<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?><rss version="2.0"
    xmlns:ldnfeed="http://news.livedoor.com/ldnfeed/1.1/"
    xmlns:content="http://purl.org/rss/1.0/modules/content/"
    xmlns:wfw="http://wellformedweb.org/CommentAPI/"
    xmlns:dc="http://purl.org/dc/elements/1.1/"
    xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom"
    xmlns:sy="http://purl.org/rss/1.0/modules/syndication/"
    xmlns:slash="http://purl.org/rss/1.0/modules/slash/"
     xmlns:media="http://search.yahoo.com/mrss/"
     xmlns:snf="http://www.smartnews.be/snf"
    >

<channel>
    <language>ja</language>
    <title>Numero TOKYOEiko Ishibashi | Numero TOKYO</title>
    <link>https://numero.jp</link>
    <description>クリエイションが詰まったインターナショナル・モード誌『Numero TOKYO』のWEBサイト</description>
    <atom:link href="https://numero.jp/tag/eiko-ishibashi/feed" rel="self" type="application/rss+xml" />
    <lastBuildDate>Fri, 03 Apr 2026 12:00:26 +0900</lastBuildDate>
    <sy:updatePeriod>hourly</sy:updatePeriod>
    <sy:updateFrequency>1</sy:updateFrequency>
        <item>
        <guid isPermaLink="false">https://numero.jp/?p=415178</guid>
        <title>濱口竜介監督のヴェネチア国際映画祭受賞作。映画『悪は存在しない』</title>
        <link>https://numero.jp/cinema-news-20240501/</link>
        <pubDate>Wed, 01 May 2024 01:00:14 +0900</pubDate>
        <lastpubDate></lastpubDate>
        <status>1</status>
        		<category><![CDATA[Culture]]></category>
		<category><![CDATA[Eiko Ishibashi]]></category>
		<category><![CDATA[Ryusuke Hamaguchi]]></category>
		<category><![CDATA[Naoto Mori / 森直人]]></category>
		<category><![CDATA[cinema review]]></category>
		<category><![CDATA[cinema]]></category>
        <description>
            <![CDATA[<article><p class="first_section"><p class="picture"></p>
<p>濱口竜介監督の勢いが止まらない。『ハッピーアワー』（2015年）が第68回ロカルノ国際映画祭の最優秀女優賞（それまで演技未経験だった主演の4人全員が対象！）などを受賞した頃から世界的な注目が一気に高まり、『偶然と想像』（2021年）で第71回ベルリン国際映画祭の銀熊賞（審査員グランプリ）を受賞。『ドライブ・マイ・カー』（2021年）では第74回カンヌ国際映画祭で脚本賞など計4冠に続き、第94回アカデミー賞国際長編映画賞を獲得。そして今回の最新作『悪は存在しない』では、2023年の第80回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞（審査員グランプリ）を受賞した。</p>
</p><p></p>音楽×映像のセッションから生まれた、自然と人間の共生や原罪をめぐる寓話的傑作
<p class="picture"></p>
<p>オスカーと欧州の三大映画祭制覇という“グランドスラム”をわずか数年で達成し、目下、無双状態にあるようにも思える濱口監督。とはいえ、こういった賞レースの華やかな戦歴とは裏腹に、『悪は存在しない』は何の衒（てら）いも装飾もない、極めて簡素なインディペンデントスタイルで撮られた「小さな映画」だ。同時にシネマティックな愉楽と豊穣さに満ち、時代や世界、そこで生きる我々人間への問いを根源から突きつける、紛れもない現代映画の傑作である。</p>
<p>まず本作は企画の経緯が少々変わっている。最初は『ドライブ・マイ・カー』の音楽を務めたミュージシャンの石橋英子が、彼女自身のライヴパフォーマンス用の映像を濱口監督に依頼した。つまり「音楽×映像のセッション」というコンセプトが起点になったのだ。そこで濱口監督が行ったのは、まず物語のある脚本を書いて、いつもの映画と同じように作品を撮影すること。結果的にその映像素材からふたつのVer.が生まれることになる。ひとつは石橋の即興演奏用のサイレント映像作品『GIFT』。こちらは2023年のベルギーで行われたゲント映画祭で初めてパフォーマンスされた。そしてもうひとつが、音声つきの劇映画として仕上げた『悪は存在しない』だ。こちらでは石橋がサウンドトラックを務め、演奏にはジム・オルークらも参加している。</p>
<p></p><p class="picture"></p>
<p>さて、では『悪は存在しない』はどういった物語が展開するのか。舞台は大自然に囲まれた長野県の水挽町（町の名前は架空のもの）。高原に位置するこの町には豊かな森ときれいな水があり、鹿などの狩猟も行われている。現在の住人は約6000人。土地の美しさに惹かれる形で、東京からの移住者も増加傾向にある。<br />
主人公は地元の山男である巧（大美賀均）。娘の花（西川玲）とふたりで暮らす彼は、薪を割り、湧き水を汲み、自然と共生するスローライフと呼べるような慎ましい日々を送っている。</p>
<p>しかしそんな折、コロナ禍のあおりを受けた芸能事務所がにわかのキャンプブームに便乗し、政府からの補助金狙いでグランピング場を建設する計画を水挽町に持ち込んできた。コンサルタントから指導を受け、東京から社員2名がやってきて説明会を開くが、森の環境や町の水源を汚しかねない強引かつずさんな開発計画に、地元住民たちは猛然と反発する……。</p>
<p></p><p><br />
