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どこまで行くのか変身願望。究極の整形を求めて/菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.5

多彩な肩書きを持ち、音楽、映画、グルメ、ファッション、格闘技などボーダレスな見識を披露するアーティスト菊地成孔と、写真、先端芸術からバリ島文化まで幅広く専門とする、美術史家にして東京芸術大学美術学部教授の伊藤俊治。アカデミックな2人が、世の中のニュースや日常の出来事、氷山のほんの一角の話題をダイナミックに切り崩しディープに展開する、かなり知的な四方山話。

 

vol.5 どこまで行くのか変身願望。究極の整形を求めて
もっと美しくありたいと、パッチリ二重まぶたにプチ整形したり、豊胸手術を受けたり、顔から体へ美容整形を受ける女性は徐々に増えてきている。そんな変化した外見と本来の自分という内面とのギャップはあるのだろうか? 永遠の美、飽くなき美への追求の行き着く先はどこなのか?

 
ルックスは声を超えられない!?
 
伊藤俊治(以下I)「日本でも整形が流行していますが、タイへ行くと一番きれいなのは男なんですよ。タイの整形手術はすごいですね。タイの世界ニューハーフコンテストで優勝したはるな愛は全身整形に6000万円かけたというし。でもオカマは整形しても声は変えられない」
 
菊地成孔(以下K)「女口調の男の声という第三の声が出てくるわけじゃないですか。声が変えられるようになったら、電話に出ると高い声でしゃべって切るときは低い声になるとか、声は化粧なんかと違ってもともと可変幅が大きいから、今までそれに合わせてやってきたんだけど、これからは薬飲んでると、どんどん声が高くなるとかね、性転換者がインジェクションするホルモン注射とかじゃなくて。あめ玉みたいだったり、ピルみたいだったりして、声帯のゆるみを矯正する薬が出て、子どもの声に戻っていくとか、声を変えたいという人は多いんじゃないかな。例えば、顔の悪い人が悩んで整形手術を受けるという構図はあるけど、悪声に悩んでいる人が声帯を整形手術するという話はあまり聞かない。可変幅の大きさで凌ぐという」
 
I「ボコーダー(変声器)というのもありますが、男にとって、声だけでイッちゃうような女の人の声ってありますよね」
 
K「声で十分という諸君はいると思いますよ。アニメカルチャーにおける声優も、ハードコアポルノも、ある意味、図像よりも発声によって確信されてきた歴史もありますしね。テレホンセックスが携帯で行われているのか、興味があるけど。例えば、女の結婚詐欺で男の人を眠らせてしまったのかっていう人いるでしょ? メディアには料理がうまかったとか書いてあるけどさ、僕は声と語調が絶対よかったと思うんですが、ただ日本は犯罪者の顔は出すのに肉声は公開しないでしょ。いくらだって素材あるのに」
 
I「木嶋佳苗(結婚詐欺・首都圏男性連続不審死事件被告)ですよね」
 
──とりわけ美人というわけでもないのに、なぜ何人も結婚詐欺できたのか不思議です…。
 
K「だからルックスで限定してるからデブ専とかブス専とかいろんな発想が出てきちゃうけど、決め手は声っていう可能性はありますよね。やっぱり語りかけがあって詐欺が成立するわけですから。声なき声で、ルックスだけでこの詐欺が成立するかな?って思うんですよ」
 
I「やっぱり喋り方と声質は重要ですよね。これからはルックスじゃなくて声が最もエロティックになるんじゃないですか(笑)」
 
K「我々は犯罪者の顔は観るけど、声はあんまり聞かない。グリ森事件の時は声紋判定が活躍したりして、犯人の声を聞いたけどね」
 
▶続きを読む/整形が生んだ多重人格化

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