の盛り付けというか積み方が整然としてすごい。豆まで積み上げたかと思うと、気が狂いそう」

「この展示を見たことで、今回のお伊勢参りがさらに深まったと思う。祖母の家でも、毎日、神棚の水と神木を変えたりしてたことを思い返して、実際に、私たちの生活に今も生かされていて、意識せずとも日本人に習慣として根付いていると実感。自分でもやってみようという気持ちになるから、これは行くべし。日常何気なくやっている行為のルーツが神道にあることを改めて知るいい機会だし、納得できる」

皇學館大学 佐川記念神道博物館

住所/三重県伊勢市神田久志本町1704番地
TEL/0596-22-6471
開館時間/9:30~16:30(土曜〜12:30)※入館は閉館30分前まで
休館/日曜・祝日・年末年始
URL/kenkyu.kogakkan-u.ac.jp/museum/

「斎宮歴史博物館」で学ぶ、伊勢神宮に仕えた斎王と幻の宮、斎宮とは?

エリイがとある番組で共演した占い師の先生に薦められたという「斎宮歴史博物館」。そもそも、斎宮とは、天皇の代わりに伊勢の神様にお仕えした、お姫さまのことを斎王といい、その斎王の暮らしていた場所を斎宮といったそう。

斎宮では、斎王と共に、約500人ぐらいがそこで暮らし、一つの都市のようだったと言われている。天皇が即位するたび、親族から占いによって選ばれた未婚の女性が斎王として、俗世間から離れ、家族や恋人からも引き離され、伊勢へと旅立った。天皇の交代、身内の不幸がない限り、京には戻れなかったという。そんな斎王制度は、奈良時代から約660年間続いていたとは、知らなかった。


「この噂を聞なかったら訪れていなかったと思うけれど、知ることができてよかった。長い歴史の中で660年ほどしか続いてない伝統で、しかも未婚の女性限定。年3回の伊勢神宮のお祭りに参詣するおつとめのために、天皇の在任中ずっといたなんて信じられない。斎王の中には、たった3歳の幼女から、年頃の女の子まで年齢はさまざまで、若い女性だから、許されぬ恋に落ちてしまった姫もいたとか、人間らしい側面も垣間見られて興味深かった」

斎宮歴史博物館

住所/三重県多気郡明和町竹川503
TEL/0596-52-3800
開館時間/9:30~17:00(入館は閉館30分前まで)
休館/月曜・祝日・年末年始
料金/一般¥340
URL/www.bunka.pref.mie.lg.jp/saiku/


帰りの電車では、おかげ横丁の本店で購入した、赤福を食べながら。

有意義だった伊勢の旅。エリイにとって唯一の心残りは、「お伊勢参らば朝熊をかけよ、朝熊をかけねば片参り」という言い伝えがあるにも関わらず、タイムリミットがきてしまい、伊勢神宮の鬼門を守る寺「朝熊岳金剛證寺(あさまだけこんごうしょうじ)」を参詣できなかったこと。今度こそは、朝熊山まで足を伸ばしたい。

Chim↑Pomエリイの志摩の旅はこちら

Profile

エリイ(Ellie)アーティスト集団「Chim↑Pom(チンポム)」の紅一点メンバー。パフォーマンスや映像など話題を生む作品を発表し続け国内外から注目の的。『Chim↑Pomチンポム作品集』『なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか』『芸術実行犯』など著書も多数。

Photos:Ellie, Masumi Sasaki Edit&Text:Masumi Sasaki

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