映画全編は実質的に計三幕、あるいは三楽章仕立てとでもいえる構成を取っている。最初のクライマックスになるのは、グランピング場建設計画側による公民館集会室での地元住民への説明会のシーンだ。ビジネスチャンスや地域活性化という美辞麗句を並べ立て、一方的に自社都合を押しつけようとする会社側に対し、住民側から怒号が飛ぶ。このパートではルーマニア映画の『ヨーロッパ新世紀』（2022年／監督：クリスティアン・ムンジウ）やスペイン・フランス映画『理想郷』（2022年／監督：ロドリゴ・ソロゴィエン）などにも通じる、共同体の内部と外部──「こことよそ」の衝突という主題が剥き出しになるのだ。また「水は低いところに流れる。上流でやったことが、下に流れるとものすごく大きなことになる」といった台詞にも示されるように、資本主義の利潤追求による外圧で、共同体の調和のサイクルを破壊することへの抵抗には、エコロジカルな問題意識も当然鋭利に装填されているだろう。<br />
こうして場は紛糾に向かうが、そんな中、説明会に参加していた巧は丁寧な「対話」の必要性を提案する。彼はこう言うのだ。「俺は開拓三世。この土地の者は、ある意味みんなよそ者なんだ。問題はバランスだ」──。</p>
<p></p><p class="picture"></p>
<p>ここから映画は柔らかに転調する。水挽町にとって「敵」だった会社の社員である高橋（小坂竜士）と黛（渋谷采郁）の主体に視座が切り換えされ、無口で武骨な巧との「対話」的なコミュニケーションが静かに紡がれていくのだ。特にいかにも会社人間として振る舞っていた高橋は、組織の者というペルソナを脱ぎ捨て、悩み多きひとりの個人として率直に自己開示を始める。そんなふたりと巧の交流の様子──対立を超えた融和への志向は、濱口監督がお気に入りの作品だとも公言しているエリック・ロメール監督の『木と市長と文化会館　または七つの偶然』（1992年）を彷彿させるだろう。『悪は存在しない』というタイトルもグッと説得力を帯びていくが、しかし本作はこの安全な領域ではまだまだ終わらない。</p>
<p class="picture"></p>
<p>ホップ、ステップ、そしてジャンプで、この映画は安易な解釈を拒む世界へと大胆に飛躍する。強調されるのは山の深さだ。有機的でしかありえない自然の風景。マジックリアリズムの凄みすら湛えた土着と幻想。見据えるのは生態系の奥に潜む魔の闇か、決して解決することはない人間の原罪か──？　ともあれこの圧巻の光景を目撃して、破格の余韻を感じてほしい。</p>
<p>主人公の巧を演じているのは、当初は本作にスタッフとして参加していた大美賀均。濱口監督はロケハン中に彼の顔や声の良さに気づき、主演をオファーしたらしい。自然の空間に絡まるサウンドスケープの繊細な雄大さも素晴らしい。濱口監督が作品の度に重ねていく表現の広がりには驚かされるばかりだ。</p>
<p></p><p></p>
『悪は存在しない』
<p>監督・脚本／濱口竜介<br />
出演／大美賀均、西川玲、小坂竜士、渋谷采郁、菊池葉月、三浦博之、鳥井雄人<br />
音楽／石橋英子<br />
4月26日（金）より、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、K２ほか全国公開<br />
https://aku.incline.life/</p>
<p>© 2023 NEOPA / Fictive</p>
<p>&nbsp;</p>
<p></p>
<p class="btn_entry">映画レビューをもっと見る</p>
<p></p>
<p>&nbsp;<br />




石橋英子×濱口竜介インタビュー「“都市、ゴミ、そして死”というテーマを模索して」 
Interview / 15 03 2024



</p>
<p></p><p>The post 濱口竜介監督のヴェネチア国際映画祭受賞作。映画『悪は存在しない』 first appeared on Numero TOKYO.</p></article>]]>
        </description>
                            <ldnfeed:image>
                                <ldnfeed:image_link>https://numero.jp/wp-content/uploads/2024/04/extra_01.jpg</ldnfeed:image_link>
                <ldnfeed:image_subject></ldnfeed:image_subject>
                            </ldnfeed:image>
        <enclosure url="https://numero.jp/wp-content/uploads/2024/04/akuhasonzaisinai_ec.jpg" />

                                <ldnfeed:rel>
            <ldnfeed:rel_subject>ブリトニー・スピアーズ、ハイヒールで車のフロントガラスを割る</ldnfeed:rel_subject>
            <ldnfeed:rel_link>https://numero.jp/news-20240430-britneyspears/</ldnfeed:rel_link>
        </ldnfeed:rel>
                    <ldnfeed:rel>
            <ldnfeed:rel_subject>ソフィア・ブッシュ、クィアであることをカミングアウト</ldnfeed:rel_subject>
            <ldnfeed:rel_link>https://numero.jp/news-20240429-sophia-bush/</ldnfeed:rel_link>
        </ldnfeed:rel>
                    <ldnfeed:rel>
            <ldnfeed:rel_subject>エマ・ストーン、本名の「エミリー」を名乗りたい!?</ldnfeed:rel_subject>
            <ldnfeed:rel_link>https://numero.jp/news-20240428-emmastone/</ldnfeed:rel_link>
        </ldnfeed:rel>
                <related>
            <title>ブリトニー・スピアーズ、ハイヒールで車のフロントガラスを割る</title>
            <url>https://numero.jp/news-20240430-britneyspears/</url>
        </related>
            <related>
            <title>ソフィア・ブッシュ、クィアであることをカミングアウト</title>
            <url>https://numero.jp/news-20240429-sophia-bush/</url>
        </related>
            <related>
            <title>エマ・ストーン、本名の「エミリー」を名乗りたい!?</title>
            <url>https://numero.jp/news-20240428-emmastone/</url>
