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    <title>Numero TOKYO手洗い | Numero TOKYO</title>
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    <description>クリエイションが詰まったインターナショナル・モード誌『Numero TOKYO』のWEBサイト</description>
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        <title>妊産婦を救った“手洗いの伝道師”センメルヴェイスの物語</title>
        <link>https://numero.jp/20200624-wash-your-hands/</link>
        <pubDate>Wed, 24 Jun 2020 11:00:03 +0900</pubDate>
        <lastpubDate></lastpubDate>
        <status>1</status>
        		<category><![CDATA[Lifestyle]]></category>
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            <![CDATA[<article><p class="first_section">“手洗いの意味”に目覚めたパーリーピーポーたち
<p>西暦2020年──こんな未来が訪れることを、いったい誰が予測できただろうか。<br />
というのは原始、アフリカの片隅で生まれ、身を守る鋭い爪や牙、体毛を持たず、肉食獣に怯え、ちまちま暮らしていた頭でっかちの人間たちのこと。こいつらがやがて道具を作り、科学と技術とを発展させて空前絶後、これまでになく大胆に他の生き物を駆逐、地球上あらゆる場所をのし歩いては森を焼き、ゴミを海に垂れ流してはばからない。つまりはイケイケである。自分たちの目指す異次元の幸せのため、目に見える邪魔には極めて迅速に三本の矢などを発出、陸海空のすべてに打ち克って、勝手気ままな長期政権を謳歌してきた……はずだった。</p>
<p>ところがここへ来て、この地球史上最大のパーリーピーポーのバイブスに大ブレーキがかかった。原因不明の病で、バタバタと人死にが出始めたのである。パリピは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の主を除かねばならぬと決意した。ところが、この相手は目に見えず、匂いも味もしない。そもそも生き物ですらないという。生きているのか死んでいるのかさえわからないウイルス風情に、この人間が口を布で塞いで恐れおののき、自粛要請やアラートを余儀なくされるだと？</p>
<p>しかし全世界77億の人類には、ある秘策があった。それは子どもからお年寄りまで誰もがやさしく簡単にできるのにもかかわらず、高度に洗練されたスマートなやり方。かのWHO（世界保健機関）も全世界に向けてポスターを作成、「よく励むように」とメッセージを発信している程である。</p>
https://www.who.int/infection-prevention/campaigns/clean-hands/en/
</p><p></p><p>もうおわかりだろうか？ “手洗い”である。大袈裟でも何でもなく、これこそは大変に人間的かつ、科学的なエビデンスによってソフィスティケイトされたソリューションなのだった。事実、地球上にこれができる生物は他にはいない。アライグマがいるじゃないかと思うかもしれないが、あんなものは視力が悪いため手先で水の中の獲物を闇雲に漁っているだけらしく、意味や効果を理解した上で励行するのとは次元が違う。</p>
<p>だとすれば人間はいつ、“手洗いの意味”に目覚めたのか。調べてみて驚いた。というのも、今や誰もが信じて疑わないその効果は、わずか150年あまり前、数多くの妊産婦たちの命を救いながら後ろ指をさされて死んでいった、一人の悲運の医師によってもたらされたものだったから。</p>
<p>センメルヴェイス（ゼンメルワイス）・イグナーツ（1818-1865）。 （Photo : Science Source/アフロ）</p>
<p></p>産婦の死亡率を劇的に下げる合言葉「手を洗いませう！」
<p>センメルヴェイス（ゼンメルワイス）・イグナーツ、1818年生まれのドイツ系ハンガリー人医師。当時のハンガリー王国の首都ブダ近郊に生まれ、オーストリア帝国の第二ウィーン医科大学に進んだ。ここで博士号を修め、26歳の年にウィーン総合病院の第一産科で研修医の助手に就く。日本の医療ドラマに例えるなら『JINー仁ー』の少し前、幕末に近い頃のことであろうか。</p>
