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勝手にデパート文化論[前編]/菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.7

対談

多彩な肩書きを持ち、音楽、映画、グルメ、ファッション、格闘技などボーダレスな見識を披露するアーティスト菊地成孔と、写真、先端芸術からバリ島文化まで幅広く専門とする、美術史家にして東京芸術大学美術学部教授の伊藤俊治。アカデミックな2人が、世の中のニュースや日常の出来事、氷山のほんの一角の話題をダイナミックに切り崩しディープに展開する、かなり知的な四方山話。

 

vol.7 勝手にデパート文化論 後編
デパートそのものの話題から発展し、後編では、世間を騒がした社会問題から、デパート的お洒落人たちのその後、さらに道徳、倫理観を植え付ける吉本とジブリまで、デパートカルチャーと照らし合わせながら、さまざまな社会の現象を読み解く。

 

ミッシング100歳とネグレクトは同時進行する?
 
伊藤俊治(以下I)「デパートにはお年寄りが多いイメージがありましたが、今日の新聞を見てて、百歳以上の人がほとんどでミッシングという記事には呆然としてしまいました。それで最近はデパートにあまり老人がいなくなったのか(笑)」
 
菊地成孔(以下K)「そうそうそう、僕もその話しようと思った(笑)」
 
I「近親の話では、だいたい30年くらい前にアパートからいなくなってて、その後の行方がわらないっていう(笑)。デパートが最新文化を発信していた黄金の80年代にいなくなって、その後、行方がわからない人がたくさんいるって、すごいですよね(笑)? スピードが速くて忘れがちだけど日本のこの30年あまりの空白感って重要ですね」
 
K「ニュースってのは、民の集団ヒステリーっていうか、不安みたいなものを逃すという側面がありますよね。3、4年前に不二家から突如始まった、食品衛生管理問題という大ブームがあって。もう雨後の筍みたいに、あそこの肉が牛じゃねえとか(笑)。こんなにやんなくてもいいよという(笑)、で一段落したじゃないですか? あれはなんだったんだろう? 絶対にデカいニュースが潜んでるなと思ったらリーマンが来て、政権交代ブームみたいなのがあってというような。んで出てきたのがこのミッシング100歳代ブームっていう(笑)。これ、かなり奇妙なブームですよ(笑)。新しいですよね。すごく」
 
I「ちょっと調べたんだけど、日本の行方不明者って年間10万人くらいいるらしいんですよ。自殺者は年間3万5000人とか言われてるけど、1年間で行方不明・失踪の数って10万人を超えて、これはまあ届出した人だけの話なんで、だいたいその数倍はいるっていう。だから30万とか40万ぐらいの人たちが1年間に失踪して行方不明になってる。10年間で300万人(笑)。最近、僕の大学院生が、父親の失踪を扱った写真を撮ってて、父親は戻ってきたんだけど帰るまでの何年間か父親がどこにいたのかっていうのを彼はずっと追ってる。そういうのが特別なことじゃないようになっているのが、日本の社会だと思う」
 
K「60年代は「蒸発」って言って(笑)。人間が気化蒸発してしまうようなイメージで、会社員があるとき突然姿をくらますけど死んだわけじゃないっていう感じだったじゃないですか」
 
I「今村昌平さんの「人間蒸発」ですね」
 
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