        </related>
                </item>
    <item>
        <guid isPermaLink="false">https://numero.jp/?p=409159</guid>
        <title>石橋英子×濱口竜介インタビュー「“都市、ゴミ、そして死”というテーマを模索して」</title>
        <link>https://numero.jp/interview430/</link>
        <pubDate>Fri, 15 Mar 2024 03:00:46 +0900</pubDate>
        <lastpubDate></lastpubDate>
        <status>1</status>
        		<category><![CDATA[Interview]]></category>
		<category><![CDATA[music]]></category>
		<category><![CDATA[Eiko Ishibashi]]></category>
		<category><![CDATA[Ryusuke Hamaguchi]]></category>
		<category><![CDATA[pickup]]></category>
		<category><![CDATA[interview]]></category>
		<category><![CDATA[cinema]]></category>
        <description>
            <![CDATA[<article><p class="first_section"><p class="picture"></p>
<p>映画『ドライブ・マイ・カー』(2021)で意気投合した石橋英子と濱口竜介監督によるプロジェクト『GIFT』。石橋から濱口への映像制作のオファーをきっかけにサイレント映像が完成し、第80回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した映画『悪は存在しない』を誕生させるに至る。直近では3月19日に東京・PARCO劇場で行われる、濱口の映像と石橋の即興ライブ演奏による「一回きり」のライブ・パフォーマンスであり、シアターピースとして続いていく『GIFT』の発案者である二人が、その道のりを振り返る。</p>
</p><p></p>『ドライブ・マイ・カー』から始まった縁
<p class="picture"></p>
<p>──シアターピースとなったプロジェクト『GIFT』の成り立ちからお伺いしてもいいですか？　2021年の11月、石橋さんと濱口さんをインタビューさせていただいたときは、まだ動いてはいなかったのでしょうか。</p>
<p>濱口「そのときはまだ始まってないですね」</p>
<p>石橋「でも、あのとき（ジャン=リュック・）ゴダールの話になったことは少し影響しているかもしれないです。きっかけについてお話しすると、海外のプロモーターの方から『映像と一緒にライブパフォーマンスをやらないか』という提案があったんですよね。いわゆる音楽と一緒に見る映像というと抽象的なイメージがあって、自分がそれをやって面白いのだろうかとあまりピンと来なくて。それでしばらくそのお話は放っておいたんです。ちょうどその頃、濱口さんの過去作品、東北記録映画三部作『なみのおと』(2011)、『なみのこえ 気仙沼』『うたうひと』(ともに2013)を観て、すごく詩的な映像表現をされる方だなと思いました。被害を受けた方たちの具体的な話ではあるんですけど、同時にそこから風景が蘇ってくるような作品をつくられる方だなと」</p>
<p>濱口「そう言っていただけるとうれしいです」</p>
<p>石橋「『ドライブ・マイ・カー』(21)でご一緒した経験がすごく楽しかったですし、私自身も、土地の記憶に興味があったので、そういうものを一緒につくれたら毎回新しい気持ちで演奏できるんじゃないかと思い、濱口さんにお願いしました」</p>
<p>──最初のキーワードは土地の記憶みたいなものだったんですね。</p>
<p>石橋「かなり漠然としていて、濱口さんもお忙しかったですし、断られるだろうなと思っていたんですけれど、まさかまさかの『やります』という返事をわりとすぐにいただきました」</p>
<p>濱口「お話を聞いたその場でもうやる方向ではいましたね。それが2021年の年末頃だったと思いますが、２日後にはやる前提でメールのやり取りをしてました」</p>
<p>石橋「びっくりしましたね」</p>
<p></p><p class="picture"></p>
<p>──できそうだという感触があったんですか。</p>
<p>濱口「いやいや、それは思わなかったんですが、まず『ドライブ・マイ・カー』でご一緒して、石橋さんが本当に素晴らしい楽曲を常につくってくださったんですよね。その後、公開に至るまで、ちょこちょこメールのやり取りなんかをして、だんだんわかってきたのは、意外と親しみやすい人だなと（笑）」</p>
<p>石橋「そう、私ね、結構メールとか事務的なことが苦手で、わりと素っ気ないふうに映る可能性があるんですけど、どうでもいい話になると盛り上がってくるところがありますね」</p>
<p>濱口「人間関係として付き合いやすかったこともありますし、自分は嫌なものは嫌だとすぐ思ってしまうほうなんですね。そう思わなかったというのはすごく大きくて。最初に企画の話でお会いしたとき、石橋さんがアルバム『The Dream My Bones Dream』をつくっている際にご自身のルーツを調べて、おじいさまが働いていた満州関連の会社までたどり着き、満州のことをリサーチしたという話を聞いて」</p>
<p>石橋「そうですね。満州の成り立ちや当時の状況なんかを調べて考えながらつくったというお話をして」</p>
<p>濱口「そういうふうに土地を歴史まで調べるところから生まれてくる音楽ってすごく面白いなと。そのときのキーワードとしていただいたのは、土地の記憶、もしくは失われた風景のようなものでしたが、石橋さんが生む音楽にピンと来るキーワードだったんですよね、自分としては。私が東北で撮ったドキュメンタリーも見たうえで話をしてくださったことがわかったので、最終的に映画になりましたけど、全然どうなるか見えなかったし、自分が、何か次に興味のあるものとして、やれるかも？という感じがしました」</p>
<p>──そこからは往復書簡のようなやりとりが始まったのでしょうか。</p>
<p>石橋「送られてきたほうも困るだろうな、という取り留めのないものを送ってました。今日、振り返ってお話しするということで、濱口さんが当時私が書いたメールを送ってくださって、読んでみたんですが、ただの不思議ちゃんのようなメールで驚きました。ただ頭の中に浮かんだことをそのまま書いていて」</p>
<p>濱口「でもその中に、例えば、具体的な映画のタイトルですとか、こういう雰囲気という手がかりのようなものは提示されていました。途中でアカデミー賞があったのでちょっと間が空いて、また会ったときに、全然わからないまま二人でキーワードを出し合ったら、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーが二人とも好きだということがわかって。ファスビンダーの『ゴミ、都市そして死』という戯曲があるのですが、タイトルに惹かれるものがあって、買おうとしているんだけれど全然買えなくて、でも気になっているんですよね、石橋さんの音楽に合うんじゃないかと思っていて、みたいな話をしたところ、『私、その上演のときの音楽やりました』と」</p>