<p>そこでセンメルヴェイスが目にしたのは、出産を控えて泣き叫ぶ妊婦たちの姿だった。彼女らはその報せを聞くや茫然自失、時に医師の足元にすがりついてまで、「先生、第一産科へは断じて行きたくありませぬ。後生ですから、どうか、どうか第二産科へ。何卒、よしなにお取り計らいくださりませ。なむなむ」と涙ながらに哀願した。なぜか。第一と第二、隣り合う二つの建物のどちらに入院するかによって、妊産婦の死者数に開きがあったのだ。センメルヴェイスが赴任した1844年から3年間の死亡率を比べても、第二産科の2〜3パーセントに対して、第一産科は8〜11パーセント。医療レベルはどちらも同じ、むしろ第二産科のほうが混み合って過密な状態にもかかわらず、どうして差が生じるのだろうか？ 真相は謎に包まれたままだった。</p>
<p>その頃、妊産婦の命を奪う主な原因としては、出産から10日以内に高熱を発し、場合によって下腹部の痛み、悪臭を伴う出血や膿みなどを伴う「産褥熱（さんじょくねつ）」が知られ、産婦の死亡率は最高で約30パーセントにも達していた。が、この原因がよくわからない。当時のウィーンではまだ病原菌の存在が知られておらず、傷は化膿して当たり前、むしろ膿を出し切ることで治るものだと考えられていた。つまり、ある意味で“そういうもの”だったのである。</p>
<p>ところが1847年、第一産科で学生に解剖指導をしていたセンメルヴェイスの同僚のヤコブ・コレチカが、死亡した患者の検体の際に誤って自分の指を傷付けてしまい、その後、産褥熱と同様の高熱を発して亡くなるという事件が発生。産婦たちとヤコブの病死、両者に共通する要素とは果たしていかに？ 誰に頼まれるでもなく原因の究明に乗り出したセンメルヴェイスは、ついに以下の結論を導き出した。</p>
<p></p><p>＜事実1＞ 第一産科と第二産科のスタッフの違い<br />
…第一産科では男性医師、第二産科は助産婦がそれぞれ分娩を行っていること。</p>
<p>＜事実2＞ 第一産科の対応体制<br />
…第一産科の医師は死体の解剖も行っており、解剖室から呼ばれるとそのまま直行して分娩に立ち会っていたこと。</p>
<p>＜事実3＞ 第一産科の医師の“手のにおい”<br />
…解剖室から出てきた第一産科の医師の手からは、遺体を扱った際のひどいにおいが漂っていたこと。</p>
<p>＜結論＞ 産褥熱の原因は、目に見えない微粒子である<br />
…遺体に付いている何か、おそらくは微粒子が医師の手に付着、その手で産婦に触れることで体内が汚染され、産褥熱を引き起こしているのではないか？</p>
<p>＜対策＞ 「手を洗いませう！」<br />
…解剖室から出た後や、患者から次の患者の診察に移るときは、解剖台のにおい消しに使われる“さらし粉”（次亜塩素酸カルシウム）の溶液で手を洗うこと。それによって、この微粒子を洗い流すことができるはず。</p>
<p>センメルヴェイスの指導のもと、第一産科の医師たちは半信半疑ながらも手洗い消毒を開始。その結果、1846年に12パーセントだった死亡率は、1〜2年後には第二産科と同レベルの2パーセントにまで激減したという。誰ひとり予想し得なかった、吃驚すべき成果だった。</p>
<p></p>2020年3月20日、Googleのイラストロゴとして登場したアニメーション「Recognizing Ignaz Semmelweis and Handwashing（「手洗い」の提唱者、センメルヴェイス・イグナーツを賞賛して）」。（via Google）
<p></p>「医師の手は神聖」「非科学の極み」とあざ笑われて炎上死
<p>ところが、この成果を面白く思わない連中がいた。誰あろう、当時の医学界の権威である。日本の医療ドラマに例えるなら『白い巨塔』をはじめ、手下を引き連れて院内をのし歩くお偉方のイメージだろうか。彼らは激怒した。「医師をなんと心得る。我らは高潔なる紳士、その神聖なる手を“汚れている”とは、聖職を愚弄するにも程がある」と声を荒げ、それに腰巾着どもが手を打って同調、そのドスの効き方はほとんどオラオラ軍団の域に達していたかもしれない。ところがセンメルヴェイスはこれに屈さず、「手だけじゃなくて、妊産婦に触れるあらゆる医療器具も消毒しませう！」と主張し始めたため、いちいちそんな面倒なことできるか、非科学的にも程があるという空気が渦を巻き、センメルヴェイスはウィーン総合病院を追放されてしまった。1850年のことである。</p>
<p>その後、センメルヴェイスは故郷へ戻り、現在のブダペスト東地区にあったペスト大学で産科教授に就任。無給で指導に当たった聖ロクス病院では手洗いや消毒の徹底により、産褥熱の死亡率を0.85パーセントにまで減少させている。こうした成果を元に、1861年には自身の主張をまとめた本を出版。しかし、学会からごうごうたる非難にさらされ、病理学会の権威たちから名指しであざ笑うなどされ続けるうちに、センメルヴェイス自身もどんどん頑迷・意固地を極めてヒートアップ、各地の病院を回っては鬼気迫る顔つきで手洗いの重要性を連呼、ヨーロッパ中の産科医を“無知な殺人犯”呼ばわりした公開書簡を発表するなど、ますます危険人物扱いされていった。</p>
