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People Talks

永瀬正敏インタビュー「ジャームッシュからの最初のプレゼントはノート」

旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.37は俳優、永瀬正敏にインタビュー。

Photos:Kohey Kanno
Styling:Yasuhiro Watanabe
Hair & Makeup:Katsuhiko Yuhmi
Interview & Text:Naoto Mori
Edit:Sayaka Ito

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イギー・ポップとの劇的な出会い

──やっぱりそうなんですか!

「『ミステリー・トレイン』を撮影した翌年、1990年ですね。ジャームッシュの自宅に行ったんですよ。当時4か月間くらいニューヨークに住んでいて、ある日、彼が電話で『明日、何してる?』って訊くから、『何もしてない。ヒマです』って言ったら『じゃあ、ウチに遊びに来ない?』って。その頃、ジャームッシュが住んでいたマンハッタンのアパートメントって、素敵な建物なのになぜか入口の鍵が壊れていて。インターホンとかも押しても全然鳴らないんですよ。だから6階だか7階だかの部屋に向けて、着いたら下から叫ぶんです。『ジ~~~~ムッ!!』って(笑)。そしたら彼が窓から顔を出して、靴下の中に鍵を入れて、それが上空から降ってくる」

──もう映画ですね(笑)。ジャームッシュの映画のワンシーンみたいですよ。

「それでエレベーターなんかないので、でこぼこの階段を上がって部屋に入るでしょ。電気もついていない、薄暗い部屋なんです。そしたらジムが『今日はスペシャルゲストがいるんだ』って。ずいぶん長い廊下の向こうに、ソファーに座っている男がいるんです。だんだん歩いていくと、どうやらシルエットがイギーっぽい(笑)。『えっ!? あれ、イギーじゃない?』ってジムに言ったら、『そうだ』って。素肌に革ジャンをはおった彼が立ち上がって『ハーイ』って気さくに挨拶してくれて、『……本物のイギーですよね?』(笑)。ジョー・ストラマーとイギー・ポップは僕の中学時代からの神様だから、その場で卒倒しそうになりましたよ」

──オフタイムなのにフィクションみたいだなあ。すごい話だ。

「完全なオフなんですけどね。ジャームッシュがサプライズで仕組んでくれた劇的な出会いでした」

──今年公開された主演作『光』では、永瀬さんのデビュー作『ションベン・ライダー』で共演した藤竜也さんと再共演されていましたね。サイクルがぐるっと一回りしているような印象を受けるのですが。

「本当に。2013年にデビュー30年を迎えたんですけど、そのあたりから自分の原点を再確認するような出来事が増えてきたんですよね。『役者の仕事、続けてきて良かったな』と思えるような」

──写真のほうは始められてどれくらいですか?

「もう20数年。祖父が写真館のおやじで、諸事情で写真の道を断念した人なんですが、最近そのことをいろいろ知って『もうちょっと真面目にやろう』と。いまはポートレートをきっちり撮りたいんですね。それまではドキュメントのような感じで撮るのが好きだったんですけど。普段もカメラはいつも何かしら持ち歩いていますね」

──『パターソン』では詩人たちがノートを持ち歩いていて、日常と共に創作がある光景が映し出されていました。

「あぁ……いま思い出しました。『ミステリー・トレイン』の時、ジャームッシュが僕にくれた最初のプレゼントが、ノートでした」

──そうなんですか!

「彼はいつも上着のポケットに小さなノートを入れていたんですよ。気づいたことや、会話をいつでもメモできるように。意識的にかどうかはわからないけど、それを『パターソン』のお話に発展させたような気がします。映画に出てくるよりも少し小ぶりのノートを、当時僕にくれましたね」

──素敵なお話ですね。永瀬さんは本当の「オフ」ってどんな過ごし方をされていますか?

「作品が入っていない時は、な~んにもしないです。ボ~ッとしてます。ひたすら自分を甘やかしてますね。作品のタイプにもよりますけど、撮影やってる期間はそちらに意識を全部集中して、カラダも苛めるだけ苛めちゃうので、たまには解放させてあげないと……っていう言い訳をしているんですけど(笑)」

ジャケット¥184,000、Tシャツ¥24,000、パンツ¥72,000/すべてYohji Yamamoto(ヨウジヤマモト青山店 03-3409-6006)

映画『パターソン』の情報はこちら

映画『ギミー・デンジャー』の情報はこちら

Profile

永瀬正敏(Masatoshi Nagase) 1966年7月15日生まれ。宮崎県出身。相米慎二監督『ションベン・ライダー』(83)で俳優デビュー。89年にジム・ジャームッシュ監督の『ミステリー・トレイン』に出演。林海象が総合監督を務めた「アジアン・ビート」シリーズ最終回の「アジアン・ビート(香港編)オータム・ムーン」は、92年ロカルノ国際映画祭でグランプリを受賞。『コールド・フィーバー』(95)、『KANO 1931海の向こうの甲子園』(14)など海外の映画にも多数出演。主な映画出演作に『息子』(91)、『学校Ⅱ』(96)、『隠し剣 鬼の爪』(04)、『毎日かあさん』(11)、『64ロクヨン』(16)、『光』(17)など。

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