<p>石橋「そうそう、2013年にやりました」</p>
<p>濱口「あれは不思議でしたね。その頃はこういう方向性があり得るんじゃないと、ハルトムート・ビトムスキーの映画『塵』(2012)をお渡ししたりもして。最初は都市的インダストリアル的なものから派生して、塵とかゴミをイメージし、自分も清掃工場に見学に行ったりしていたので」</p>
<p>石橋「やりとりを見返してみたら、意外と当初にお互い出し合ったイメージに近いものができたとなと思いましたね」</p>
<p>濱口「ほぼ忘れてましたけどね（笑）。そのときにブレインストーミング的に自分の手札をなんとか出して、これで合ってますかと擦り合わせしていたのは間違いではなかったんだなと」</p>
<p>石橋「当時は何がなんだかわかっていないんだけれど、そういうふうにつくられていくべきなのかもしれないと、今になって思いますよね。時間をかけて、自分の頭によぎるものを積み重ねて。それでもひとつのかたちにすることを目指しているから、全然関係ないように見える考えも、結局は作品の中に落ちていくというか」</p>
<p></p>山梨にある石橋のスタジオを訪れて
<p class="picture"></p>
<p>──その暗中模索の時期を抜け出すきっかけがあったのでしょうか。</p>
<p>濱口「それが来るのはもっと後なんですが、都市、ゴミ、そして死というテーマを都市で批判的に撮ることは、結局どこか具体的にそういう場所を借りることを考えるとプロダクションとして難しいなと思ったんですよね。それで行き詰まっていた2022年の9月に、前々から『山梨・小淵沢のスタジオに来てください』とお誘いをいただいていたので、伺いますということになった。そして、本作撮影の北川喜雄さんにカメラを回してもらって、セッションを撮らせてもらったんです」</p>
<p>石橋「そのとき、たまたま、ドラムの石若駿さんとマーティ・ホロベックさんがいて」</p>
<p>濱口「ジム・オルークさんと石橋さんの４人でセッションが始まって。昨日も観直してたんですけど、ものすごくかっこよくて。それで、なるほど、セッションからこういう感じの音楽が生まれてくるのかということはわかっても、何を撮ったらいいかはまだわからなくて。それで、撮らせてもらった映像と、既存のクラシックの映像なんかをはめてみたものを石橋さんに送ったら、メールで、濱口さんが普通にやったほうがもっと面白くなると思いますよ、みたいなニュアンスのお返事をいただいたんですよね」</p>
<p>石橋「そうですね。濱口さんが音楽と合わせるとしたら……という気持ちでつくるよりも、音楽を一旦忘れて、独立したものとしてつくったらきっと絶対面白いと思って」</p>
<p>濱口「それで2022年の12月にリサーチが始まって、石橋さんのお知り合いで、山梨県の県境や長野県に住んでいる方を紹介してもらい、その方々が本当に的確だったんですよね」</p>
<p>石橋「原村に住んでいらっしゃる、森のエキスパートみたいな方がいて。子どもたちが来たら、流しそうめんの装置を竹でつくったり、魚も手摑みで取ったりされていて」</p>
<p></p><p>『GIFT』京都公演より<br />
──そこから脚本ができていったんですね。</p>
<p>濱口「そうですね。映画『悪は存在しない』の脚本が。結局、自分には普通に映画を撮るということしか、どうもできないらしいと。段取りとしては、脚本を書き、それに基づいた劇映画を撮るのが今までやってきて、いちばん得意なことだろうということで、まず、劇映画をつくることにしたんです。経験上、１本の劇映画を撮る際には、大量の素材が生まれるはずだから、その何十時間の映像の中から、ライブパフォーマンス用のものをつくろうと思いました。石橋さんと話してきたようなことや、こういう映像がいいんじゃないかというものを自然と撮ってしまうような脚本を書こうと。ただ、そこからどういうふうにライブパフォーマンスの映像ができるかはわからないままでした」</p>
<p>石橋「濱口さんが、映像から『悪は存在しない』という映画をつくるという最終的な判断をされたとき、やった！ と思いました」</p>
<p>──映画『悪は存在しない』は、石橋さんの音楽が基盤にあるわけですが、何度も繰り返しかかる、冷たくてドライでありながら、感情を静かに揺さぶってくるような美しいテーマソングはどの段階で生まれたものなんですか。</p>
<p>石橋「脚本がもう素晴らしかったので、読んだ時点とラッシュみたいなものを少し見た時点で、一回『GIFT』のことはどうでもよくなってしまったんです（笑）。それで曲をつくり始めました」</p>
<p>──濱口さんから石橋さんへのリクエストはあったんでしょうか。</p>
<p>濱口「一応、ある種のヒントみたいなものとしてあったのは、塵の話をしていた2022年の8月頃に『塵』をテーマにつくったデモを４曲送ってもらっていたんですが、そのこともすっかり忘れていたんです（笑）」</p>
<p>石橋「私もすっかり忘れてました（笑）」</p>
<p>濱口「結局、そのうちの3曲は映画でサブテーマ曲として使わせてもらっています。でもまあ、流れを振り返れば、そのテーマだからこんなにしっくりくるのか、みたいな感じで。一方でメインテーマに関しては、セッションの映像を撮った経験から、石橋さんが自由にやっているとできてくる音楽を自分の中でイメージできたので、それを想像しながら撮った映像を編集したものを2023年の4月末に渡して、そこからつくっていただきました」</p>
<p>──複雑な気持ちにさせられるというか、どこか懐かしさもあって、強い余韻が残るテーマソングですよね。</p>
<p>濱口「本当に。メインテーマとして、もう１曲使っているストリングスの曲を最初に送っていただいたのですが、そちらは不穏さが際立っていて、もう少しどっちつかずみたいなものをお願いしたときに出てきたのが今のメインテーマで、バシッとはまった感じがありました」</p>
<p>石橋「ゴダールの『軽蔑』(1963)に何度も出てくるテーマソングのような使い方ができたらいいな、みたいな話を濱口さんとしていたんですよね」</p>
<p></p>音楽が広げた映画の可能性
<p>『GIFT』京都公演より</p>
<p>──『軽蔑』のテーマソングを「打ちのめされる音楽」とおっしゃっていましたね。</p>
<p>石橋「そうそう。だから、そこに一旦戻ったみたいなところはありましたね。2023年の4月、私はちょうどジムさんとデュオのヨーロッパツアーをしていて、イタリアで６時間の電車移動があったので、そこで『軽蔑』をもう一度観て、やっぱり素晴らしいなと思ったんですよね。そこから、こういうメロディがいいんじゃないかと歌ったものをメモ録して、それを元にストリングスのスコアを書いていきました」</p>
<p>濱口「あるとき、石橋さんから、『思いついたのでいけると思います』ってメールが届いて」</p>
<p>石橋「そういう感覚的なことをすぐメールで送ってしまって、本当にすみませんでした（笑）」</p>