<p>ついには神経衰弱やアルコール中毒の様相を来し、妻や子らも怯える始末。有様を見かねた親族や友人たちは「新しい赴任先を紹介しませう」とセンメルヴェイスをおびき出して身柄を拘束、そのままウィーンの精神病院へ強制入院させた。彼が息を引き取ったのは、そのわずか2週間後のこと。1865年、享年47歳。脱走を図ろうとして衛兵に殴られた傷が原因ともいわれる。関係ないかもしれないが、日本の医療ドラマでいえば『JINー仁ー』で脳外科医の南方仁（みなみかた・じん）がタイムスリップした文久2年（1862年）から3年後、幕末の動乱期のことだった。</p>
<p></p>2020年3月20日、Googleのイラストロゴとともに公開された特設ページ（下記リンク）より、センメルヴェイスの肖像イラストをあしらった手洗い啓発ポスター。（via Google）https://www.google.com/doodles/recognizing-ignaz-semmelweis-and-handwashing
<p></p>“目に見えない何か”を洗い清めて、見えてくる世界
<p>病気を予防するために手を洗おうーー。今や誰もが“常識”だと信じて疑わないこの習慣は、かつて科学者や医師たちが鼻で笑い飛ばした“非常識”だった。センメルヴェイスの死後、ペスト大学の産科医院の死亡率は再び跳ね上がったが、それでも彼の業績を認める者はほとんどいなかったという。フランスの細菌学者ルイ・パスツールが病気の原因となる細菌の存在を特定し、センメルヴェイスが提唱した微粒子の正体を突き止めたのは、彼の死から20年後のことだった。死後ようやく功績が認められたことで、彼の名はいつしか「母親たちの救い主」「院内感染防止の父」と呼ばれるようになったという。</p>
<p>そして、2020年3月20日。新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の世界的拡大を受けてGoogleは、トップページのイラストロゴにセンメルヴェイスの肖像をあしらった手洗いアニメーションを掲載した。その穏やかな表情は、お星様になったセンメルヴェイスが現代を生きる私たちをやさしく見守っているかのようだ。後世に偉大な功績を残した人物は、生前のひどすぎる境遇をすっきり清算してお鎮まりいただくべく、聖人や菩薩に列せられるということだろうか。</p>
<p></p><p>しかし、ひどい仕打ちをする側の一般的な人間は、いつの時代も「みんなそう言ってるから、それが当たり前」という思い込みにとらわれるあまり、平気で命を見殺しにしたり、誰かを炎上死させたりし続けてはばからない。その愚かさ加減は、国境を越えて飛行機やミサイルが飛び、ライブや飲み会までもがオンライン化し、検索エンジンによって誰もが超ミクロな世界から宇宙の果てまであらゆる知識にアクセスできるようになった今もほとんど変わらない。科学や技術の進歩によって大きな力を手に入れた気になってはいても、問題は中身のほうにある。このたびの新型コロナウイルス感染症をめぐる阿鼻叫喚の人間模様は、その事実をあらためて浮き彫りにしているといっていいだろう。</p>
<p>常識や権威を奉じるイケイケの大勢が、それに水を差す弱い立場の存在を寄ってたかってどつき回す。自分には痛くも痒くもないからと、ディスが極まって密になる。他人の不幸は蜜の味。ならば、どつくよりも手を洗え。ディスるよりもまず顔を洗って目を覚ませ。実態のない思い込みはきれいさっぱり、御手洗いで水に流してしまえばいい。</p>
<p>細菌やウイルス、PM2.5、放射性微粒子、マイクロプラスチックから、同調圧力、誹謗中傷、無根拠なレッテルに至るまで。“目に見えない何か”は常にこの世界のそこかしこにあって、人を生かしも殺しもする。だから、いつも心にセンメルヴェイスのアラートを。“手洗い”だって、もはや誰かに言われてやることではなくなったではないか。一人ひとりの「新しい生活様式」と「新しい日常」は、ようやくそこから始まるのかもしれない。</p>
<p></p><p>（参考文献）<br />
日本BD『Ignazzo（イグナッソ）』「感染制御の父 イグナッツ・ゼンメルワイス」<br />
『医療安全対策 文書No.610』「6-7: 院内感染対策　6-7-1: ●基本的事項　(1) ゼンメルワイスの物語」<br />
『エピロギ』「妊産婦の命を守りたい～“手洗い”の創始者　産科医イグナーツ・センメルヴァイスの生涯」<br />
ウィキペディア「センメルヴェイス・イグナーツ」</p>
<p></p><p>The post 妊産婦を救った“手洗いの伝道師”センメルヴェイスの物語 first appeared on Numero TOKYO.</p></article>]]>
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