<p>濱口「いやいや（笑）。自分もMIDI（データ）の段階でテーマソングを受け取ったとき、めちゃくちゃ興奮しました。その場で映像にもはめてみて、そうなんですよ！と思いました（笑）。ポスプロ（ポストプロダクション）のスタッフにも聴いてもらって、中には『この簡素な映像に対して、すごく壮大じゃないか』という意見もありましたが、いや、違うんだと。そう見えるかもしれないが、この映像の中に、この音楽が示しているような可能性があって、今までずっとこの映像に慣れ親しんでいると気づかないかもしれないが、石橋さんの音楽がその可能性を表現してくれているし、観客はすごくそれをスッと受け入れてくれるだろうという気はしました」</p>
<p>──そうやって映画『悪は存在しない』が制作されるなかで、『GIFT』はどうなっていたのでしょう？</p>
<p>濱口「実は、編集自体はどちらも並行してやっていました。『悪は存在しない』の編集は自分が中心にやっていて、『GIFT』のほうが『THE DEPTHS』（2010）『寝ても覚めても』（2018）『ドライブ・マイ・カー』（2021）を編集してくれた山崎梓さんに、一度、大量の素材を渡してですね……」</p>
<p>──投げつけたわけですね。</p>
<p>濱口「本当にこれは、投げつけるという言葉が正しいかもしれないです（笑）」</p>
<p>石橋「山崎さん、脚本も読んでいなかったんですよね」</p>
<p>濱口「そうですね。音もつけてないので、山崎さんはよくわからない映像を16時間も見せられて（笑）、その中で彼女なりにテーマごとに分け、風景の中に映っているもの、些細な動き、いろんなアクションをずっと分類し、最終的に『いいじゃないですか！』というものまで持っていってくれました。ただ、オーダーとしては75分から90分くらいという長めの作品でしたが、物語がなくても自分たちが撮った映像で40分くらいまでは集中力が持つけれど、それ以上は難しいだろうと思ったんですよね。それで途中から、山崎さんに『悪は存在しない』の編集を見せて、物語の流れを共有して、それならこうつなぎましょうという提案も増えていきました。『GIFT』の編集を見て、へぇ、このテイク使うんだと思って、『悪は存在しない』でも使いましたし、そういうやりとりは新しい試みでしたね」</p>
<p></p><p>映画『悪は存在しない』より　© 2023 NEOPA / Fictive<br />
──字幕を付けるという判断もこの辺りで出てきたことなのでしょうか。</p>
<p>濱口「最終的に最低限の字幕を付けたのは、ストーリーを全く知らないと映像の中で本当に起きていることが四方八方に飛び散っていくような体験になって、全方位的に想像力を使われすぎてしまうなと思ったからです。そうじゃなく、映っているものを見てほしい。だとすれば、この物語はシチュエーションとしてはこういうことですとわかったほうが、使う想像力が限定され、見えているものについて集中して考えてもらえるのではないかなと」</p>
<p>──『GIFT』は第50回ゲント国際映画祭でのワールドプレミアを経て、日本では東京フィルメックスでのプレミアがあり、ロームシアター京都、PARCO劇場での公演と続きますが、今後はシアターピースとしてどう発展していくのでしょうか。</p>
<p>石橋「現時点で言えるのは、毎回、映像から見えてくるものが違うんですよね。どういう絵が出てくるかという順番も全く覚えられないんですよ。そうやって編集されているからいつも初めてのような感覚で、私自身面白く観ているので、たぶん、お客さんともそれを共有できるのではないかと思います」</p>
<p>濱口「本当に編集の山崎さんの力が大きいと言いますか、最低限ストーリーはあっても、物語的な編集ではなく、機会があれば逸れていくし、他のところへ広がっていくようにつなげられているんですよね。だからたぶん、論理的に記憶しようと思ってもできないようなかたちになっている。ラッシュの段階で何度も何度も見て、彼女がそこに映っているいろんな動きを発見してくれたので、『GIFT』のパフォーマンスを見ていると、石橋さんがそういうひとつ一つの動きに反応して演奏していると感じる。なので、山崎さんが見つけて、置いておいてくれたものが生きているんじゃないかと思います。でも本当に、毎回どんなふうにプレイしているんですか？」</p>
<p>石橋「会場の響きも違えば、スクリーンの大きさも違うので、時間の感覚が自分の中で歪むんですよね。会場の音の残り方もありますし、映像と一緒にやるとき、どこで始めてどこで止めるかによって、自分自身が出している音や印象が大きく変わる。毎回スイッチになるものが毎回違うので、それがうまくいったりうまくいかなかったりするんですが、自分はあんまりだったと感じても、他の人はそう思っていないこともありましたし、すごくいろんな可能性があるなと思います」</p>
<p>濱口「本当にその通りだなと」</p>
<p>石橋「自分の中で正解がないというプロジェクトになっているので、これからも長い付き合いになるのではないかなと。結果的に、1回きりの何かにはなっているので、お客さんにとってもそういうものになっていったらうれしいですね」</p>
<p>濱口「今回、石橋さんとのこれまでのメールのやりとりを見返して、勇気づけられました。今もよくわからないことをたくさん抱えながらやっているのですが、このよくわからないことがきっと何かにつながるだろうという気持ちになれています」</p>
<p>石橋「よかったです。がんばってください！ これからの作品も楽しみにしております」</p>
<p></p><p class="picture"></p>
「GIFT」東京公演
<p>日時／2024年3月19日（火）<br />
会場／PARCO劇場<br />
住所／東京都渋谷区宇田川町15-1　渋谷PARCO 8階<br />
開場／18:00 　開演／19:00<br />
料金／¥4,500（全席指定）<br />
https://stage.parco.jp/program/gift-2024/</p>
<p></p>
『悪は存在しない』
<p>監督・脚本／濱口竜介<br />
音楽／石橋英子<br />
出演／大美賀均 西川玲<br />
4月26日（金）より、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、K２ほか全国公開<br />
https://aku.incline.life/</p>
<p></p><p>The post 石橋英子×濱口竜介インタビュー「“都市、ゴミ、そして死”というテーマを模索して」 first appeared on Numero TOKYO.</p></article>]]>
        </description>
                            <ldnfeed:image>
                                <ldnfeed:image_link>https://numero.jp/wp-content/uploads/2024/03/main_still_08.jpg</ldnfeed:image_link>
                <ldnfeed:image_subject></ldnfeed:image_subject>
                            </ldnfeed:image>
        <enclosure url="https://numero.jp/wp-content/uploads/2024/03/ishibashi_hamaguchi_2024_ec.jpg" />

                                <ldnfeed:rel>
            <ldnfeed:rel_subject>小泉今日子・峯村リエ インタビュー「少女の頃の自分に救われて」</ldnfeed:rel_subject>
            <ldnfeed:rel_link>https://numero.jp/interview392/</ldnfeed:rel_link>
        </ldnfeed:rel>
                    <ldnfeed:rel>
            <ldnfeed:rel_subject>小泉今日子・小林聡美 インタビュー「私たちにもみんなにも、心の中に阿修羅はいる」</ldnfeed:rel_subject>
            <ldnfeed:rel_link>https://numero.jp/interview335/</ldnfeed:rel_link>
        </ldnfeed:rel>
                    <ldnfeed:rel>
            <ldnfeed:rel_subject>中村倫也インタビュー「僕との仕事を楽しんでくれる人が、最高のパートナー」</ldnfeed:rel_subject>
            <ldnfeed:rel_link>https://numero.jp/interview311/</ldnfeed:rel_link>
        </ldnfeed:rel>
                <related>
            <title>小泉今日子・峯村リエ インタビュー「少女の頃の自分に救われて」</title>
            <url>https://numero.jp/interview392/</url>
        </related>
            <related>
            <title>小泉今日子・小林聡美 インタビュー「私たちにもみんなにも、心の中に阿修羅はいる」</title>
            <url>https://numero.jp/interview335/</url>
        </related>
            <related>
            <title>中村倫也インタビュー「僕との仕事を楽しんでくれる人が、最高のパートナー」</title>
            <url>https://numero.jp/interview311/</url>
        </related>
                </item>
    <item>
        <guid isPermaLink="false">https://numero.jp/?p=316546</guid>
        <title>石橋英子×濱口竜介インタビュー「素晴らしい映画音楽は隠されたエモーションを引き出してくれる」</title>
        <link>https://numero.jp/interview291/</link>
        <pubDate>Wed, 29 Dec 2021 09:00:55 +0900</pubDate>
        <lastpubDate></lastpubDate>
        <status>1</status>
        		<category><![CDATA[Interview]]></category>
		<category><![CDATA[People]]></category>
		<category><![CDATA[cinema]]></category>
		<category><![CDATA[Eiko Ishibashi]]></category>
		<category><![CDATA[Ryusuke Hamaguchi]]></category>
		<category><![CDATA[pickup]]></category>
		<category><![CDATA[music]]></category>
		<category><![CDATA[interview]]></category>
        <description>
            <![CDATA[<article><p class="first_section"><p class="picture"></p>
映画と音楽のちょうどいい関係性とは？
<p>濱口竜介（以下、濱口）「映画を観るとき、僕は正直そこまで音楽に注意を払って聴いていないという感覚なんです。もっと言うと、必ずしも注意を払う必要なくそこに存在してくれる映画音楽のほうが好き、というところはあります。なので、記憶に残りすぎる音楽というよりは、根本的には冷んやりとした音楽だったり、使い方がすごく好きでして」</p>
<p>石橋英子（以下、石橋）「濱口監督は音楽の使い方、タイミングにすごくこだわりを持っていらっしゃいますよね。物語や役者さんの話すリズムが映画の中では大事だから、それに準じてどこから音楽が始まってどこで切れるのかは、どんな音楽をつくるのかと同じくらい映画にとって重要なことなんだなとあらためて思いました。だから『ドライブ・マイ・カー』（2021）のときはすごくうれしかった。使ってくださった場所とタイミングと長さ。ホームランを打ってくださったなと」</p>
<p>濱口「ありがとうございます。カンヌ映画祭ですごく音響のいい劇場で上映を観たときに、あまり自分の映画で体験したことはないんですけど、ちょうど映画の中間部分で、石橋さんの音楽と車の走行が合わさって鳥肌が立つような瞬間がありました。音楽によって感情を掻き立てるんじゃなく、あくまで感情が起きてからそれに乗っかって音楽が入ってくることが重要なんですよね」</p>
<p>石橋「濱口監督の映画はとても音楽的で、セリフのあるところと沈黙も同じような重さを持っている。意識と無意識が行き交うようなこと、それは即興演奏などでも感じることです。私もそういう感覚を大事にしながらつくりたいと思いました」</p>
</p><p></p><p></p>
<p>濱口「音楽によって感情が出てくるのは本当にそうだなと思うけれど、単純にセリフをリズムや響き、メロディみたいなものとして考えるところある。聴き心地いいかも含めて。自分が聴いていて何かを感情として呼び起こされるようなものがOKテイクになるので、ミュージシャンの石橋さんを前に言うのは恥ずかしいですが、そういう点で音楽的には考えようとはしていますね。石橋さんが好きだったり、憧れたりする映画音楽って、どんなものですか？」</p>
<p>石橋「『コールガール』（1971）、『パララックス・ビュー』(1974）、『ナイトムーブス』（1975）の映画音楽をやっているマイケル・スモールという人。ビブラフォーンやブラスバンドを使ったりしているのだけれど、冷んやりさがあって。ドラマチックなのに何も起きていない、ただ視線がずっとある感じ。そういう温度感の音楽ってなかなかないなと。あと王道でいくと、007のテーマ曲をつくったジョン・バリーも好きですけどね」</p>
<p>濱口「マイケル・スモール、恥ずかしながら知らないです。ジョン・バリーの方は007のテーマぐらいは何となくわかりますけど。僕はけっこう偏っていて、映画音楽に気がつく場合、ある種馴染んでいなかったり、距離があったりもするんですが、その馴染まなさそのものを逆手に取るような使い方がけっこう好きで。黛敏郎が音楽を手がけた溝口健二監督の『赤線地帯』（1956）は、あの当時にあれほど現代的なサウンドがあったのかというほど、電子音が全編通してかかっていて、すごく不穏。嫌な予感しかしない（笑）。でも、音楽のありようはすごく合っていて、映画と一体なものとして思い出せる。あとは、ベタですが、自分がいちばん参考にしている音楽の使い方はジャン=リュック・ゴダール監督の『軽蔑』（1963）。ジョルジュ・ドルリューが素晴らしい音楽をどんなときでも流すんです。ごくごく美しいタイミングの場面でも感情的には殺伐とした場面でも流れていて、ただメロディが美しいが故にすごく冷んやりとした使い方になっている」</p>
<p></p><p class="picture"></p>
<p>石橋「距離感が出てくるんですね」</p>
<p>濱口「そうです。音楽が俯瞰してみる視点を与えてくれるような使い方は、吉田喜重の『秋津温泉』（1962）にもあります。男と女が出会って不幸な結末になるという話ですが、林光が手がけたメインテーマがどのような瞬間も変わらずに寄り添っている。そこまで大胆にやるわけではないですが、そういう映画音楽の使い方は参考にしています」</p>
<p>石橋「確かに同じ曲が何度も出てくると、観る人を思考させてくれますよね」</p>
<p>濱口「音楽的には語れないですが、気になっているのはロイ・ウェッブというハリウッドの映画音楽家。たぶん100本以上映画音楽をやっていて、いちばん有名なのはアルフレッド・ヒッチコック監督の『汚名』（1946）だと思いますが、ハワード・ホークス監督の『赤ちゃん教育』（1938）なども手がけている。ただ、映画の内容はけっこうちゃんと記憶しているのに、ロイ・ウェッブの音楽自体は全然覚えていない（笑）。なので特徴も語れません。でも、あ、またロイ・ウェッブが音楽やってる、とクレジットで見る機会はすごくある。そんなことを言っちゃ申し訳ないかもしれませんが、それが自分の中の理想の映画音楽のあり方かもしれないです。でも、語るならまずちゃんと聞けという話ですが。石橋さんが観ていてハッとさせられた音楽の使い方ってあります？」</p>
<p>石橋「最近観たリチャード・ラッシュ監督の『スタントマン』（1980）。繰り返し４小節くらいの派手な熱血リフが出てくるだけなんです。けっこう頻繁にかかるので最初はちょっと邪魔かなと思ったけれど、だんだんそれが心のスイッチになってくる。その曲がかかったシーンのフラッシュバックにもなる効果があって。こういう音楽の使い方があるんだと」</p>
<p></p><p>石橋「初めて買ったサントラは『グレムリン』（1984）」
濱口「僕はいちばん最初に買ったCDがサントラ。『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』（1990）です」</p>
隠された感情を引き出す、映画音楽の力
<p>濱口「音楽はやっぱり、映像以上に観客の心情と密接であり得ますよね。（ジョン・）カサヴェテス映画の音楽を手がけているボー・ハーウッドという作曲家がいて、映画におけるエモーションを音楽が全く邪魔しないんですよね。ハーウッドはカサヴェテスと一緒にサウンドデザインもやっていたらしく、ゴダールみたいに『ここだ！』ってタイミングで音楽が入ってくる。『こわれゆく女』（1974）でジーナ・ローランズが子どもをバス停で迎えるシーンでかかるのが、爽快な音なんです。それがその空間全体を表しているようでもあり、入ってくる１音で雰囲気を変えることができている。あの感じはなかなか出せないなと。ボー・ハーウッドは今に至ってもそこまで有名な音楽家ではないと思いますが、ぜひもっと再評価されてほしいです」</p>
<p>石橋「結構埋もれている映画音楽家は多いと思います。でも映画の音楽として機能している以上、それは仕方のないことだとも思います。カサヴェテスは音色、音が出てくるタイミングなど、本当にジャストですよね」</p>
<p>濱口「音楽がそのシーンをつくっていくようなところもあるんだけど、それが全然過剰じゃなくて、この画面からこういう感情を読み取っていいんだと翻訳してくれる。そうやって、隠されたエモーションを引き出してくれるのが素晴らしい映画音楽なのではないかと思います。単に映像とその場で撮った音響を組み合わせただけでは表現できない部分を、映画音楽に助けに来てもらうみたいな」</p>
<p>石橋「私は人生の中でいちばん大事な映画が『オープニング・ナイト』（1977）なんです。10代のときに観て衝撃を受けて。最後の舞台上の、カサヴェテスとジーナ・ローランズのやり取りを見て、どんなに歳をとって経験を積んでもあのようにはみ出して踏み出して生きていかなきゃいけないんだと思いました（笑）」</p>
<p>濱口「僕も人が生きるってこんなにもポテンシャルがあるんだ、とカサヴェテスの映画を観て理解したというか。それは本当に現実を捉えてつくられたものであり、現実の中にそういう可能性があるということだから、すごく力付けられますよね。『ドライブ・マイ・カー』でも演劇を扱っていますが、『オープニング・ナイト』は話の流れとは全然つながらない演劇を即興でやっているんですよね。舞台にも観客が入っていて、実際の客席の反応があってラストシーンとして成り立っているし、強度を持つ。何より、実際の観客の前であの即興をする勇気がすごいなと」</p>
<p>石橋「破綻しちゃってますもんね」</p>
<p>濱口「そう。でもそこで突き抜けて、ジーナ・ローランズが演じる女優の生きる力が回復したと本当に感じることができる。だから、そこへの道は遥か先だなと。自分に時間がたっぷりあるとは思ってはいけないというか。カサヴェテスが『オープニング・ナイト』を撮ったのは、自分が生まれた年だったんですよね。たぶん撮影当時カサヴェテスは47歳くらいで、僕は今年43歳なので、そこまで年齢は変わらないんですよね」</p>
<p></p><p class="picture"></p>
ミュージシャンを打ちのめす、ゴダールの身体性
<p>濱口「石橋さんはゴダールの音使いについてはどう思っていますか？」</p>
<p>石橋「私にとってはもはや手に届かないわけのわからない存在です。ゴダール作品の背景にミュージックコンクレートの流れというものがあったとしても、論理では説明できないものがたくさん詰まっている。そして大きな特徴として脚本、映像と同じくらい音楽が同等に扱われている。カットアップ、音量、セリフとのバランス、立体感、どれをとってもゴダールの映画を見ると普通に音楽を作っている人間として打ちのめされてしまいます。音楽、セリフ、物音など全ての音の流れが素晴らしい」</p>
<p>濱口「ミュージシャンを打ちのめす映画作家。音楽性の極地ですね」</p>
<p>石橋「そう、自分にとってはですけど。『アワーミュージック』（2004）の音楽の使い方はいちばん特殊で、不思議ですね。ちょっとゴダールらしくない」</p>
<p>濱口「抒情的な音楽が急にクローズアップして入ってきて、こんなにベタに感動させてもらっていいのかしら、みたいになりました」</p>
<p>石橋「そうそうそう！　あれは拍子抜けというかびっくりして。と同時にいいなとも思ったんです」</p>
<p></p><p>濱口「今までの文脈を踏まえて、逆にそういう使い方に不意をつかれる場合もあって、その結果として普通にそういう場面を見る以上にめちゃめちゃ感動してしまうこともありますよね」</p>
<p>石橋「濱口監督はどうですか？」</p>
<p>濱口「でも、映像を音楽のように捉えるとはどういうことなんだろうと思ったときに、恥ずかしいですけど、いちばんゴダールのことを考えます。映像は音楽的でありうるのだと教えてくれる。特に、音と映像の対等な融合を意味するソニマージュを実践している80年代以降は、どうしてこんなに気持ちがいいんだろうと思うのにその理由が全くわからないので、観ながら打ちのめされて恍惚とするみたいな部分はあって。同じことが自分にできるかというと絶対にできない。彼の体に由来している快感原則によって、手作業でその都度見つけているのではないだろうか。それって、すごくミュージシャンに近いんじゃないかなって」</p>
<p>石橋「こういうふうに動かざるを得ないという身体性がある。楽器の演奏に近いですよね。例えば１音鳴らせばこの人の音だとわかるのと同じように、数秒間の映像があればゴダールとわかってしまう。もう太刀打ちできない。監督も身体性は出ますよね？」</p>
<p>濱口「監督って何もしないんです。つまり、音楽はつくっていないし、カメラは撮影の人に回してもらうし、演技は役者の人にやってもらうのに、それを『なんかイヤ』みたいな、究極的には言語化できない生理的な感覚でOKかNGかをジャッジすることを任されている。だからある意味、その人の有り様がめちゃめちゃ反映されるっていうことはあると思うんですよね。監督だけで映画を語るのはあんまり良くないと思いますが、そこにけっこう強烈にその人が一体どういう身体性を持っているのかが反映されてしまう。音楽だってそうですよね。弾く人によって同じ曲も全然違って聞こえるわけですもんね」</p>
<p></p><p class="picture"></p>
偶然をつなぎ、物語を惹きつけるシューマンの曲
<p>石橋「濱口監督の新作映画『偶然と想像』の予告編でシューマンがかかるじゃないですか。私、たまたまシューマンの『子どもの情景／見知らぬ国と人々について』が使われている映画を立て続けに観て」</p>
<p>濱口「おや、なんですって」</p>
<p>石橋「（ライナー・ヴェルナー・）ファスビンダーが監督したテレビシリーズ『あやつり糸の世界』（1973）と、映画館で観たダニエル・シュミット監督の『ヘカテ』（1982）。その後に家に帰ってきて、アラン・J・パクラの『ソフィーの選択』（1982）を観たら、本編だけでなく予告編でもこの曲がかかってたんです。メリル・ストリープとケヴィン・クラインが部屋の中で弾くのが同じ曲なんですよね。偶然が続いて、そのタイミングで『偶然と想像』の予告編を拝見して、それも『うわぁ、偶然』と思って」</p>
<p>濱口「そこまで被るとちょっと恥ずかしいですね（笑）。本当にすごくニュートラルというのか、とても使いやすい曲なんですよね。キャッチーで優しいメロディなんだけど、いい具合に不穏でどこにいくのかわからない感じが好きなんです。それで、ストックしておいて、今回使おうと決めました」</p>
<p></p><p></p>
<p>石橋「私も大好きです、シューマンの曲。ロマン主義の作曲家だけれど劇場っぽさがない。ちょっと冷んやりしてて、対象物を遠くに感じる。遠い景色を見ているような気持ちでピアノを弾ける曲が多いなと」</p>
<p>濱口「あの曲がすごいのは、どんな場面の感情ともリンクする部分を持っている。悲しいとかつらいとか、ちょっと明るいとか。それが全部あって、どこにハメてもその映画と寄り添ってくれる。繰り返し聞けるような軽やかさもあって。脚本も聴きながら書いていたんですが、そういう音楽と出合ったことで、これはできそうだなと進むことができました」</p>
<p>石橋「観客に笑いが起きてると聞きました」</p>
<p>濱口「さっきも言ったように本当に冷めた音楽の使い方をすることによって、それで距離が取れるということもあるのかもしれないです。通り過ぎるものをアハハハと笑って見ていられるような」</p>
<p>石橋「曲のタイトル（子どもの情景）のように、子どもの視点のような効果があるのかもしれませんね」</p>
<p></p><p>©2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
</p>
『ドライブ・マイ・カー』
<p>監督／濱口竜介<br />
音楽／石橋英子<br />
出演／西島秀俊、三浦透子、霧島れいか、岡田将生<br />
全国にて公開中<br />
dmc.bitters.co.jp<br />
配給／ビターズ・エンド　</p>
<p class="picture"></p>
<p><br />
石橋英子『Drive My Car Original Soundtrack』<br />
[LP] 初回限定生産商品　￥3,500<br />
[Digitai]　ssm.lnk.to/DMCOS<br />
[CD]　￥2,500</p>
<p></p><p>©2021 NEOPA / fictive</p>
『偶然と想像』
<p>監督・脚本／濱口竜介<br />
出演／古川琴音、中島歩、玄理、渋川清彦、森郁月、甲斐翔真、占部房子、河井青葉<br />
12月17日（金）より、Bunkamuraル・シネマほか全国公開<br />
guzen-sozo.incline.life<br />
配給／Incline</p>
<p class="btn_entry">
映画『ドライブ・マイ・カー』西島秀俊インタビューはこちら</p>
<p></p><p>The post 石橋英子×濱口竜介インタビュー「素晴らしい映画音楽は隠されたエモーションを引き出してくれる」 first appeared on Numero TOKYO.</p></article>]]>
        </description>
                            <ldnfeed:image>
                                <ldnfeed:image_link>https://numero.jp/wp-content/uploads/2021/12/eiko_dmc_cover.jpg</ldnfeed:image_link>
                <ldnfeed:image_subject></ldnfeed:image_subject>
                            </ldnfeed:image>
        <enclosure url="https://numero.jp/wp-content/uploads/2021/12/ishi_hama_ec.jpg" />

                                <ldnfeed:rel>
            <ldnfeed:rel_subject>俳優、山田孝之が映画<br>『俺はまだ本気出してないだけ』出演を決めた理由</ldnfeed:rel_subject>
            <ldnfeed:rel_link>https://numero.jp/news-20130708-yamadatakayuki/</ldnfeed:rel_link>
        </ldnfeed:rel>
                <related>
            <title>俳優、山田孝之が映画<br>『俺はまだ本気出してないだけ』出演を決めた理由</title>
            <url>https://numero.jp/news-20130708-yamadatakayuki/</url>
        </related>
                </item>
</channel>
</rss>
